78話 フューフェからの情報
レイラはがっくりと項垂れていた。
何故こんな事になってると声高だかに叫び出したい気分だ。
アルフィダ達はレイラを助けるために現況が巣食うアングリッタまで遠路遥々やって来てそこでフィーファ姫そっくりな令嬢に出会い彼女から衝撃の事実の数々を聞かされた。
今後の身の振り方を模索しなければならない現状でこんな事をしていて良いのかという自問自答を繰り返す日々だ。
もっともレイラ個人にどうこう出来るレベルを大きく上回っていてもはや考える事そのものが意味をなさない…そんな状況にも思えたのだ。
フューフェ・ウラニティ嬢はしばらくこのアングリッタに滞在する事となったアルフィダやレイラ達にこの国の文化を学ぶ為学園に短期入学してはどうかと提案したのだ、そしてそれをアルフィダは了承した。
レイラとしてはそんな悠長な事は言ってられない。
自分とメイドのレコが誘拐されたのだ。
恐らくはフィーファ達は心配して大騒ぎになっている事だろう事は容易に想像出来る。
一刻も速く帰るべきだろうがそんなレイラとレコにフューフェは流石というのかある情報を提示した。
「彼女達はここ、アングリッタに向かっているようですわよ?」
「フィーファ様達が!?」
「えぇ、情報によればあの子とその御付きの少年の二人だけのようですね、何を考えてるのやら」
「フィーファ様とシェインだ…」
彼女達がレイラ達の捜索に動き出したようだ。
傭兵とメイドの二人の少女を捜索する為にわざわざ姫様が直々に旅にでる必要などあるはずがない。
しかしレスティーナの王は変わり者であるのはレイラもレコも重々理解している。
フィーファが自らの意思で旅に出る意思をもったならそれを了承する事など容易に想像できた。
王の意思が孫の成長を願ったものか単に愉悦から来るものかはわからないがフィーファの意思に申し訳無さとそれ以上に暖かいものを感じずにはいられない。
「心配ですか?まぁそうでしょうね、あの子は王族の身分を利用せず単身で貴方の捜索を自ら行っている、まったく愚かこの上ないですわね?」
「申し訳無さは感じてますが心配などしていませんよ、彼女は強いですしなにより彼女にはシェインが付いてる」
「シェイン?あの小汚い男児ですか?アレに何を期待しているのかしら?」
「情報通な貴方にしては意外ですね?私は彼には…シェインには彼女を託して良いと思うだけの信頼を持っています。」
「そうですの?」
フューフェは情報こそが全てと考えている。
レイラがあの小汚い少年を信頼していたとしてもそんな事はさして重要ではない。
彼女にとって情報は全てだ。
自分にとってこれまで歩んで来た人生は過酷そのものだった。
そんな彼女がこれまで生きてこれたのは情報あってこそだ。
情報に守られて来たといっても過言ではないしその情報こそ信じるに値するものだ。
頼るべき親がいない彼女にとって心の寄る辺は情報しかなかったのだ。
その情報によればあの少年に大きく関心をもったり興味を引かれる要素は無かった。
それだけあの少年が平凡だと確信しているからだ。
「まぁ束の間のアングリッタを楽しんでください、産まれてこの方安息を経験した事は無いのでしょ?ここで教養を得るのも悪くないですよ?安心して下さい、後から学費を払えなんて言いませんから♪」
そんな捨て台詞を残してフューフェは退室していった。
「そんな事は心配してませんよ…」
フィーファとシェインがここに向かっているなら下手に国から出るのは愚策だろう。
入れ違いになってかえってフィーファに迷惑をかける事になる。
レイラはため息を付きながらアングリッタに存在するなんとかいう学園に転入することを決意した。
「しかし学園に入学しろだなんて…彼女は一体何を考えてるのでしょうか…」
「情報厨な彼女のことだからね…何か目的があっての物と考えるのが自然でしょうね」
「レコ…、いたのですか」
「いたわよ、剣呑な雰囲気に出て行きそびれただけ」
「私一人にフューフェ様のお相手は荷が重いです。」
「私がその場にいてもメイドの身では口を挟むことなんて出来ないわよ」
「それは傭兵の私も同様ですよ…むしろ傭兵の方が立場は低い気がしますけど?」
「まぁいいじゃない、貴方、あのお姫様に気に入られたんだし?良かったわね?」
「……。」
なんとも言えない微妙な表情でレコを睨むレイラ
そんなレイラに対してヤレヤレとポーズを取るレコ
レイラははぁ…とため息をつき項垂れた。
アングリッタ国は古代文明の一部を発掘しそれらを独自に解析し富を得た大国だ。
200年前ハイゼンテールの魔王を討伐しその財宝を山分けした5人の勇者達だったがその勇者達の一人だった先代アングリッタ王が得たのは金でも土地でもなく知識だった。
形のない物に興味関心を持たなかった初代アングリッタ王の選択に各勇者達…初代王達からは最も損な選択をしたと非難もされたがその知識が今のアングリッタの繁栄に繋がっている。
魔力を用いずとも光や熱を行使する事が可能な新技術”カガク“によりこの国は飛躍的な発展を遂げた。
そんなアングリッタの技術体系を学ぶ事が出来るのがアングリッタ王立技術学院である。
無論誰もがその門をくぐる事が出来る訳では無い。
王立技術学院に入学するにはそれなりの資格がいる。
アングリッタ国の住人である事。
アングリッタに忠誠を誓っていること。
アングリッタの王族に連なる者の推薦等だ。
独自技術の漏洩を嫌うアングリッタは独自技術の繁栄を目論む傍ら他国に技術が漏れるのをなんとしても防ぎたいのだ。
そのためには魔法に変わる新たな力としてアーティファクト等の魔力に頼らない力の制御は急務とされていた。
もっともアーティファクトは未だに不安定。
最悪使用者から死人も出るかもと噂されているため国が正式に主武装として運用するには至っていない。
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「面倒くさい事になったな、まさかお前が学校に通う事になるなんてな」
「そうでもないさ…訳のわからない門外不出の技術を学べるんだ、フューフェ様々だ。」
「しかし彼女になんのメリットも無いように思える、何か裏があるとみてまず間違いないだろうな。」
「情報大好きなフューフェお嬢様の事だ、そう見てまず間違いなかろうよ、しかし孫にも衣装ってか似合ってるぞ?アルフィダ?」
「よしてくれ、しかしまさかここにきて短期間とはいえ学校なんて物に行く事になるなんて人生てのは何が起こるかわからないな。」
「楽しめばいいさ、お前はまだ若いんだから血生臭い戦場だけがお前の居場所じゃない。」
アルフィダとディオールそしてアランは学園指定の制服に身を包んだアルフィダをからかいながら温かい言葉をかける。
親のいない、そして師殺しの自分には過ぎた親友達の気づかいに気恥ずかしくなりながらも今後の事に対してアルフィダは考えを巡らせる。
シェインとフィーファはこちらに向かって旅に出てるらしい話を聞いた。
下手に動くのは入れ違いを考慮しても得策ではない。
それにフューフェはおかしな事も言っていた。
彼女は濁していたがアルフィダにはこう聞き取れた。
シェインとフィーファの旅の道中の情報の一部だけ得られなかったと。
彼女は情報収集の天才だ。
その彼女が得られない情報。
今はこちらに向かっているらしいがその少し前、風車の町から行方がつかめなくなっていたらしい。
何かに巻き込まれたか。
いまは無事を祈るしない。
まぁ心配するのは弟弟子に失礼だろう。
奴もお姫様から騎士として認められた戦士だ。
今は自分の事に集中するとしよう。




