71話 バァルの民
「アルフィダが…バァルの民…?」
レイラはディオールの言葉をオウム返しするように復唱する
ディオールはバァルの民とは戦闘民族だと言った
つまるところ戦う事を主とした民族という事だろう
アルフィダがそのバァルの民?
「つまりなんですか?ラティクスは戦闘民族を擁する国だと言う事ですか?」
「いや、確かに血気盛んな奴が多い国だが戦闘狂みたいなのはいないと思うぜ?」
「ならおかしいじゃないですか、アルフィダの出身はラティクスの貴族だ、その彼が戦闘民族の出だなんて矛盾している、」
「アイツが何故自由騎士なんて汚れ役を与えられてるか考えた事はあるか?」
「え?」
「騎士なんて大層な肩書だがアイツの立場、自由騎士は実質傭兵より質が悪い、傭兵にはそれなりの保証があるが自由騎士にそんなモンは無いからな、使い潰しの道具と変わらんのよ、」
「そっ、そんな事!」
ディオールの話をアランが引き継ぐ形で話す
「勘違いしてほしくないのは王は決してアルフィダを軽視して自由騎士という役職を彼に与えてる訳ではないのよ。」
「なら、いったいどういう理由が?」
「彼自身は否定するでしょうけどアルフィダは本能的に闘争を求めている。無自覚に、無意識に、だから王はアルフィダを過酷な戦地に送り込む、彼が彼でい続けるためにね。」
「そっ、そんな……それではまるで……」
「戦闘狂ですね。」
「レコ……」
「彼とは少ししか共に過ごしていませんが節々で戦闘を楽しんでいる印象をうけました。今の話しを聞いて合点がいったという感じです。」
否定は出来なかった。
レコの言った通りアルフィダはどこか戦い自体を楽しんでいる節があるのはレイラも感じていたからだ。
しかし同時に彼がそんな自分を否定したがっているのもレイラは知っていた。
戦闘狂、それは一種の病気だ。
戦いたくて闘いたくて堪らない。
それを抑圧し抑え込むのは並大抵ではないのだろう。
アルフィダは一生治ることのない病気と共存していかなければならない、そういう事なのだろう。
「今でこそかなりまともになったけど昔はかなり酷かったって話だ。それこそ抜き身のナイフの様に全てに殺意を向けていた、……らしい…俺も当時のアイツの事は知らんからな、全部聞いた話だ。」
「そうですか、しかしそれがアルフィダとバァルの民とかいう民族となんの関係があるんですか…」
「ここからは本人に直接聞け、俺から話せるのはここら辺までだ。」
ディオールはレコに視線を向けたあと再びレイラに向き直りそう言った。
ディオールのその態度はレコがいる前では話せない物だと言う事を如実に物語っていた。
「わかりました……」
それを感じ取ったからこそレイラは同意するしかなかった。
ところ変わって場所は屋敷の中庭。
そこにはアルフィダともう一人、ここまで案内してくれた騎士がいた。
彼は先の馬車を包囲していた騎士団のメンバーでフューフェの部屋への案内時も騎士団長に腰巾着のように同行してきていた。
見た目はアルフィダと同じくらいの体格で年齢もそう離れてはいないだろう。
顔立ちも整ってる方で美型に数えられる程度の容姿をしている。
そんな彼はその整った顔立ちを精一杯歪めてアルフィダを睨みつけていた。
「何故だ!何故あの方の…フューフェ様の力になってあげようとしない!貴様にはそれが出来たはずだ!」
「さっきから言ってるだろ…その気は無いって…」
「だからそれは何故だと聞いてるんだ!貴様にはその資格がある!何故選ばれた貴様が彼女の力になる事を拒むんだ!」
「だからさぁ……はぁ…めんどくさ…」
「なっ!?貴様今なんて言った!面倒くさいだと?今面倒くさいといったのか!?この僕に!この名門グラニエール家次期当主のこの僕に!」
「グラニュー糖だかグラサージュケーキだが知らんが家の名前を出す奴に大した奴はいないぞ?お坊っちゃん」
「誰がケーキだ!人を甘味みたいに……取り消せ、この不埒者が!」
「どうでもいいが、名門貴族出身なんだろ?何故下級貴族の部下なんかに甘んじている?」
「貴様には関係ない!」
「そっか、なら俺はもう行くな、そろそろ休みたい、」
「まて!話はまだおわっ……おい!……くそ……」
騎士の少年の静止を無視してアルフィダはあるき去っていった、
態度から面倒くさいという感情がこれでもかと浮き出ていて、騎士の少年のプライドを一々刺激する、
しかしアルフィダからすれば面倒くさいのに絡まれたという感情しか持ちようがない。
しばらく歩いて例の少年を撒けた事を確認後彼ははぁ…と溜息を一つこぼす。
身分に関係なく一人の女に入れ込ん出るタイプの面倒くさい人種だ。そのくせプライドは無駄に高く自意識過剰気味だ。
「面倒くさいのに絡まれたな…はぁ…」
「それは私の事ですか?」
「え?…なんだ…、レイラか。」
そこにやってきたのは赤髪の女戦士レイラだった。
「こんな所で何を?」
「聞いてたろ?面倒くさいのに絡まれてたんだよ?」
「なんですか?野党にでも襲われましたか?」
「野党のがまだいいな。」
「それはそれは……。」
「ディオールから聞いたんだろ?俺の事を?」
「……はい。」
「聞いての通りさ、俺は人を殺す事になんの戸惑いも持たない化け物なのさ。」
「私には分からない。貴方はラティクス国所属の名門貴族ミルシュバーグ家の嫡男だ。その貴方が戦闘民族の出だとか言われても……信じられない」
「それは誤情報だよ、俺の中にミルシュバーグ家の人達の血は入っていない。」
「え?」
「俺は孤児なんだよ、レイラ、お前と同じ戦災孤児。」
「アルフィダが孤児?……その…初耳です。」
「しかも只の戦災孤児じゃない、かつてこの世界を引っ掻き回した諸悪の現況、バァルの生き残り……らしい」
「………、」
「バァルは戦う事を生業とする血生臭い種族だ。戦う事で成り上がった種族だと言われてる。決闘などの代役をはじめ、傭兵、護衛、戦争、暗殺、毒殺なんてのもある。とにかく戦って殺しその対価として金を得て大きくなっていった。
だから奴らはいつしか戦闘民族だなんて言われる様になっていった。
俺はそんな連中の唯一の生き残りなんだよ。」
「唯一って……ではバァルは…アルフィダの本当の家族とよべる人達は……」
「死んだよ、とっくの昔にな。……あんま気にするな。奴等に家族としての義理や感傷はない。物心付いて間もない頃から戦闘訓練ばかり植え付けられたからな。血が繋がってたところでそれが大きな意味を持ってるなんて俺には思えないし、俺にとって奴等はいつか殺そうと思っていた獲物としての価値しかなかった」
「……、」
「そんな顔すんな、兎に角俺はそのバァルの血をひいた孤児だった、そんな俺を拾ったのがラティクス王だった。俺は王に感謝している、あの人は俺に生きる場所を与えてくれた恩人だしな。なのに俺はその王の親友を、シェインの父親代わりを…俺の先生を…してくれた…グライン先生を……殺してしまった。俺は……償わないといけないんだ、この命をかけてな。」
「……貴方がグライン卿を手に掛けた本当の理由は……」
「バァルの民のなかにある衝動…殺人衝動。あのときの俺はそれを抑えられなかった…言い訳も誤魔化しもない、謝って済まされるモノでもない。」
「……、何故私にその話してくれたのですか?話したくない内容だったのでしょう?」
「そうだな…きっと誰かに聞いて欲しかったんだろうな。」
「シェインにその話は?」
「出来る訳無いだろう、こんな話。」
「前にも言いましたよね、シェインは貴方を許すと、話し合うべきです…シェインの事を思うなら。」
「………、その内な。」
「…はぁ…、…それで…?何故貴方はバァルを探してるのですか?」
「王の命令ってのもあるが一つ大きな理由があってな。」
「聞いてもいいですか?」
「バァルにはバグ持ちの発生率が異様に高いんだよ」
「バグ持ちの発生率?」
「疑勇者や情報姫……フューフェ嬢が発現したような物より戦闘に特化した能力を発現する割合が高い、民族の7割がそういったバグ持ちだと言われている。」
「7割……、ゾッとする話ですね…」
「安心しろ、バァルは10年以上も前にラティクス王の手によって滅ぼされてる、どれだけ馬鹿げた力を持った集団でも国一個を相手取れる程の規模じゃない、兵法とは結局数の暴力が一番だと歴史が証明してる。」
「ならバァル探しなんて無意味なのでは?」
「いや、残党がいてもおかしくないだろ?それだけおかしな力を持った奴等が実在したんだ、後顧の憂いを立つためにも俺が掃除しないといけないのさ」
つまるところ同じバァル同士をぶつけ合わせ共倒れさせるのが一番効率的だと言う事だ。
アルフィダはそのためのピース。
レイラにはラティクス王がアルフィダを道具の様に使ってる様に感じられて不快にしか思えなかった。
(胸糞悪い話だ)
たしかにバァルなる種族が実際にいて今も何処かで生きてるなら恐ろしい話だが…
そういえば……
アルフィダにも、バァルの血が流れている…
それはつまり彼にも…
バグがあるという事なのだろうか?
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