襲撃の理由
道を元通りに戻して馬車を確認する。気配の数からして全部対処できてるから無事のはずだけど、万が一後ろがやられてたらまずい。
まあ、その考えは杞憂だったようだ。
あたしが馬車の後ろに移動すると、すで地に伏したサーベルウルフと剣を収める彼女がいた。
「そっちも終わった?」
「大丈夫よ」
「よかった。山を出るまでは、アタシも外で護衛する」
「そうしてもらえると助かるわ」
改めて彼女をよく見てみる。綺麗な黒髪を後頭部の上の方で縛ってテールを作っている。女性の中では身長は普通だけど、背中に収められている細身の剣のせいか小さく見えてしまう。
その立ち姿は冒険者と言うよりは、剣士といったほうが良い気がする。
いや、剣士の冒険者も多いんだけど、流派やこだわりなどの剣への誇りを持つような感じの存在だ。
「アタシはコノミ。よろしく」
「アンジュ・シエーラよ。アンジュでいいわ」
あたしは差し出された握手に応じる。
立ちふるまいや雰囲気からみてて誰だけど、西大陸では見たことがあまりないタイプだ。
東大陸特有の何かがあるのかもしれない。
「海沿いまで来たのは、アタシは初めて。サーベルウルフはこの辺にはいつも?」
「いいえ、今少し異常かもしれないってことで調査してるところだったの。護衛を名乗り出たのもそのためよ」
「了解した。しかし、サーベルウルフは肉も入ってない馬車を襲ってくるとは妙」
「本当に魔法道具だけなの?」
「中にいたから、少なくとも食料の類は旅の分しかない。それも保存が効くように加工したもので、わざわざ動物。ましてや魔物が襲ってくることは殆ど無いような食料だけ」
「そうなのね……」
となるとやっぱり襲ってきた理由にも違和感が出てくる。
サーベルウルフの嗅覚は、魔物の中でも良いはずだ。
「やっぱり、少し警戒していくに越したことはないわね」
「うん。ところで、森のなかに潜んでだお仲間さんは大丈夫? 護衛を手伝ってもらうことになるし、姿を現すかはともかく確認してくるくらいの時間は待つよ。商人さんも馬を落ち着かせてるところだし」
「そうね、ありがとう。それじゃあ、少し確認してくるわ」
あたしはそう言ってからシグニアさんの気配がする方に移動する。
多分、このあたりにいるはずなんだけど。あたしがあたりを見渡すと、木々の緑と茶色の中に違和感を与える銀色を見つけた。
「シグニアさ……ん」
「シエーラさん。大丈夫だったか?」
「う、うん。あたしの方は大丈夫だったけど」
「そうか。ならばよかった」
シグニアさんにやられたサーベルウルフは見事にメイスで牙を叩き砕かれて、体もところどころ陥没していた。
「後で埋めてあげておいてね」
「あ、あぁ。やりすぎたな」
かなりパワータイプなのかもしれないわね。




