獣人の男の子と襲撃者
すでに日は落ちて月明かりが街を照らしている。そんな中、薄暗い路地であたし達はこちらにむかってくるなにかに備えていた。
そしてその時はすぐに訪れた。
路地の中に入るようにして、必死でこちらに向かって走ってくる猫の獣人・ワーキャットの男の子にそれを追いかけている顔を隠した細身の人型種だ。
ただ、あれは確実に戦いに慣れてる。もしかすれば殺しに慣れてるような足取りだ。顔は何処かの民族風の布で隠されているから、種族まではわからない。辛うじて体つきから人間と似たような体つきの種族であるということだけわかる。
「なんかヤバそうなやつだな」
「なんで獣人の子を追いかけてるのかしら」
「あのワーキャットの服装とか見ると、訳あり感はありそうだけどな」
「まあそうね。少なくとも、追いかけてきてる方はこの街だと異質でしかないというか。殺しは街中で許されることじゃないわ。ハンツはいける?」
「まあ2体1だしな。せめて獣人の子だけでも逃げられればいいだろ」
獣人の子は無我夢中といった感じで逃げてる。この路地は一本道だからあたし達のことにはさすがに気がつくけど、ここで後ろのあいつの仲間だと思われて足を止められても困るわね。
「早くこっち!!」
ひとまず声をだしておこう。
言葉はしっかりと通じたようで足を止めずにこっちへと走ってくる。それに合わせるようにしてハンツが男の子とすれ違うように間に入り込んだ。
ドラゴンマンの体の大きさもあって、さすがに謎の人物も足を止める。
「邪魔をするな」
「いくら路地裏だスラムだからって、街中での殺しはルール違反だぜ」
「…………」
声の感じからして男か。
男はハンツのそれを聞くとハンツのことをかわそうと左右にすばやく動いて振り切ろうとしてくる。
だが、ハンツも冒険者経験はやはり多い。そうなれば、下手に釣られるよりもどちらにいっても反応できるように構える。
そしてあたしはというと、ひとまず獣人の子は確保した。このまま路地を抜けさせてもいいけど、別の仲間がいたら駄目だからね。
更に1つ不味いことに気がついた。街中で地面壊すわけにもいかないし、ド派手な火を放つわけにもいかないからかなり使える魔法が制限されている。
「仕方ない。格闘術は苦手だけどやるしかないわね。いや、ハンツが追い返せるならそれでいいんだけど」
男はといえば、ぱっと見る限りは短剣しか持っていない。ドラゴンマンの鱗はそこそこ硬い。だが、手練ならそれでも鱗のない位置や技でカバーするけど。
「……チッ」
男はあたしが後ろで構えているのを見ると大きく舌打ちして元来た道を戻るように暗闇へ消えていった。
「ふぅ……どうにかなったが、もしかして軍が探してたのはこれか?」
「まさか、追いかけっこを軍が察知できるわけもないし違うんじゃない? どちらにせよ、報告はしたほうが良さそうだけどね」
「だな。その子も保護してもらったほうが良さそうだし」
あたし達は再びの襲撃を警戒しながら一度ギルドへと戻ることにした。仕事は十分にしたことになるでしょう。




