60話 アングリッタ道中
アングリッタの刺客たる賊集団になりすましてアングリッタ領土に潜入する事にしたアルフィダ一行は賊集団から押収した馬車に乗りアングリッタ国に向けて馬車を走らせていた
御者席にはアルフィダとレイラが
中にはレコに対面するようにアランとディオールが座っていた、
「あの…」
「うん?なんですか?」
「あの二人を一緒にさせてよかったんですか?」
「ん、それはどういう意味ですか?」
「え?、あ…いえ……」
レコがアルフィダと話をしたのはあれが始めてだ、
明るく快活な印象を受けるが何処か暗い印象も同時にうける、
そんなアルフィダとレイラは古馴染みらしく面識があるのは先程のやり取りからもわかる
だからこそ不安になった、
一緒にさせて大丈夫なのかと、
「アイツは不器用なだけで根は良い奴なんよ、だからそんな怖がんないでやってくれよ、」
「いえ、私は別に、」
遠慮がちに話すレコに対してディオールは酒臭い息を吐きながら口を開く
「それによぉ〜お嬢ちゃんの事を結局は利用する形になっちまったのは否定しないが、見殺しにするつもりはなかったんよ、そこは理解してやってくれ、」
「結果的には助けて頂いたんです、感謝はしています、貴方がたがいなければ私は連中に連れ去られていたでしょうし、そこは理解しています。」
「なら良しだ、極力は守ってやるから安心しな、」
そういってディオールはレコの肩をポンと叩く
その動作でレコはあることに気づいた
別に肩を酒臭いおっさんに触られてセクハラじゃね?コレ?とか言うつもりはない、
たんにディオールの左腕に意識を持っていかれたのがその理由だ、
「あぁ、コレか、自分でこしらえたんだよ、良く出来てんだろ?」
「それって…、」
「所謂義手ってヤツだな、凄いんだぜこれ?体内のオドを義手にながす事で本当の腕みたいに動かせるんだよ、どお?スゲーだごふぉ!!?」
「完全に引いてるでしょ?少しは自重なさい、酔っぱらい」
「怪力で殴るな!首がモゲルだろ!?」
「なら頭も作れば万事解決ですね、今より改善するんじゃないですか?」
「んだとーこの怪力馬鹿力女め!」
「やりますか酔っぱらい」
「あ…。あの……、」
二人の空気感に置いてけぼりのレコ
しかしレコはアランに感謝していた、
義手、あれが本物なら彼の本当の腕は……
二人は戦う事が仕事だ、ならそういう事にもなり得る可能性は十分にある、
配慮の欠けた発現、行動をあの場で取っていたって不思議じゃない
アランがレコに気を使ってくれたのは明らかだった、
まぁ、それはそれとして
(気まずいなぁ…)
馴染みのあるアランとディオールに挟まれているような気分がしてアウェー感が半端ない、
ただでさえ行先に不安しかないのに胃の痛い思いを強いられている事には溜息すらでない、
それでも今までに比べればマシだろうか、
レスティーナ王によって次々と処分されていく仲間達
”勇者“への恋慕の気持ちを失い狂う同僚達、アレはまさに地獄だった、
マグラーナ王の無能を通り越して無謀とすら言えるレスティーナ乗っ取り作戦、勇者の奇行
あれら全てがアングリッタ国の策謀なら恨み言の一つも言いたいが正直もう関わりたくないが本音だ、
自分はただ運が良かっただけだ、
運命だとか選ばれたなんてだいそれた事を考えた事はない、
たまたま生き残ったから、フィーファ様のお付に選ばれただけ、
しかしそのたまたまの積み重ねがなければ彼女に心酔するようにはならなかった
アランとディオールの言い合いを横目に馬車の中から見える景色をみながらどうにでもなれと投げやりな気持ちになるレコだった
そんな馬車の御者席にはアルフィダとレイラが座っている、レコの懸念とは裏腹に二人は世間話に花を咲かせていた
「随分と賑やかですね、昔を思い出しますよ」
「そうだな、あの頃は四人でよくつるんでた、良い思い出だ、」
「またこの四人で行動する事になるとは思いませんでしたよ、」
「それは俺もだよ、ディオール達に声かけた時はお前を巻き込むつもりは無かったからな、」
「一つ言わせてもらうと私はシェインではない、」
「何言ってんだ、当たり前だろ?」
「なら私を特別扱いするのは辞めて下さい、レコと私、どちらもフィーファ様に害意をもった外道です、同様に扱って下さい、」
「そんなつもりは……、いや、そうだな、俺は無自覚にあの女とお前に差をつけてた、それは謝ろう、だが一つ言わせてもらいたい、俺はお前とシェインを重ねている訳じゃない、」
「そうですか…まぁ正直何だっていいですよ、私は貴方に守られる程弱いつもりはない、自分の身くらい自分で守れます」
「俺から言わせればお前も、あの姫様も変わりない、非力で無力な存在だ、」
「私は……、」
「別にお前の歩んできた道を否定するつもりはない、でも己の弱さを認めるのもある意味強さの証明になる、勇気のいる事だと思うぞ?」
「……、やはり貴方は大人ですね、自分がちっぽけな存在に思えて嫌になります、」
「そんな事ないさ、俺も青臭いガキだ、それに今の考えはお前から教わった物だ、俺1人じゃそんな風に考えたりしなかった、」
「私が?」
「お前は自分の事を意固地で頭の固い人間だと思ってるかもしれないが、誰より柔軟に動く事の出来る適用力の高さを持ってもいる、お前の強さはソコだと思ってる、」
「買い被りですよ、そんなの、」
「お前は姫様に仕出かした過ちを清算し、前を向いて歩き出せる強さがある、俺は…、俺にはそんな強さは無い、ずっと…ずっと…な、」
「貴方は十分悔いている、人の命を奪った罪は確かに重い、清算出来る物では無いのかもしれない、それでもシェインはきっと貴方の事を許しますよ、シェインと腹を割って話し合えばいい、怖いなら付き合いますよ?」
「ははは…、参ったな、こりゃ…、」
どこかレイラに同族意識のような物をもっていたアルフィダだが彼女の方がずっと先を行っている
少し寂しさの様な物を感じながらもそれはアルフィダにとっての希望の様にも見えた
5人を乗せた馬車はまだ遥かに遠いアングリッタ国領土を目指して先へと向かう




