62話 モルス・ケルタ
人混みを掻き分けて“ソレ“の後を追う
見逃さない様に必死に“ソレ“を目で追って走る
走る走るただ走る
“ソレ“は徐々に人のいない場所へと向かう、
気づけば町外れの渓谷にまで来ていた、
この近くには大きな滝があり、風も強く所々に点在している風車を回すにはうってつけの環境が整っている、
渓谷の見晴らしはとても素晴らしくこんな時でもなければシェインとゆっくり見て回りたいと言う気分にさせてくれる、
でも今はとてもそんな気分にはなれない
見てしまったから、“ソレ“の存在を、
自分にそっくりな存在、
髪はくすんだ銀色で肌は驚く程に白い、
生気を感じさせない雰囲気
ぱっと見の印象はフィーファとは似ても似つかない、
しかしよく見れば、見れば見るほど彼女はフィーファと瓜二つだった、
顔の輪郭、目の形、鼻の高さ、眉毛や眉間、何を見ても、何処をとっても、彼女はフィーファそのものだった、
「何処にいったの?」
辺を見回しても彼女の姿は確認出来ない、
見逃さない様に片時も視線を外さない様に、瞬きだって我慢してひたすらに彼女を追った、
なのに見逃すなんてと後悔しているときだった、
「嬉しいなぁ…、モルタに会いにきてくれたの?オネエちゃん……、」
「!!?」
振り向くと、そこには“ソレ“がいた、
やはり見間違いでは無かった
そっくりだ、もはや似てるなんて段階の話ではない、
瓜二つだ、
こんな事が実際にあり得るのか?
「お…、オネエ…ちゃん…?」
「うん、オネエちゃんでしょ?モルタ、ずっと会いたかったんだよ、」
「貴方は…モルタって言うんですか?」
「うん!、モルス・ケルタでモルタ!パパが付けてくれたお名前なんだ!えへへ~いいでしょ!」
「パパ?」
「うん!モルタの大大大っ好きなパパ!」
こんな娘の存在は知らない、祖父の隠し子?それともそれとも死んだと思われてるエルミナの子供?ならこの娘は本当に私の姉妹なのか?
パパと言っている、ならこの娘には父親がいる?
ソレはいったい誰だ、
何故今になって私に接触して来たりした?
「でもね、パパはモルタを見てくれない、ずっと別の娘を見てるの…ずっとずっとずっと…」
「別の娘?」
「ずっとずっとずっとずっとずっと!!」
強い憎しみ憎悪、嫉妬、
それら負の感情がモルタからふきでる
彼女の内面を映し出したかの様に強烈なまでに強いオドと共に
思わず立ち竦みジリジリと後退するフィーファ
彼女がこれまで体験してきた経験が警鐘を鳴らす
ここにいてはならないと、
「モルタはパパしかいないのに!パパはモルタを見てくれない!!ずっとずっとずっと別の娘を見てる」
「べ……別の娘って…?」
「そんなの決まってるよ……オネエちゃんの事だよ?
………ネメジスオネエちゃん?」
「ネメ…ジス…?」
「ネメジスオネエちゃんがいなくなればモルタはパパのたった一人の娘になれるの、だからね…オネエちゃん…お願い……モルタのたった一つのお願い……死んで?」
「は?」
モルタと名乗ったフィーファにそっくりな少女は到底意味も理解出来ない暴論をフィーファに投げかけフィーファの死を願う
彼女の死んでと言う発現と同時にフィーファの視界は明滅した、
ドォォンと言う爆発が遠い場所から反響して聞こえてくる、シェインは町の中を必死に走り回ってフィーファを探すが見つからない、汗が頬から滴り落ちる、
走り回った為か、それともさっきから五感を騒がす冷や汗か、
兎にも角にもゆっくりなんてしてられない、
嫌な予感がする、
一刻も早くフィーファを見つけないと取り返しの付かない事になる、
そんな確信じみた直感がシェインにはあった、
そんな時だ、先程の爆発音が響いたのは、
町の住民は皆各々の反応をしている、
何だ何だ!?と色めき立つ者、
キャーと悲鳴を上げるもの、
皆反応はそれぞれだがそれが先程の爆発音がこの町にとってのイレギュラーだと証明している。
この場所からかなり離れている、遠い、町の外からかも知れない、なのにここまで音が響いてくる
「くそ!、勘違いでいてくれよ、」
そう言ってシェインは音が聞こえた方向へと駆け出した
大きなクレータがある、ずっと以前からあるものではない、つい先程出来たものだ、
そのクレータの直ぐ近くにフィーファはボロ布の様に横たわっていた、足からは夥しい量の血が吹き出ている、骨も折れているかも知れない、
痛みが一周りして今は何も感じない、
ただ間違いないのは足の感覚がない事だ、
感覚がないため足を動かす事さえままならない、
つまりそこから動く事、逃げる事さえ出来ない、
「ハァハァハアッっ、ハァハァ……」
そんなフィーファを楽しそうに見下ろすのはモルタと名乗ったフィーファそっくりな少女だ、
彼女はその整った顔にありったけの笑顔を貼り付けて言った、
「あー、いけないんだ!モルタが死んでってお願いしたのに死んでないなんて駄目なんだよ!」
「ふざけないで!どうして貴方はこんな事するの!」
「言ったでしょ?オネエちゃんがいるとモルタはパパに愛してもらえない、モルタはパパに愛してほしいの!」
「私に父親なんていない、それに私はフィーファです!フィーファ・レスティーナ、ネメジスなんて名前じゃない!」
「違うよぉー、オネエちゃんはネメジスオネエちゃん、モルタのオネエちゃんだよ、だから死んでよ〜」
モルタは自身の手にオドを集約させそれを瞬時に魔力塊に変えてフィーファに投げ放つ、
とっさに魔力の壁をはりそれに備えるが壁は容易く砕かれフィーファは爆風に投げ飛ばされる、
(えへへ、自信無くしちゃうな……)
とっさに作った物とはいえフィーファが貼った魔力の壁はそこいらの術者の魔法攻撃など容易く無力化出来る硬度の防御力をもつ、
とっさに放ったという条件ならモルタの放った魔法球も同様だ
なのに結果はモルタの魔法に容易く粉砕され自分はこうして自分の血と泥に塗れて地にはいずくばっている、
フィーファは魔法使いとして幼い頃から鍛錬を繰り返してきた、、城の中ではそれくらいしかする事が無かったが楽しいから続けられたフィーファにとっての唯一の趣味といてもいい物だ、
それがこんなに通用しないなんてあんまりだろう、
あの黒髪の美女に続いて眼の前の自分そっくりな勘違い女、
連敗を晒して自信も傷つく
「駄目だよ〜ちゃんと死んでくれないと、モルタのお願い聞いてくれないと駄目だよ〜!!」
「ふざけないで、死ねって言われてはいと自分の命を捧げる人なんていませんよ!」
「どうしてオネエちゃんはモルタの言う事聞いてくれないの?オネエちゃんは沢山持ってるのに、モルタには何もない!モルタにも分けてくれてもいいじゃない、オネエちゃんなんか嫌い嫌い大嫌い!!」
「はぁ?」
理性的な話し合いが全く成立しない、これではまるで赤子を相手にしているようだ、
しかし厄介だ、このモルタなる少女、フィーファと同等、いや、明らかにそれ以上のオド保有量だ、魔法の打ち合いともなれば確実に負けるのは勿論だが今のフィーファは足を負傷し、満足に動き回る事すら出来ない、
それでもこんなところでやられてやる道理なんてない、
「勝手な事ばかり言わないで下さい…、
貴方の父親の事なんて私は知らないし、
会ったこともない……、
他人に間違われてるだけで不愉快なのに意味不明な八つ当たりで殺されてあげる程…、
私の命は安くなんてありませんよ!!」
「ふーん、じゃもういーよ!死ね!!」
再びモルタの手から魔力球が投げ放たれる、
フィーファは咄嗟に手をかざすも間に合わない、
自分が魔力障壁を展開するよりも早くモルタの魔力球はフィーファに到来する、そもそもフィーファの魔力障壁が間に合ってもコレを防ぐ事は出来ない、
密度が、魔力の密度が違いすぎる、
死が眼前に迫る死がフィーファに襲いかかる
しかしフィーファは臆さない、死にたくないし死ねない理由だってある、
そもそもフィーファはまだ目的の何一つも完遂してはいない、何も出来て無いのだ、
レイラもレコも助けてないし、祖父から託された国の未来だって担って行かないといけない、
やる事が多すぎる、
だからこんな所で死んでなんていられない、
それに、
それに、私には頼りになる私だけの騎士がいる!
だから…
私は生きる、みっともなく生にしがみつく
そんな時だ、予定調和の様にモルタによって放たれた魔力球は二つに分断されちょうどフィーファを避けるように飛んでいって後方で爆発した、
魔法を斬る、こんな芸当が可能な人間はフィーファの知る限り二人しかいない、
「もう…、遅いですよ……、」
「お前が勝手にウロウロどっか行くのが悪いんだろ!お陰様でいろんな所を走り回る羽目になった」
「もう…、憎まれ口ばっかり…、でも…ありがと、シェイン」
「おう、」
再開を果たした二人だがソレを喜んでいる暇はない、
フィーファは足から多量の血を流していて見るからに痛々しい、彼女をこんなにした敵に対して強い怒りを覚えるが同時に自分の不甲斐なさも感じていた
そして何より敵の存在がシェインとって奇抜過ぎた
「何だ…、コイツ…、フィーファにそっくりだ、」
「気を付けて下さい、とても強いですよ、私にそっくりなだけあります、」
「見た目に反して元気そうじゃん、足は大丈夫なのか?」
「問題ないですって言いたい所ですが、回復に時間がかかります、だから…」
「りょーかいだ、時間稼ぎは任せろ」
シェインはフィーファとは髪と目の色以外は瓜二つな外見を持つ少女と対峙する
「な~に、おにいちゃんがモルタと遊んでくれるの?」
「あぁ、遊んでやるよ、」
「ホント!へへ〜楽しみ」
モルタと名乗った少女、彼女は愉快に笑う、
本当に…、楽しそうに、
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