大鎧の弱点はどこ
戦場が近づいてくるにつれて、時たま金属の擦れる音や、大きな衝撃が木にぶつかるような音が聞こえるようになってくる。
そして現場にたどり着いた時、ひとまずアリアさんは生きていたけれど、大鎧の方も無傷といっていい状態だった。
「アリアさん、大丈夫!?」
「大丈夫ですが、状況も良くないですね」
「ふん。その程度の剣が通用すると思ったのか! 数が増えたところで同じだ」
大鎧はあたしが到着したのを見ても余裕な表情だ。
そしてついでに言えば部下がやられたことも察しているだろうが、なんとも思っていないらしい。
「やっぱり硬い?」
「剣は少なくとも私の力や技術では通りません」
「そう……ただ、でかいのよね」
あたしは大鎧を改めて見て感じる。
首を狙おうにも跳んでタイミングよくやるか体によじ登るくらいは必要だ。
「どうしましょうか」
「せめて魔法が使えればいいんだけど、火属性魔法使ったら確実に大惨事よね?」
「大規模な水魔法でも使えれば別ですが」
「さすがに使えないわね」
「ですよね」
相手はこちらをなめているか、あるいは思いの外二対一の状況を重く見ているのか攻撃はしてこない。
「どうしましょうね」
「その武器どうしたんですか?」
「奪ってきたのよ。ダガーの代わりに」
「ってことはひとまず残りはこいつですか」
「そういうこと」
「まあそれなら安心です」
辛うじて剣が通りそうなのは膝や肘の関節部分だけど、ガタイが良すぎてそもそもかなり深く刺さないとダメージにならなそう。
特にこのタイプの魔族は筋肉がそもそも硬い例だって存在する。
そして今になって1つ思い出したことがあった。アリアさんに確認しておかないといけない。
「今更だけどやっちゃったんだけど大丈夫だった?」
「このタイプは魔族側の中でも過激派に位置していると思いますし、手加減して勝てるものでもないと思いますよ」
「それが聞けただけであたしはちょっと安心したわ」
「何となく向こうで戦った敵がどうなったか察しましたよ」
「話してばかりでこないのか?」
あたし達が警戒しつつも言葉をかわしているとあっちからそう言い出してきた。
「何ならここで逃げ出して我らの邪魔をしないなら命は助けてやるぞ」
「そもそも何が目的できたんですか?」
「コチラ側のいざこざだ。人族が関わることじゃあない」
この答えを聞いてあたしもアリアさんも何となく見当はついた。
つまりこちらの領地に逃げてきた魔族を捕まえようということだろう。
もう1つの可能性として奴隷にして逃げ出してきていた獣人の子みたいな、奴隷商方面の可能性もあるけれど。
鎧があの道で襲ってきた連中と同じだし、おそらくはシグニアさんのような魔族を狙っている派閥で間違いないと思う。
「ちょっとこっちも訳ありだからそう簡単に引くわけにもいかないのよ」
「そうか。ならば、ここで死んでいくといい」
大鎧はそういうと、ゆっくりだが力強くこちらに近づき始めた。




