平和の中の戦い
「あたしが2人やるから、コノミさんひとり頼めるかしら?」
「了解。じゃあ、左のをやる」
コノミさんはそう言うとすぐに左の鎧を引き連れて少し森の奥まで行った。
ギリギリ視界で捉えられる距離だけど、魔法で巻き込まない程度までは離れてる。
「人族の小娘1人で我々2人をやろうというのか。それも守りながら」
「安心しなさい。少し前のあたしに関しては戦うことそのものを嫌ってたけど、今は自分の周り守るためには躊躇しないからね」
というか、平和という言葉を自分で極端に捉えすぎてたわ。
元々勇者だし、旅してあたしは知ってたはず。平和の中にも喧嘩やいざこざは絶対にあって、そこから小さな戦いが起きることはある。
でも、無差別に人を巻き込む戦いがないならそれは平和といってもいいと思う。
そんな平和が一時であれ今は続いているわけだ。だからこそ強烈すぎる戦いに身をおいていたあたしは平和を極端に捉えて戦闘を避けすぎていた。
ただ、シグニアさんの事や最近のことで気づいたわ。自分の周りを護るための戦いはどれだけ平和であろうとあり続ける。それなら、あたしもそれくらいの戦いはしていかないといけない。
これは平和の中にある戦いだ。勇者の必要のない戦い。
「ということで、久しぶりに遠慮なくいくわよ。あたしのその昔の仲間が使ってた正直見てて引いた技! 『グランド・ウォール』!!」
あたしはそう言ってまずは自分と鎧の間に身長の二倍ほどの土壁を作る。
「ふん、一枚の壁を作ったところで」
「続けていくわよ!」
あたしはそのまま鎧を囲むように隙間なく土壁を作る。正直、魔力がなかったらこれできないわ。
それと相手が鎧で動きが鈍かったのも大きい。
「ふん、魔力はそこそこのようだが。このような場所に閉じ込めて何になる。所詮は土の壁だ。少しでも時間があれば我々に壊すのはたやすい」
あたしが攻撃魔法が苦手だとでも思ったのか鎧はそう言っている。
それを聞いてつい笑ってしまった。
「何がおかしい?」
「いえ、まああたしも多分普通はそう思うもの。だからこそあの子に引いたわけだしね。ただ、クオリティは最悪で威力の調節もできないから頑張って耐えなさいよ! 可能なら生きててほしいから」
あたしはそう言ってから土壁の上からワンドを中の鎧のいる空間に向ける。
あの時はスライムというクッションがよくも悪くも働いたけど、土の壁で周りへの被害抑えられるかは少し不安が残る。
でも、そこはもう信じるしかない。一応、女神様の力で水の魔法だって使おうと思えば記憶にある魔法は使えるから、そういうことにしておこう。
「『エクスブレイク』吹き飛べ!」
「その名前は、なぜそんな魔法――」
鎧の最後の言葉を待たずに土壁の中ではとんでもない轟音と共に大爆発が起きる。
あたし自身も爆風の強さで壁の上から吹き飛んで、近くの木をクッションにしながら地面に落ちる。
壁はどうにか持ったみたいだけど、さすがに鎧は倒れてくれたわよね。
「かっこつけたけど、こんなことに毎回なるんじゃ戦いは好きにはなれそうにないわ」




