魔法道具店
「そういえばあなた名前はなんていうの?」
「わたくしですか? そうですねぇ。最近はルスマンと呼ばれています」
「呼ばれている?」
「まあ、通り名というやつですよ。こういうなりわいですので、どうしても恨まれてしまうこともありますしね」
ならやめればいいのにと言いたいけど、どうにか胸の中にとどめた。
「つきましたよ。ここです」
ルスマンは足を止めると手でその建物を紹介するように示した。
ギルドがある通りを更に奥に行った街の外れに存在していて、周りに建物は少ない。住むには日当たりが悪そうだから仕方ないのかな。
ただ、そんな場所に一件だけという理由とは別に、その建物自体がかなり異質な雰囲気と形だった。確かに魔法道具は売ってそうだけど、それ以外の怪しいものも売ってそうで近寄りがたいのが人が来ない原因じゃないかな。
「ささ、どうぞどうぞ」
ルスマンはそう言ってゆっくりと手招きしながら店に近づいていく。
正直、入っていいものか悩むけど、露骨に怪しすぎるから何もされない気もしている。あたしはゆっくりと見せに近づいていき、ルスマンが開けた扉から店内へと足を踏み入れた。
「いらっしゃい……ってあなたもきたの?」
「お客様をお連れしましたが、少し怪しまれてしまいまして」
「いや、それってうちの紹介方法が悪いんじゃ」
「いえいえ、昔わたくしが別のお店を紹介した時のことで、わたくしがですね」
「完全に自業自得じゃないのよ……アタシはマリッジ。この魔法道具店の店主」
まずあたしを出迎えてくれたのはそんな風にいう、妖艶と言った言葉が似合う紫髪の女性だった。
店内は見たこともない物もあれば、形だけなら見覚えのあるものもおいてある。
「あなたは……冒険者? すごい魔力を感じるわね」
「いえ、違うけど。まあ、ちょっと魔法とは縁があるものでね」
「そう。魔法道具を使ったことはあるかしら?」
前世でないわけじゃないけど、あの頃とは扱いが違うかもしれないのよね。
「ほとんどないわ」
「じゃあ、そうね……魔法道具はその名前の通り魔法の力が付与された道具の総称よ」
マリッジさんはそう言って、近くのカウンターに置いてあった筆を手に取る。
「これは商品じゃなくてアタシの私物だけど、マジックペンといって自分の魔力で文字を書くことができるの。そして、その文字は持ち主が認めた人か持ち主にしか見えなくなる」
戦いの中で伝令とかに使われてそうな道具ね。
「ほら、空中に文字を書いたけど見える?」
「いえ、さっぱり」
そこに視線を向けても、文字は見えずに棚や壁が見えるだけだ。
「じゃあ、これでどう?」
マリッジさんがそういった瞬間に、空中に文字が浮かび上がった。
「あっ……『ようこそ』」
「正解! まあ、魔法道具はこういう一風変わった物が多いのよ」
少なくとも真っ当な店で間違いなさそうだ。
「まあ、ただ最近だと戦闘とかに使えるような道具ばっかり需要が高まってるんだけどね」
「戦闘に使えるっていうと……攻撃魔法を発動させるとか?」
「そう! まあ、アタシはそういうの趣味じゃないからあんまり作ってないけど。そしたら、客が全然こないのよ。だから、できればアタシの生活のために1つでいいから買っていってくれたら嬉しいわ」
妖艶の女性の目の中には切実な願いが込められていた。
「と、とりあえず、店内の商品みてもいいかしら?」
「もちろんよ。説明が欲しかったら呼んでちょうだい」
マリッジさんはそう言うとカウンターの席に座った。
さて、それじゃあお店の中をじっくりを見せてもらおう。




