64話 非力な自分を呪えば
フィーファはズルズルとまだ治りきってない足を引きずり壁に背を預けながら移動していた、
体がいつもよりも重く感じる、
魔法である程度の回復を足にかけたお陰で歩けるようにはなったがその代償として痛覚が戻り、足には激しい激痛を感じる
口を開くと思わず悲鳴を漏らしそうになるのでグッと歯を食いしばって痛みに耐えて我慢する
回復魔法ヒールを足に長時間かけ続ければ完治出来るが今はそんな悠長な事をしていられない、
あの自分と瓜二つな外見の化け物に見つかれば殺される、しかしそれよりも問題はシェインだ、
彼は滝に飲み込まれて消えた、早く見つけ出さないと命に関わる、全身打撲、窒息死、色々な死因が予想出来てしまう、それでも彼の姿を見つけるまではそんな予想など無意味だ、生きている、そう信じて探すしかない。
「ぐすっ、すぐっ…、はぁはぁ…私の騎士になったんでょう…だったら生きててくださいよ…はぁ…はぁはぁ……死んでたらゆるしませんからね……シェイン…」
独り言を強がって言ってみても声に涙が混じって呂律がうまく回らない
見つかれば殺される、自分そっくりな見た目の化け物に、モルス・ケルタ、自身をモルタと称する少女は白に近いくすんだ銀色と金色の目の色をしている、
フィーファ自慢の金髪とエメラルド色の瞳と比べても似てるなんて思わない、なら何がここまで自分とあの娘似てると思わせるのか、何故こうまでに共通点を見出したのか、
顔の輪郭、眉の形、目の大きさ、背丈、体格、身体的な特徴がどれも奇跡的に一致しているのだ、
あんなの偶然で済まして言い訳がない
ただ衣服にかんしては黒いボロボロの布を継ぎ接ぎしたようなお粗末な物だ、
良い所のお嬢様が着ていいものじゃない、
(祖父からあんな娘の存在は聞かされてない、ならアングリッタに引きこもってる私の父親に当たる男の隠し子の可能性のが高いの?アングリッタに行けばネメジスやらユーディキゥムやらの意味がわかるの?)
でも今はそんな事を危惧してる余裕はない、
生き残る事、
あの化け物から逃げ切る事
シェインの無事、安否を確認し、助ける、
その為にもこんな所でモタモタしてはいられない
足にヒールをかけながらフィーファはシェインの落ちた滝に向かう、
しかし、
「ウゥんギガギぎぎギぎギぃぃ……はぁはぁはぁ………どごぉー何処にい“るどぉーオネェちゃーん出でぎでよぉーねぇえぇー!!オド!?オドだ!オドを感じる!!オネェちゃん!近くにいるんだね!何処何処何ぉ!??」
(そんなっ!!?)
少しの回復にオド、つまりは魔法を使っただけであの化け物はそれを敏感に察知した、
あの少女はオド、エーテルというものに対する異常なまでの敏感さを持っているようだ、悪い意味でエーテルに愛されている、肉体の異常なまでの回復力はエーテルが彼女の体に常に血液のように流れているからか、欠損した部位を異常なスピードで補修し、それの限界を超えればあの様な変質を遂げる
(何なんですか……あの娘は…異常過ぎる……こんな所でモタモタしてたらシェインが……)
フィーファの感情を焦りが支配する、
滝に落ちて流さたであろうシェインは一刻の猶予もない状態に違いない、
早く見つけて治療しないと生死に関わる、
しかしここで音を立てれば彼女に見つかる、
動く事が出来ない、
力の差で言えばあの黒髪の女程の脅威ではない、
しかしフィーファはあの時以上の絶望に支配されていた、
どうしたって逃げられない、
シェインを救えない、
無力な自分、
情けなさが込み上げてくる、
自分の意思に反して涙が出てくる
魔法に関してはそれなりの自信があった、
城の中という狭い世界だったがフィーファに魔法を教えてくれた先生はフィーファの事を褒めてくれていた、
凄い才能だ、とても人間とは思えないと、
祖父も魔法の才能だけは私の事を認めてくれていた
井の中の蛙、そんな言葉が脳裏に過る
結局自分の才能など凡人の中で認められた程度の物だったのではないか?そう思えてくる
立て続けに自信を喪失する出来事に直面すればまだ幼いフィーファの自尊心など簡単に打ち砕かれる、
そんなぐちゃぐちゃな内面では周囲に気を配る等不可能だったとしてもソレは仕方ないだろう、
しかしそれは平時に限った話だ
今は致命的、命を賭ける局面では特に、
「えへへえへへっえへへ〜、オネェちゃーんみーつけた!」
「!?」
フィーファが隠れていた岩陰に歩み寄るモルタ
その歩みは迷う事なくフィーファがいる岩陰へと向けられている、
(どうしょう?どうしょう?なんとか、なんとかしないと……殺され……)
モルタが右腕を少し動かした、それだけで
岩陰はドォォンと爆発し、フィーファはその衝撃に吹き飛ばされる、
地面に数回のバウンドのあと転がりようやく勢いも止まり、うずくまりながらモルタを見る、彼女はケタケタと笑っていた
「嫌だ嫌だ……、殺さないで殺さないで…」
「だーめ、オネェちゃんはここでモルタが殺すの!
オネェちゃんよりモルタのほうがすごいってパパに見せてあげなくちゃだから沢山……沢山…たーくさんっ!!
………………殺すねっ!!!」
土や泥、自身の返り血に汚れながら尻餅をついてズルズルと後退するフィーファの表情が絶望に染まる
モルタは膨張し、肥大化した自身の左腕にオドを集中し、腕自体が大きなエーテル収束体と化す
あんな物で叩かれたら私はどうなるだろう?
そんなのきまってる
死ぬ
死ぬ
死ぬ………、
そんな時フィーファの頭の中に懐かしい記憶が過る
いつだったか、
何処だったか、
覚えていない懐かしい記憶
記憶の中の“私“は楽しそうに笑う
目の前には何処かシェインと似ている大人の男性
私は幸せそうに笑う、男性も笑う
とても幸せ、こんな幸せがずっと続けばいいのにと
私も男性も笑い合う
わかってるから、この幸せが続かない物だって、
だから、今を必死に謳歌するのだ
金色の綺麗な髪の女性が手を、両手を真っ赤に染めながらナイフを振り落とす、ナイフを振り落とす
何度も、何度も、
振り落とす、
ナイフを振り落とされた肉塊はズタズタだ、
これでは助からないだろう、
あぁ……可愛そう、
なんて可愛そうな○○○○○
でも貴方が悪いんだよ、
産まれて来なければ良かったのに
貴方なんて
産まれて来なければ良かったのに!!
「オネェちゃんなんか産まれて来なければ良かったんだぁぁぁ!!!」
死が迫る
目前にいっぱいの死が迫る
その一瞬……刹那、
黒い、とても黒い、禍々しい黒い力がモルタの肥大化した左腕を吹き飛ばしモルタを弾き飛ばした
モルタは後方の岩に叩きつけられ、その反動で体中から血が吹き出す
朦朧とした意識のなかで最後にフィーファが見たのは全身を黒で包み込んだ真っ黒な仮面の騎士だった
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