67話 フューフェ・ウラニティ
アルフィダ、レイラ一行が乗る馬車はアングリッタへと旅路を無事終え、今はそのアングリッタ領土の国壁に来ていた、入国自体はレイラ達を攫った盗賊達から奪取した許可書にて簡単に出来るだろうが問題は入国した後となる。
レイラやレコ達を攫った盗賊達に命令した者の目的は今だに判明してはいない、マグラーナからレスティーナへのスパイ行為を行っていた者達が今回の拉致候補者だとは考えていたがアルフィダはそこに関しても疑問に感じていた。
(今更マグラーナとレスティーナの軋轢なんかにはそこまでの価値はない、なら連中はなんの目的でレイラ達を欲しがっているんだ?)
列国所属国としてはもはや地位を維持していないマグラーナには言っては悪いが価値は無いだろう、
現在あの国はトップを失い主導者もいなくなった
主導者の役割はエセ勇者からフィーファが成り代わり、どうやったのか知らないがあの頭の固いと有名なレスティーナ王の強力を取り付けレスティーナから支援金を流す事に成功しているがそのレスティーナからの支援金が目的なのだろうか?
(どっち道回りくどいな、)
現在のアングリッタは手広く商売をしている、昔はかなり衰退していたと聞くが先のアーティファクトを初め、旧時代の異物をレストアして量産し、大きな売上を記録している、
しかしそんな物を列国内部では見た事がない、
列国内でアーティファクトは流通していないのだ。
商売するには買い手が必要だが買い手に列国が含まれていないならアングリッタは何処にコレ等を御しているのか?
「考え事ですか?アルフィダ?」
「え?あぁ……アングリッタの目的とかな、」
「確かにあの国は分からない事が多いですからね、列国の中でも浮いていますよ…」
「悪いな、そのアングリッタの中に放り投げる事にこれからなるんだから、」
「なんなら一緒に来ますか?」
「行きたいのは山々だが俺は顔が割れてるだろうし、動向したら任務がこなせないんだよなぁー」
「あら?なら変装すればいいじゃない!」
「へ?」
アルフィダとレイラの話に割り込んできたのは彼等にとっては年長者に当たるアランだ、アランは事も無げにアルフィダに変装を持ちかける
「いや、アランそれは無理だよ、俺は顔が割れてるし、少し変装なんかしたところで…」
「ええ、わかってるわ、だからただ変装するのではなく、女装すれば問題はないわ」
「はぁ?女装!?」
「まさかラティクスの自由騎士に女装癖があるなんて無向こう様方は発想にないだろうし、騙すにはうってつけよね♪」
「馬鹿を言うな!そんなの駄目に決まってるだろ!男が女に化けるなんて無理があり過ぎる!」
必死に反論するアルフィダに酒をラッパ飲みしながらコチラに歩いて来たディオールが適当に言う
「いいじゃん、面白そーだし、べっぴんさんになったら盛大に笑ってやるから腹くくれよアルフィダ!ははは」
「てめぇ…人ごとだと思って…レイラもなんとか言ってやってくれよ、この馬鹿な大人共にさ、」
「いえ、割りと良い手なのではないですか?アルフィダは中性的な顔立ちをしてますし、きっとよく似合うと思いますよ?」
「まじかよ…」
クスクスと笑いながらアルフィダが言う所の馬鹿大人達の意見に賛同するレイラに対して頭に手を置きはぁ~と深い溜息をこぼすアルフィダ。
しかし自分の中で覚悟を決めたのか、そんな面々に顔を向けると彼はこう言い放った。
「どうなっても知らないからな!!」
それから数時間後、
無事に盗賊達からせしめた入国許可書にてアングリッタ国に入国を果たした面々は適当な宿を拠点として今後の作戦会議に当たっていた。
最もそれは作戦会議というよりアルフィダ女装改造計画とでも言う物で、レコが町中で購入してきた美容品類を女共が喜々といった感じで弄くり回していた。
アルフィダはされるがままだ。
ディオールに至ってはそんなアルフィダに同情の目線を送るのが精々だがアルフィダからすれば裏切り者でしかない、それが解っている分居た堪れない。
アルフィダからはお前も同意してたよな?
とさっきからずっと睨まれているが気付かないフリに徹するしかない。
そしてとうとうアルフィダ改造計画は終了し、変わり果てた彼、もとい彼女はそこにいた
「おぉ!思ってた以上に様になってるわよ!アルフィダ!」
「本当に凄いです!アルフィダ様、本物の令嬢のようです!」
「ふふ、似合ってますよ、アルフィダ…」
女共から思い思いの感想を貰うがアルフィダ当人からすればこれ程嬉しくない事もない。
「くくく、いやはや、マジですげぇ、自信持てよアルフィダ、これは絶対バレねえって!
もはやそこらの女より女だよ、お前が男だと知らなかったらナンパしてる自信あるわ!」
ディオールからのお墨付きまで貰った、
只々不愉快である。
しかし実際の所アルフィダの女装は極めて高次元の完成度だった。
元々整った中性的な顔立ちの美少年といった容姿だったのに加え、鍛えていたため腰も細くコルセット等の類の衣類も問題なく入る。
ウィッグや化粧、女物の衣類を着ればもうそれだけで一定のレベルは彼には不愉快な事実だろうがクリアしているのだ。
ここに女共の化粧スキルが遺憾なく発揮される
メイドとして働いていたレコはこの手の技術には長けていたし、カワイイ物が密かに大好きなレイラも割りかしノリノリで、アランも面白半分ではあったがこの提案をして良かったとほくそ笑んでいだ。
「あの…これからどうなさるのでしょう…アルフィダ様に同行していただけるのは大変有難いのですが…」
「取り敢えずはディオールとアランには盗賊共の代表になってもらって取引に出向いて貰わないとな、ディオールの人相なんて盗賊にうってつけだしな、」
「ここで当て付けの様に俺の容姿ディスらないでくれますかぁーお嬢さーん!」
「残念だったなぁえぇ?俺みたいな美少女だったらお前も女装メンバーに入れたのになぁ!?」
「謹んで任務に励まして貰います!お嬢さん!」
「誰がお嬢さんだ!」
「まぁまぁ、取り敢えず引き渡しにはディオールと私も同行します、連中がどの様な行動に出るかは読めませんので各々警戒していてくださいね、」
「は…はい…」
レコが臆したように小さく返事をするがそれにレイラは明るく対応する。
「何も問題はありませんよ、アルフィダが同行してくれますし、当初の予定に比べれば私達の安否は大きく変わりますよ、」
「彼を信頼してるのね、レイラ、」
「彼は守ると決めた人間は何があっても守る人ですからね、」
そう答えた後に小さく
「だからこそ心配なのですが…」
と呟いたレイラの声はレコには聞こえてはいなかった
レスティーナから拉致したレイラ、レコ等の要人の引き渡しは国内のとある倉庫で執り行われる手筈となっていた、
盗賊連中には引き渡す相手の情報等はもたらされてはいないようで取引相手が誰なのか正確な情報は何も開示されてはいなかった、ただアングリッタ内の上流階級の間でしか流通していないアーティファクトを無償で貰えるほか任務の前金は破格で多少きな臭くとも引き受けるだけの価値は十二分にあった。
まぁまともな常識があるならこんな怪しい依頼、何処まで切羽詰まっていても引き受けるものではないのだが。
現に本来の盗賊共は皆殺しに合っていてろくな目に合っていない訳なので。
アルフィダ、レイラ達は再び馬車に乗ってその倉庫へと夜のアングリッタの町中を走る。
布で囲いがされた荷台の中には手足を拘束されたレイラとレコ、そしてアルフィダが無造作に乗せられている…感じを装っている。
御者席には盗賊風の衣装に着替えたディオールとアランが搭乗している。
夜のアングリッタの町中は夜なのに昼のように明かりがポツポツと付いてをりそれがこの町で作り出された技術である事がうかがえる
アングリッタは他の列国所属国と比べれば領土自体はそう広くない小さな国だ。
数百年前、当時この大地を支配していた大陸の支配国家ハイゼンテール国はこの土地から出土する用途の分からない出土品をガラクタ群として見向きもしていなかった。
しかし、このガラクタ群が実は宝の山でその恩恵でアングリッタは列国に名を置く程に大きく成長した。
過去の技術、古代文明、それは魔法に適正を持たない只の人を疑似的な超人にしてしまえる程の物だった。
無論それだけで国は大きくはならない、
過去の遺産は人の生活水準を飛躍的に進歩させるに足る技術だった。
この町中の灯りもその一つだ。
迷信やおとぎ話に登場する神の時代、この世界の遥か昔に存在した神々が残した遺産。
その遺産を行使するこの国の人々はそれ故に選民意識が強い、神に対する信仰心も。
だからこそ白銀聖魔導協会等の宗教組織とも密接な関わりをもっていた
馬車を停車させた一行は例の倉庫の前へとやって来ていた。
周囲には人影は無い、内々の取引にはうってつけの場所だが人の気配がまるでない。
盗賊達が保有していた依頼内容には時間や場所等の情報も記されていて、その内容通りに動いていたのだがその場所に時間通りに来たのにも関わらず待ち人がいないのには違和感を覚えて然るべきだろう。
「ディオールこれって……」
「俺等が落ち合う場所を間違ってるとかでもない限りは、……すっぽかされたとか?」
「そんなわけ無いでしょ?何かしらの罠にかかったと見て間違い無いでしょうね…、」
「チッ、面倒くせー事になっちまいそうだな」
馬車の荷台の中で手足を紐でくくられたアルフィダ達もその違和感には当然気づいていて様子見を強いられる結果となっているがこんな状況に慣れる事が出来ない人間は当然いる。
むしろそれが普通なのだから額から冷や汗を流して忙しなく目をギョロギョロさせているメイド服の女性、レコを攻める事は出来ないだろう。
「どうなってるんですか?」
「待ち人現れずって感じだな、」
「えぇ…じゃ私達は見逃して貰ったって事ですか…?」
「それは無いでしょうね、このアングリッタに通して貰えるように通行許可書を発行したのは賊の依頼者でしょうし、それに私達はアーティファクトなる機密にも触れた、普通に考えて私達を開放する意味がわからないですよ、」
「だな…」
「そんなぁ……」
「………、シッ!静かに!」
「え?何……」
小声で話し合う荷台に寝かされた3人だがレコに比べてもアルフィダとレイラの落ち着き様は年相応には決して見えない。
年長者としては少しだけ情けない気持ちになるレコだった。
そんな時だ、荷台の外が少し騒がしくなってきたのは
「ヤッコさんのお出ましだ……しかも最悪の形だな…」
馬車は完全に包囲されていた、東西南北あらゆる場所から武装した騎士らしき者達の姿が見える、
遠くにはコチラに照準をとらえている狙撃手の気配も感じられる
外にいるディオールやアランもこの状況には流石に肝を冷やさざるおえない、
「想像してたより最悪の結果じゃねーの、これ?」
「そうね、貴方の酔も覚めるんじゃないの?」
「あぁ……たった今覚めてるとこだわ…」
「私達を排除して要人だけ攫おうって魂胆かしら?依頼金を払う気をサラサラ感じないわね」
「顔も出さない依頼主が一介の盗賊にする扱いなんて所詮こんな物だろうさ、はなから騙す算段だったんだろうな〜、可哀想に」
「私達が今はその盗賊なんだけどね~」
馬車を囲う形で配置されている兵の数はざっと50人といった所か、たった二人を相手にするにしては大所帯だ、余程逃したくないという固い意志を感じるが、向こう側はいつまで立っても襲ってくる気配がない。
不信に思っていると向こう側に動きがあった。
騎士長らしき男が数名の部下だろうか?を引き連れて馬車の方に、つまりはディオール達の方に歩み寄って来る。
騎士長らしき男が前に、その後ろの部下達は何かを守るような列形成だ。
ディオール達の前にやって来てた騎士長らしき男はディオールに警戒心を持ちながら話しかけた。
「確認するが貴公はラティクスの衛兵、ディオール・プルオールで間違いないか?」
「なっ!?」
「その反応…間違いない様ですな…」
何故この男に自分の身柄が割れているのか?
しかもラティクスで衛兵をしていた等という身内くらいしか知らない情報を知られている?
ディオールは確かに若かりし頃、ラティクス軍の衛兵として従軍していた過去がある、しかしその頃の彼は大した戦果も上げておらずお世辞にも名が通るような兵士では無かった、有り体に言えば何処にでもいる一般兵と同じ、認知されるような存在では無かった、
片腕を失った事を契機に軍を脱退し、それからは酒に溺れる日々を送っていたがそんな彼を見かねたのが当時まだ若かったアランだった、
まぁ今も十分に若く見えるが…
「驚いたねぇ…まさか俺みたいなしがない只のおっさんの事をわざわざ知ってくれてるとはねぇ…」
「無論知っていますわ…貴方の事も、そしてアランさん…貴方の事も…ね?」
「え…?」
騎士長とは別に綺麗な澄んだ女の声。
女は守護していた騎士達の輪から抜け出してディオール達の前に躍り出る
一瞬その視線を馬車に向けてから再びディオールとアランに向けてからニッコリと微笑んだ。
馬車の中のレイラやレコ、アルフィダさえも突然現れた女に釘付けだが、それも仕方ない。
何故ならその女はある人物にそっくりなのだから
容姿だけでなく声さえも。
金色の髪、人形のように整った顔立ち、
何もかもがそっくりだった。
「どうも皆様初めまして、私、フューフェ・ウラニティと申します、以後お見知りおきを」
フィーファにそっくりは容姿の少女はそう名乗り
可憐な所作で挨拶した
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