調査開始
「そんで、ここら辺の路地裏を回りゃいいってことか」
「そういうことみたいよ」
南地区にたどり着いてから改めて確認した。
あまりこの辺りは、あたしも訪れないから迷わないようにしないと。
南地区は安い宿があったり、貧民層とは言わないけれど貴族や富裕層とも言えない人たちが住む住宅区とでもいう場所になっている。
たしかにこの地区は入り組んでいて路地裏とでも呼べる場所は数多く存在していた。
でも、調査するようなことかはここまで来ても疑問だ。
「とにかくいってみよう」
「そうね。とりあえず、こっちから見て回りましょうか」
ひとまずあたし達は手近な路地から回ってみることにした。
しかし、流石にそこそこ大きな街でスラム街は残念ながら存在しているものの、全体の治安としては悪くない場所だ。こんな場所で調査して見つかるようなものは、少なくとも簡単には見つからない。
見つからないならば、それでいいはずだけれど。軍の意図が気になって、なにか見つかれと思っている自分も何処かにいた。
「ここにも特に問題はなしと」
「結構回ったか?」
「まあ、南地区の半分くらいは回れたし良いほうなんじゃないかしら」
空がオレンジ色に染まって、徐々に暗くなり始める頃だった。
流石に広いから1日で全ては無理だと判断すれば、効率よく回れたほうだと思う。
「どうする? 夜までやる?」
「アンジュさんがいいなら、オレはちょっと気になるからやりてえな」
「まあ大丈夫よ。あたしも気になって仕方ないからね」
あたしたちは手近にあった宿の食堂で夕飯を済ませてから、ギルドの受付ギリギリまでは粘ってみることにした。
しかし、暗くなった路地裏となれば人通りも完全に消えていて手持ちのランタンがなければ、視界も悪い。
「ハンツは光いらないの?」
「ドラゴンマンは夜目というか暗い中でも目は見えるからな」
「そうなのね。何かありそう?」
「特にここにもないな――いや、待て」
ハンツにそう言われてあたしは足を止める。
「何かあった?」
「いや、何もないが。何かが走ってこっちに来てるな」
「耳もいいのね」
でもたしかによく耳を澄ませれば、足音は聞こえる気がする。
「この感じは……片方は逃げてるわね」
「もう片方は襲撃に慣れてるって感じだな。夜のこんな人がいないところだから、ぎりぎりわかるが人通りがあるところだったら、この足音は気づけ無い気がするぜ」
「つまり、手練ってことね。さて、逃げた奴隷を追いかける主人とかなのか。それとも碌でもない殺人犯か」
「心配はあんまりしてないけど、暗闇で見にくいなら気をつけろよ」
「わかってるわ」
あたしたちはそう話しながら、その何かが来るのを待つ。
「さて、何が出るかしら」




