強引な決着
魔法は思い出せた。
そして、ワンドにもいつでも魔法が発動できるように準備を施した。
後は、相手の肌を露出させてそこにこのワンドを直接接触させる。それが今回使う方法になる。
というか、隷属魔法の内容は覚えているけど、それぞれの条件が結構面倒くさかった覚えはあるものの細部まで覚えているのがこれだけだった。
経験値使って隷属魔法も覚えておけば、今すぐに思い出せたんだろうな。
まあ、そんな後悔は置いておく。
現状の一番の問題はそれとは別にある。
あの大鎧が、肌が露出している部分がないことだ。
せめて頭にかぶってる兜が全面覆う物じゃなければ良かったんだけど。
一応、首の部分はかろうじて露出しているように見えなくもないけど、ワンドをねじ込むには狭いし。そもそもよじ登るのを相手が許すはずがない。
「アリアさん、どうにかなりそう?」
「全然ですね」
「ちなみに何処狙ってるの?」
「頭の兜を弾き飛ばせればと思ってましたけど、やっぱり大きくて無理です」
「となると次に狙えるのは」
「関節部分が動きの阻害しないために、見た目は鎖帷子程度なので、かなり深く剣を入れられればもしかすればってところですか」
「それはそれで無茶ね……」
それでも鎧と巨体と戦闘方法の癖のせいなのか、攻撃自体は回避を続けていられる。
完全に、お互いにジリ貧状態だ。
このままだと体力負けする場合はこっちな気がする。
「……ちなみになんですが」
「なにか思いついた?」
「外道なことをするので、騎士的にどうなんだということならば」
「いやもうわざわざ軍の人にそれを報告するつもりはないからやっちゃって!」
「わかりました! あ、でも、アンジュさんも目には気をつけてくださいね!」
そう言うとアンジュさんは戦い始めてすぐに近くに投げ置いておいた荷物のほうへ走っていく。
あたしはその時間稼ぎをするために、動きやすい剣のほうを選び、槍は敵にダメもとで投げつけながら、前に出る。
「ふん、何かするつもりだろうが。小細工は通じんぞ!」
「いちいち説明ありがとう。それじゃあ、しばらくお相手よろしくお願いするわ」
動きはとろくても一撃受けたら死ぬ攻撃は、個人的には嫌いな部類だ。
何せ集中が切れたら死ぬといえるようなものだから。
剣で一応攻撃が通るかもしれないところを、攻撃しつつ相手の気を引き続ける。
そして少しした時だった。
「まだ!?」
疲れてきて、思わずあたしがそう叫んでアリアさんがいた場所を見ると、姿が見えなくなっている。ついでに言えば、鎧も脱ぎ捨てられてる。
「どうやら逃げられたようだな。まあ、そちらのほうが利口だ」
「誰が逃げたんですか!」
ガサガサという音が聞こえて大鎧とともに、思わずそちらを見ると木にのぼっていたアリアさんが跳び出た。
そして上を向いてる敵の顔に対して手に持ってた容器から液体を一気に被せる。
視界確保や空気のための穴というものが存在している以上、上からかぶったらそこから液体は入り込んでいく。
「ぐっ! あぁぁっ! なんだこれは!」
液体をかぶって数秒後、大鎧はそう言ってうめき始めた。
「何したの?」
「飲料ですとか、念のために道中で溜めてた水ですとか。持っていた液体物全部混ぜ込んでかけました」
「いや、でもあれやってなんで露出するの?」
「あんだけの鎧で兜も目の部分をつけ外しするものではない。それで視界を塞がれて、それが自分の手で拭えば戻るならチャンスがあるかなと」
アリアさんがそういった通りと言わんばかりに、大鎧は兜を脱ぎ捨ててその手でその目についた液体を拭い取る。
そして、その瞬間に相手はオーガであることが判明した。
「貴様!」
「私に怒るのはいいですが、上には気をつけたほうがよろしいですよ」
「何!?」
「隙有り!!」
一瞬の怒りが勝敗を決めることがある。集中力とはそういうものだ。
あたしは交代するかのように木を蹴ってワンドをその顔にぶつける。
その瞬間、敵のワンドのぶつかった頬に鎖のような四角の紋様が刻み込まれた。
「主・アンジュが命じる! その場に跪きなさい!」
「そんな命令――」
そう言い終わるよりも前に、紋様が青く光り輝いてオーガの目から光が消える。そして、その場に跪いた。
「これは?」
「強制洗脳の魔法。それもかなり強めのやつで、奴隷に使うのは特例時以外は禁止のやつ。ついでに言えば、これで意志を封じ込めて命令しすぎると相手の精神が死ぬ。だから今回みたいな状況じゃない限りはもう使わないわ」
そのためにも戦闘の勘はしっかり取り戻していこう。
「うわぁ……いや、まあ状況が状況ですし。私も見なかったことにします……私は命が大切ですし、まだやることがあるので」
「まぁ、ひとまずどうにかなったわね……ふぅ」
あたしは大きく息を吐きだした。




