72話 覆面女
アルフィダ達がアングリッタ国内にあるフューフェの屋敷で厄介になっている1週間以上前の事である
シェインとフィーファはモルタを自称するフィーファそっくりな少女に襲われ気づけば離れ離れ、現在はそのモルタと行動を共にするという奇妙な流れとなっていた
「くそ、フィーファの奴、どこいったんだよ!?」
モルタとの諍いも一段落し、フィーファの捜索活動に励むシェインだが結果は芳しくなく、どれだけ探せどフィーファは見つかるどころか痕跡すらない状態で、シェインの心に焦りが滲み出してくる
辺りも暗くなり始めていて、夜が近づき始めている、
もしこのままフィーファを見つける事が出来ないと、
最悪の想像が頭の中に流れていく、
一刻も早く彼女を見つけなければと、そう考えてるとき、うしろから能天気な声がかかる
「シェインー!シェインー!えへへへ、シェインとおいかけっこーーえへへへー」
「………、」
「どーしたのーシェインー?おいかけっこ終わり?」
「今お前と遊んでる暇なんか無いんだよ!フィーファを探さないと、」
「フィーファってたしかネメジスおねえちゃんのこと?おねえちゃんはここにはいないよ?」
「はぁ?そんな訳無いだろう、さっきまで一緒にいたんだから、」
「そんな事言われてもおねえちゃんいないのはいないのー、モルタ嘘ついてないもん!」
「何でそんな事が解るんだよ!」
「解るモノは解るのー、おねえちゃんはここにいないよー」
「だったら何処に行ったってんだよ…、」
「そんなのモルタにもわからないよ、あの怖い人が連れて行ったのかも…」
「っ!?、怖い人って誰だよ、俺達以外がここにいたのか?」
「うぅ…、顔が分からない真黒な人……、」
「なっ!!?」
顔が見えない真黒な人、モルタの言葉は抽象的だ、
額面通りにとらえても仕方ないかもしれない、
それでも無視していい内容では到底ないからだ、
「真黒な……仮面の騎士……、アイツがここにいたのか、」
シェインがカラッタ村から旅立つ時に、村を襲った仮面の騎士、
あの時はアルフィダがいたから何とかなった、
しかし奴と一人で渡り合う事ができるか?
アイツの強さは桁外れだった、
今の俺はあの頃より格段に強くなった、
その自覚も手応えもある、
あの時の自分では敵わなかった強敵といくどか闘い勝利を勝ち取ってきた、
だから強くなったって自信だってある
しかしアレが相手じゃ話は別だ、
アレは人の枠から外れた存在だ、
あの黒髪の女や眼の前にいるモルタと同格、
いやそれ以上の、
アレに勝とうとするならそれこそ、あっち側のステージに立たないといけない、
神達のステージ、
ユーディキゥムの力を…
「そいつはどんな奴だった?顔が見えない様に被り物でもしてたのか?」
「うん、変なの被ってた、それにとても怖い武器を持ってた、モルタのおてて、治らない……」
モルタの体はどういう構造なのかは分からないが欠損部分を瞬時に再生する高い回復力を持っている、
そのモルタの左腕は回復する兆しを見せず今尚痛々しい姿のままだ、
借りにもフィーファと瓜二つの外見を持つ少女がそんな姿のままなのは目の毒だ、
なんとかしてやりたい気もするがシェインは医者ではないし、襲って来た相手にそんな手ほどきをする程善人でもない、
兎にも角にもモルタの再生能力が働かないというのはなんらかの原因があると見て間違いないだろう
そして少なくともモルタにこれ程のダメージを与えられる存在がいると言う事だ
「モルタの腕、その仮面にやられたのか?」
「うん……そうだよ…、モルタの事、偽物っていってた…怖い人」
「偽物…ね…」
モルタとフィーファは髪や目の色を除けば気持ち悪い程似ている、
例え血が繋がった姉妹、双子でもここまで似る事はないのでは無いだろうか?
まるでフィーファという人物を絵に描いて色だけ間違えて塗ったようなそんなチグハグ感がある
それに決して聞き逃してはいけない言葉をモルタは口にしている
「なぁモルタ、」
「なに〜?シェイン」
「モルタはフィーファの事をネメジスって読んでたよな?ネメジスってなんなんだ?」
「?ネメジスはネメジスだよ?モルタのおねえちゃん」
「モルタはレスティーナ王と知り合いなのか?」
「レスティー…、なに?」
「レスティーナだ、レスティーナ!」
「レスティーナ……?知らない」
「マジか……」
思い返せばフィーファの事をネメジスなんて変な呼び方をしているのはあの黒髪の女くらいでレスティーナ王すらその意味を知ってはいなかった、
モルタがレスティーナ王と無関係でも特段矛盾はないのか……、
モルタが嘘を付いてる可能性もあるがなんとなくそれか
は無いだろうなと言う直感みたいなものがある
フィーファ=ネメジスなのかはわからない、
判断すべき材料がまるで足りていない、
「兎にも角にもフィーファを探さないと…もし何処かで怪我でもしてんなら夜になる前に見つけないと…、」
「シェイン〜、おねえちゃんはいないよー、感覚を感じないもん、」
「そんなの分からないだろ!仮面の騎士から逃げ延びてどこかに隠れてるかもしれ……、」
「大丈夫ですよ、貴方の探し人は無事です。」
「!!?」
突然女の声が差し込まれる
驚きの余り一瞬頭の中から考えが全て消えて飛んでいきそうな錯覚に覆われる
シェインの眼の前には顔をベルト?の様な物でグルグル巻きにした覆面の人物が立っていた、
青黒い色のローブを纏っていて人目で怪しい雰囲気を醸し出している、
声からも判別できるが体付きから女であると推測できる、
「また、顔を隠してる奴が出てきた……、流行りなのか、それ?」
「クスクス、ごめんなさいね、醜い顔なので人に見られたくないの…」
「……、俺の事を知っているのか?」
「そうね、ユーディキゥム、貴方は神に見初められた存在、皆が貴方に注目してますよ?」
「神?」
「知っている筈です、貴方は毎夜神と対話している」
「……、何でそんな事が断言出来る?」
「さぁ…?何故かしら…」
「気色悪い奴…」
今のやり取り出ハッキリとしたことがある
この覆面女は俺の知らない俺の事を知っている、
おそらくはフィーファの居場所とフィーファの謎についても…、
こんなチャンスは滅多に巡って来ない、
聞き出せる情報は全て聞き出す
「教えてくれよ、」
「あら?何が聞きたいのですか?」
「フィーファの居場所、
ユーディキゥムの意味、ネメジスの意味」
「あらあら、一度に沢山聞きたい事があるなんてとっても我儘ですね、貴方」
「教えてくれるんじゃないのかよ、」
「教えて上げてもいいけど私のお願いも聞いてくれる?」
「なんだよ、内用によるぞ?」
「あら、しっかりしてるのね、じゃ、単刀直入にいうわね、私とお友達になってくれない?」
「おっ、お友達?」
「えぇ、そう、お友達、」
「恥ずかしながらお姉さん、昔から友達がいた事が無いの、だから坊やが私のお友達になってくれないかな?」
「誰が坊やだ!」
「あら、ごめんなさいね、それでどう?お友達になってくれる?」
「友達ってのはなれって言われてなるもんじゃない、」
「あら?手厳しいのね、お友達にはなってもらえないのかな?」
「別にならないとは言ってない、」
「そう、嬉しいわ、じゃ行きましょうか?」
「行くって……何処に、」
「何処って貴方が言ったのでしょう?あの子の居場所を教えてって?」
「っ!?、…フィーファの居場所に案内してくれるのか?」
「えぇ、貴方さえ良ければ……、ね?」
「わかった、行くよ、」
シェインが覆面で顔を隠した女に同意し、彼女について行こうと決心したまさにその時だった
「だめ!!そいつについて行ったらだめ!!」
「モルタ?」
「ダメダメダメ!!絶対にダメー!!」
モルタがシェインの左腕にしがみつき必死に静止をかけてきたのだ、
その形相はまさに必死そのもので大切なものが奪われる事への恐怖が滲み出ていた
「あいつは駄目!あいつだけは駄目!ダメダメ!」
「何でだよ、フィーファがいるところに案内してくれるって…」
「ダメなモノはダメなの!ダメ!」
駄々を捏ねるだけでシェインを納得させるに足る理由を話そうとしたいモルタにシェインは煩わしさのようなモノを感じる、
眼の前の覆面女はたしかに怪しい、
仮面の騎士に続くかの様に現れたタイミングなどこれ見よがしが過ぎる
ついて行ってどうなるかなど解るはずもない、
フィーファに会える可能性だってあるのか無いのか、それすらも分からない、
それでも今は僅かながらの可能性に縋りたいのが現状なのだ、
「聞き分けてくれ、あの女が怪しいのは俺も分かるけどいまはコレしか無いんだよ、」
「駄目なの、あの人に近づいたら駄目なの!」
(近づいたら…?)
「まったく小うるさい贋作ね、」
「!?」
覆面女の纏う雰囲気が一気に変わる
今までの温厚は態度な先程の言葉からも分かる通り崩れ去っていて、その声音は酷く冷たく、また重たかった
「ネメジスの贋作、まがい物、いえネメジスを真似て作られたのにその粋に達する事すら出来なかった失敗作、貴方には贋作としての価値すらないの」
「違う!モルタは偽物じゃない!!失敗…作じゃ……」
「せいぜい抗いなさい?抗って、もがいて、それでも得られない愛を求めてね?」
「……モルタ…、」
「…ねぇ…シェイン、モルタは……、ニセモノなの?失敗作なの?、誰もモルタなんていらないって思ってるの…?」
「………はぁ、なぁ覆面女さんよ、ちょっといいか、」
「あら、何かしら?」
「せっかくの申し出だけど遠慮しとくわ、他人をあけざまに罵倒する奴に着いていくなって昔親代わりをしてくれた人に言われたのを思い出したんでな、」
「あら、残念、でもいいの?あの子へと繋がる手掛かりは私しか持ってないのよ?坊やは困るんじゃない?」
「フィーファは俺が自力で探す、アンタみたいな顔も名前もわからない奴には付いていかねーよ」
「そう、勇ましいのね、流石はあの人の子供、好意を感じてしまうわ、でも残念…、」
「え?」
覆面女は両腕を広げまるでシェインを迎え込むかのように無防備を晒す
彼女の体はフワッと浮き、重力を無視して浮き上がっていく、
シェインは幻視する、
そこにドアがあるのを、
さっきまでそんなモノは無かった筈だ、
ドアは勝手に開いてシェインを誘う様に近づいてくる、
いや、シェインから近づいているのか?
わからないが気づけばドアの向こう側にいた、
女の声が聞こえる
女は言った、
「貴方に拒否権は無いの、ごめんなさいね、貴方はこの日の為に存在を許された、彼の悲願、その成就の為に、」
目を開けるとそこは先程の場所とは明らかに違っていた、
一面を覆う花、花は何処までも広がっていて、まるで世界が花で満たされているかの様、
空はさらに異質だ、
色んな物が浮いている、家、屋敷、城、乗り物、家具、見たことも無い物も紛れている
地面の花々の花弁が宙に舞い、異常な光景なのにそれがかえって幻想的な光景に思えてくる、
「なんだよ…、ここ、………!!?フィーファ!!」
フラフラと歩き周囲を確認しながら前に進んでいると眼の前に探し人を発見する
フィーファは白い椅子に座っている、
眠っているようで規則的な寝息が上がる、
不覚にもその姿が余りに絵になっていたので見入ってしまう、しかしそんな事をしている場合ではない、
彼女を早く助けないと
急いで彼女の元に走り寄ろうとするがそれはかなわなかった
「お前…、」
「………、」
カラッタ村以来の再開
もっとも求めた訳ではない
願わくば会いたくは無かった
仮面の男、漆黒の騎士が立ちはだかった
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