70話 情報が生き甲斐
「そりゃ無いだろう…」
フューフェの自室にアルフィダの声が反響する、
呟いただけでそこまで大きな声で言った気はない、
落胆したと言ってもいい、一連のレスティーナやイノセントを巻き込んだマグラーナ国の騒動
その黒幕の正体であるところの彼女ともあろう存在が見落としていい穴ではないからだ、
「まっ待って下さいまし!その存在とはだれなのですか!?」
フューフェはその場にいる皆に問いかける、
その形相は必死だ、これまで何処か超然とした印象を持っていた彼女、そうなるよう挙動を心掛けていた彼女のメッキが剥がれる
「誰なのです!?ねぇ…誰なのですか!?そんな人物いるわけない……あの娘の心を折る事が出来るだけの心の隙間を埋めてる存在なんて……」
その場にいる自分以外の5人、アルフィダやレイラ達に彼女は次々と聞いていく、肩に手を置き、掴みかかって聞いていく
誰なのだどなたなんですか?と、
その形相は必死の一言に過ぎた
ディオールとアランは答えられない、誰か知らないからだ、当然だ、彼等はフィーファと直接の関わりがない、当然シェインとも、この2人との接点を持たない彼等にフィーファの想い人など解るはずもない、
もっともわかった所で答えたりはしないが、
アルフィダもレイラもレコも答えたりはしない、
アルフィダはシェインに危害がかかるような事はしないし、レイラもフィーファに忠誠を誓っている、さらにシェインには友情を感じているし、最近では弟にせっする姉のような気持ちにもなっている、彼女が口を開く事は無いだろう、
そしてそれはレコも同じだった
確かに彼女はフィーファの事が嫌いだった
なんの不自由もなく与えられた権利や境遇、身分に甘んじ、努力する事を怠る怠惰で愚かな存在と見下していた、しかしそれは彼女の思い込みだった
フィーファはフィーファの出来る事を模索し、苦しんでいた、
命の危機にさらされれば自分を差し引いて他者の命を優先出来る優しさ、勇気を持っていた、
彼女が人間ではない、化け物だ、そう言われた所で半信半疑は拭えないし、仮に彼女が化け物の類だとしても一度彼女に感じた感情が揺らぐ事は無かった
とどのつまり、この場所にフィーファを売ろう等と考える者はいない、
そういう事だ
しかしそんな事で納得するならフューフェという少女はここまで屈折していない
生まれながらに列国所属の王族として恵まれた地位を持ちながら両親に愛されず赤子の頃に苛烈な虐待を受け、痛みを痛みと認識する以前から母親から訳の分からない憎悪を浴びせられ続けた
しかし普通の人間だったならば赤子のころの体験など覚えている事の方が異常だ、
しかし彼女はその特異体質が為、忘れる事は出来ない、
赤子の頃のこの体験が彼女のトラウマとして残り続け、精神を狂わすには十分な体験となった、
父はその言動が衆目に晒され、王位を剥奪、死刑すら考慮に入れられる程の過失であったが下級貴族となる結果に落ち着いた、
王族としての地位を失い、性欲の権化と揶揄される父を持ち、幼児期のトラウマで彼女の心は物心つく頃から屈折仕切っていた
そんな彼女が発狂や廃人化せず自我を保てたのは情報の操作が予想以上に楽しかったからだ
生き甲斐ですらあった、
世界の情勢を、他人の人生を、
自分のいのままに操作する感覚は彼女の欠けた自我を補強するに足る物だった、
勿論ただ完全に記憶出来ると言うだけで世界や他人をいのままに操れはしない、
王族として優れた知性が彼女に備わっていたからこそ成せた偉業だろう、
だから彼女は我慢ならなかった、
他人のこと、それも一番見落としてはならないあの娘の事、それが分からない、
そんな事あってはならない、許されない事なのだ
「祖父は違う、あり得ない事ですわ…、ならあの元近衛騎士団長…違う…、 精神的柱には違和感がありますわ…、いったい誰が…、もしかしてあの田舎臭い少年…?あり得ない…あんなの只の取り巻きの勘違い男ですわ……、いったい誰なんですの……」
事の見事に正解を口にしながらそれをあり得ないと通り抜けていく、彼女の様子にアルフィダもレイラも開いた口が塞がらない様子だ、
しかしそれは仕方のない事だ、彼女はフィーファと言う人間とわかり合うつもりなど毛頭ないし、いつまでも憎悪の対象としての興味しかない、
それ以前に、
彼女の捻じれ屈折した価値観に人の恋愛観など全く無く、そもそもが無価値でしかなく、フィーファがその田舎臭い少年に恋心を抱いているなどと発想すら無かったのだから
「なっ……なんですの!その顔は!!私を!わたくしを!!見下すな!!私は世界を情報で支配する完全記憶能力者なのですのよ!?貴方方のような俗人が!
そんな目で見ていい相手ではないのですわ!!」
「安心しました、貴方も私達と同じ人間だと、今再確認出来ましたから…」
「私は……私は俗人なんかじゃない!私は…」
「はっ!良かったじゃね~か?お嬢ちゃんが恐れる妹君と違ってまともな人間だとお墨付きを貰えたのだろ?もっと喜べよ?」
「私はあの娘を恐れてなんていないですわ!私は!わたくしは……ただ…あの娘の危険性を皆様に周知していただきその危険性をご理解いただきたいだけなのです!!」
「お言葉ですがフューフェ様、貴方はフィーファ様の事を何も知らない…理解されていません、そんな方に我が主を侮辱されては只々不愉快なだけです」
「レイラさん、貴方私のお話、聞いてました?私はこの世界全ての情報を掌握しているのですわよ?あの娘の事を知らない等あり得ないしそもそも私は嘘も偽りもない真実を語っていますの、侮辱と取られたとしても私には真実を貴方方に知って頂く義務があるんですわ」
「語るに落ちてるぞ、フューフェ・ウラニティ、ついさっきあんたの情報には限界が有ることが露呈した、たしかに列国を手玉に取った手腕は見事だがそれで世界の情報を掌握しているはいささか大きく出過ぎだ、アンタの知らない事などこの世にはごまんとある、
それにレイラもレコも仕える主がどんな存在だろうとも彼女等の忠誠心は変わらないだろうし、その主を化け物だの何だのは逆効果だといい加減きずけよ?
アンタはただフィーファ姫から彼女の仲間、アンタの視点で言えば取り巻きを奪い手懐け籠絡したいだけなんだろ?」
図星だった、実際彼女は昂ぶった感情から似たような事を先程口走っている、大言壮語を口にしているが所詮彼女も子供、フィーファとそう歳の変わらない子供なのだ、建前と本心が反転しても仕方ない事だろう、
もって生まれた能力と知略で情報を操作し、上っ面を支配する事は出来ても幼少期のトラウマから壊れた心
を持つ彼女では人の心を理解は出来ない、ロジックでしか物を見れないのだ
だからこそ結局は彼女の兼ねてからのやり方に依存するしかない
「バァルの民……、」
「!?」
「アルフィダさん、貴方、ずっと探してましたよね?バァルの民の情報を…?知りたくありません?」
「せこい女だな、俺を情報で釣ろうってか、」
「強がっても駄目ですわよ、貴方がバァルの民に関わる情報を欲している事は既に把握してますから…」
「驚いたな、誰にも話した覚えは無いんだがな?アンタ記憶能力だけじゃなく読心術もできるんじゃないのか」
「ふふ、さぁどうします?教えて上げますよ?条件付きで」
アルフィダは言葉使いこそ普段の飄々とした物だがその目は相手を射殺さんばかりの殺気に塗れている、
それがフューフェが口にしたバァルの民なる存在の価値を高めていると彼女に確かな実感をもたせる
アルフィダは人の死に頓着しない、
生かす、殺すに強い価値を持たない、
殺す必要のないものは殺さない、
殺す必要のあるものは殺す、
ただそれだけのシンプルな価値観で彼は行動する、
無論彼は狂人ではない、大事な人の死に涙し悲しむ心を持っているし、無駄な殺生は避ける
ただ人を殺す事に戸惑わない、
昔の狂人だったころならまだしも今の彼は狂人ではない
もうそんな頃は脱している
ただ、アルフィダはフューフェに強い殺意を向けている 殺気なんて生易したあモノではない
何人もの人を手にかけて来た本物の殺人者の殺意
そんな物を浴びて一介の貴族令嬢がまともでいられる訳がない
泣き喚き、わけも分からず生を懇願し、失禁するだろう、
実際、レコも自分が向けられてる訳でも無いのにガタガタ震え顔も青くなっている、
しかしそんな殺意を向けられているのにも関わらずフューフェはクスクスと変わらず…いや、先程よりも上機嫌に優雅に微笑んでいる、
「驚いたよ、ホントに、見下げ果てた胆力だ、普通はもっとビビってくれるんだけどな」
「わたくしのカードが有効だという証明ですもの、嬉しくもなりますわ」
「はぁ…、」
バァルの民、一族、呼ばれ方は様々だがその様に呼ばれた種族がいた、
彼等とアルフィダの関係はレイラには分からない、
しかしアルフィダのあの食付き方は尋常なモノではない
レイラは無自覚に焦り、不安、そのような感情にさいなまれた
「アルフィダ!」
「大丈夫だ、絆されたりはしない、」
「わたくしの仲間になってくれればお教えしますよ?貴方の知りたい情報を?」
「バァルの事は俺自身で調べるさ、ただアンタも情報屋なんてやってると色々形見が狭いんじゃないか?俺がスッキリさせてやってもいいんだぜ?」
「遠慮いたします、後、誤解されてはたまりませんので予め申しておきますがわたくしはバァルとは無縁です、」
「疑ってはいないさ、その見た目が何よりの証拠だ」
アルフィダはそう言うとフューフェに背を向けると彼女の部屋の出入り口となるドアに向かい退室しょうとする
、その行動にフューフェ、そしてレイラ達も驚かされる
「あ、アルフィダ?何処に行くのですか?」
「聞きたい事は大体聞けた、もうここに用もないしな、
ずっと馬車の中だったし、少し眠い、
そっちが勝手に俺たちを招いたんだ、部屋の用意くらいしてくれてるのだろう?」
「あらあら、適当な使用人を捕まえてくださればお部屋に案内してくれますわ」
「たすかる、」
そう言うとアルフィダは部屋から退室していった
「勝手なヤロウだなぁ〜相変わらずよ〜」
「まぁ彼らしいわね、」
とはディオールとアランだ
彼等もアルフィダとは付き合いが長い、これ以上の問答に意味がないとさとっての行動だろうと理解した、
「私達も休ませて貰えるのかしら?」
「えぇ、好きなだけここでおくつろぎ下さいませ?貴方方はわたくしのお客様なんですし、持て成しますわよ?」
「じゃ甘えさせて貰うわね?行きましょ?二人共、」
アランにたくされレイラとレコもフューフェの部屋から退室する、
部屋の外には既にアルフィダの姿は無くメイドが一人待機していた。
部屋からの退室後四人はそのメイドに案内され、とある部屋に案内された、ディオールが部屋の中に罠の可能性もあるのではないかと部屋の中を確認するが特にそれらしい仕掛けはなく、四人はそれぞれくつろぐ事にした
「いやはや、情報過多過ぎだな、一度に色々聞かされ過ぎておっさんの頭じゃ整理仕切れねーわ、」
「そうね、色々通り抜けていて、感情が追いつかないわね、」
「………、あの……、」
ディオールやアランにレコは声をかける
これまでとは違った意味でよそよそしい
「バァルとはなんですか…アルフィダ様は何故あれほどど……」
このレコの質問にはレイラも気になる所が多かった
アルフィダとはそれなりに古い付き合いだがなんだかんだ彼にまつわる事で知らない事は多い
いや、
知ってる事の方が少ないくらいだろう、
自然とレイラもディオール達へと視線を向ける
「昔実在した戦闘民族がそういう名称だったかな、」
「戦闘民族ですか…、それとアルフィダにどういう関係が?」
「そうだなぁ〜アルフィダは…」
「待ちなさい、貴方…勝手に話してアルフィダに恨まれても知らないわよ?」
「気にするかよ、そんなん、こう言いのは隠しててもお互いいい事ねーんだ、酒でも飲みながら笑い話に出来るくらいでちょーどいいんだよ!」
ざっくばらんにアランの静止を無視して
ディオールは話だした
「アルフィダは元々バァルの民だったって話だ」
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