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ユーディキウムサーガ 父親に捨てられた少年は好きになった少女のために最強の剣士を目指す  作者: ムラタカ


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48話  フィーファ対神(仮定)




「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」



何もない所から突然現れた黒髪の美女、神(仮定)は大声を上げ咆哮の様な悲鳴を上げる


彼女の感情の高ぶりは体から大量のオドを溢れ出させ空間そのモノを激しく揺らしているかの様な錯覚を覚させる、それほどまでに彼女が規格外な存在と言えた



「ああああああああぁああああぁぁぁぁアァァァアァ

あァァあ…、ネメジ…ス…ネメ…ジス、ああぁぁああぁ」



ぶつぶつと訳の分からない独り言を呟きながら彼女はゆらりゆらりと歩み、時折転けそうになりながらもフィーファに強い増悪の視線を向け歩みよって来る


その歩みはホントに危なっかしく、歩き方を覚えたばかりの赤子の様に頼りない、本来なら助けに歩み寄りたい所だが相手の視線の強さがそれを拒ませる


何より強い敵意と増悪が彼女のオドに乗ってやって来るのでフィーファの判断能力を著しく低下させていた



「逃げますよ!フィーファ様!」


「え?」


「何をボサッとしているのです、逃げるんですよ!」



レコはフィーファの手を取り出入り口に目掛けて走り出そうとする、しかし直後光の壁が二人の前に発生したかと思うと次の瞬間大爆発が起こる


出入り口のあった方角が崩れさり、焼けて消し飛んでる、周囲の建築物もまとめて消し飛んで消滅していた、



「何なんだ…あの化け物はっ!?」



先程の光の壁は壁ではない、もちろん結界などでもない、

ただの魔力塊、簡易的なマナの出力、

彼女、神(仮定)は片手を前にかざしそこからマナを魔力塊として発射しただけ

魔法使いが自身のマナを攻撃に転用した極初期の技術、しかしあんな壁と形容しなければならない程の質量と威力を生み出すには相当の力を出力しなければならない、


それを彼女はほとんどノーモーションで行った


祖父の無詠唱魔術など比べるべくもない

そんなものとは遥かに異なる次元にある存在だ



「ははは…祖父が心酔するわけだ…凄いですね、神様は……」


「何を悠長な事を言ってるんです!?殺されますよ!!」


女の増悪塗れの視線は変わらずフィーファを捕らえている、手をかざしてゆらゆら揺れている

それはわざとやっているわけではなく彼女自身色々と覚束ない部分があるのだろう、

しかしフィーファ達がそんな事を考慮してやれる余裕などない、あるはずがない


先程の攻撃が行く手を阻むための牽制等ではなくただ外しただけならさっきの攻撃で二人とも灰になっていたのだ、神(仮定)に躊躇などない、あの増悪に塗れた目は間違いなくフィーファに対しての殺意だ



(どうして私に対してあんな殺意を向けて来るの?

ネメジスって何?)



フィーファに考える間など与えないと言わんばかりに

神(仮定)は再度魔力を充填し始める


きっと次の瞬間には放っている、そう確信出来る

だからこそフィーファの取るべき行動は単純だった



「レコ!逃げて!」


「はぁ?」


「聞こえなかったの?逃げて!」


「何を馬鹿な事を!貴方が逃げて下さいよ!」


「うるさい!言う事を聞いて!貴方が居たら足手まといなんです!私に死んで欲しくないなら逃げて助けでも呼んで来て!」


「でも!」


「早く!!」


「くっ!死なないでくださいよ!」


そう言ってレコは駆け出す

思った通りだ

神(仮定)はレコに全く関心を持っていない

何故か私に興味津々のようだ


かんぱつ入れず神(仮定)は魔力砲を放って来る

桁外れの威力だ、かすりでもしたらそれだけで致命的

絶対に当たるわけにはいかない

絶対に死ぬわけにはいかない



「私はまだ何も成してない!マグラーナの再建も!

祖父を見返す事も、シェインに再開する事も!だから!」



神(仮定)は当たらない事に痺れをきらしたのか当てずっぽうに魔力砲の乱射を始める

それはさながら雨の様だ

光の雨が天から降ってくる

当たれば死ぬ

死ぬ、一撃でも当たれば死ぬ

かすっても死ぬ

とにかく死ぬ

死んでしまう


でも



「死んでやるものかーーー!!!!」




魔力を開放したフィーファの体から魔法陣が発生しそこから光の粒子が飛び出て人の形を作り出す



「出て来て!ペクシスクティノス!!!」



氷が人の形を作りそれが弾け飛ぶと中から冷気を帯びた心象精霊が生まれる

フィーファのもっとも得意とする自身の内面を魔力で形どった疑似精霊


周囲が冷気で青く染まり凍りついた絶対零度の世界を形作る

その青い世界から光の粒子を集約させ一気に解き放つ



「氷の刃よ、凍てつく衝撃となりて我が障害を滅せよ!氷の衝撃(クリュスタスゾーク)!!」



氷の衝撃が神(仮定)とする黒髪の女に向かって飛翔する

しかし女はそれを煩わしそうに片手でまるで小虫でもはらうかの様に相殺する

まるでフィーファの魔法など物ともしない

子供のお遊びだとでも言わんばかりに

それでもフィーファは諦めない、諦めるわけにはいかない



「凍てつく水の煌めきよ霧となりて視界を滅せよ!

潤い凍る霧(グラシアバゴーノ)!!」



黒髪の女の周囲がフィーファの呪文によって濃い霧に覆われる、絶対零度の霧、人がこの中に入ればたちまちの内に体が氷つくだろう


しかしフィーファは神と仮定する黒髪の女がこの程度で動きを止めてくれるだなんて思ってはいない

実際目眩ましなど物ともせず柱の様に太い光線が濃い霧を突き破って今も放たれ続けている

時間が経てば霧も光線の勢いに吹き飛ばされるだろうか


だからこの絶対零度の霧はあくまでも目眩まし

本命となる心象精霊による本気の攻撃




「放って!ペクシスクティノス!!!!」



フィーファの心象精霊が手をかざし霧の凍度が急激に

そして劇的に下がる

魔力で作られた溶けない氷は空気を凍てつかせ

周囲の空間ごと絶対に溶けない氷によって閉じ込められる、神仮定とする黒髪の美女はフィーファの手によって氷漬けの美女へと変わり果てた


「やった!これで貴方はそこからもう出くる事は出来ない、可哀想ですけど、貴方の力を抑えるにはこれしか方法はなか……っ!!」



氷漬けにした黒髪の美女を起点にヒビが入る


ビキビキ…パリバリっ…、と


氷の壁と形容して差し支えない巨大な氷の塊は次第に全体がヒビで覆われ崩れていく


手を抜いた訳では無い

フィーファは全力で彼女を氷の中に閉じ込めた


情けが通じる相手では無いと割り切っていたから


でもそんなモノ必要無かった



黒髪の美女、神と仮定された存在はただ怒りに支配された顔でフィーファを睨み付けるだけだ





     





     「ネメジス……コロス」



















レコは走っていた、宛なんてない、ただ闇雲に我武者羅に、走っていた、


旧結婚式場跡地でみたアレをレコは神さまなんて風には受け取れなかった 

あれは化け物だ、

人の形をした何かとてつもないモノ

人によって価値観は千差万別で色々と異なる

ガノッサを始めとする騎士達や国王はあの黒髪の美女を神と仮定した。

しかしレコにとって圧倒される程に行き過ぎた美貌と常識外の魔力はアレを化け物と定義付けるに十分だった


レコはフィーファが嫌いだった

何不自由無く育ち国王からなんでも与えて貰える恵まれた環境、にも関わらずワガママを言う態度に腹がたって仕方なかった


勇者に洗脳されレスティーナにスパイとして送り込まれた数いるスパイ人員の一人だったが個人的な逆恨みから意欲的にフィーファに対する嫌がらせをしていた

毒もりやシャンデリアを落としたのもレコだ、

青ざめた表情や半泣きの表情を見て気分がスカっとしたから止められなかった


どれだけイタズラが過激になっても王は決してフィーファを助けはしなかったし、フィーファが城から逃げ出してしまえばそこからはレイラの仕事


彼女にはマグラーナで人形として飼いならされマグラーナの資源としてレスティーナから金や物資を絞り取る餌として死ぬまで利用される未来が待っている筈だった


なのに彼女は帰って来た、五体満足で、

逆にフィーファの近衛騎士がいらない浅知恵を引っ提げて帰って来たせいで私は、私達の立場は急に怪しいものへとなった。


それから数日後王は急に私達の処分を下していった、

スパイの容疑があるものは立場や位等関係なく王の独断と偏見によって処され日をまたぐ度に仲間は少なくなっていった


私は怖かった

次は自分かも知れない

次の日殺されるかも知れない


怖くて怖くて眠れない日が続いた

あの時は勇者のことを思えば怖さも幾分か薄らいだが突然勇者の事がどうでも良くなった

まだ生き残っていた数人の同僚は気が狂ったように取り乱したりしてそう言った者達は王命令で迅速に処された


私は勇者の事が突然どうでも良くなった程度だったので他の同僚みたいに泣き叫んだり喚いたりはしなかったから難を逃れられたのかもしれない


それからだ、フィーファ様が城に帰ってきたのは、気難しそうな顔をしていて、出ていく前とで何かが変わったような気がしたがそれは私にはわからなかった、

そして王は彼女の専属メイドとして働く事を私に命じた


フィーファ様の専属メイドをやっていれば殺される事はないそう考えて軽い気持ちで了承したがもし使命を途中で投げ出せばお前も他のお前の同僚達同様処分する

逃げ出そう等夢々思わぬ事だと言われたのは今でも忘れられない、


繰り返すが私はフィーファ様が嫌いだ、

だがいつかのように殺されてしまえばいいと思う程嫌いではなくなっていた、絆されたのか、たんに一緒にいすぎたのか、

彼女と王が話してる所を何度か見たがあれは家族の会話では決してなかった

私に親はいない、幼い頃に死別した、

でも貧しいなりに温かい家族だった

決してあんなのでは無かった、


もしかしたら彼女に同情していたのかもしれない、

それでも公私混同はしないようにしていた、

王から手紙をフィーファ様に渡す様に言われ彼女をあの場所に誘った



王が良からぬ事を考えている事には予想出来た、

でもアレは…

もし王がアレを予測していたのなら…

王はフィーファ様の死を望んでる事になる

それはあんまりだ、


彼女は私を助けた

彼女だってわかってる筈だ

私が今まで彼女に何をしてきたか

見捨てたって良かった筈だった

囮にして逃げ出しても良かった筈だ


でも彼女は私を逃してくれた

自分を囮にして


私が助けを読んで戻るなんて保証はない、そんな確証は何処にもない


もう分からなかった

自分が何をしたいのか



旧結婚式会場跡地から程なくして城下街に辿り着き道行く人々に話かけた、老若男女構わず助けを求めた



「お願いします!助けてほしいんです!この国の姫様がフィーファ様が殺されるかも知れないんです!誰か誰か!彼女を助けて!!お願いします!お願いします!」



この国には名だたる魔法使い、魔術師が大勢いる魔法大国だ、少しでも多くの戦力を積もればあの化け物にだって対抗出来る筈だ、

なのに誰も信じてはくれない、

耳を貸してはくれない


「こんな所にフィーファ様がいるわけないだろ!」


「姫様の名前をつかって戯言とは恥を知りなさい俗物」


「何あのメイド…恐れ多い…」



全く相手にされない、嘘だと決めつけられる

無理もない、フィーファ様の一般的なイメージは引きこもりで有名だ、これまでありとあらゆるパーティや社交界に彼女が御姿を表した事はない、

その彼女がこんな所にいる訳は無いのだ

それでも声かけを辞めるわけにはいかない

彼女の命がかかっているのだから



「嘘では無いんです!本当に!本当に!フィーファ様なのです、彼女が!フィーファ様が殺されてしまうんです、どうか誰でもいいんです、どうか、どうか、お力をお力を貸して下さい!お願いします!お願いします!」



もう駄目かと思った時だった



「あんた今フィーファって言ったか?」


そう声をかけられた


顔を上げるとそこにいたのは私よりもずっと幼い少年だった

ボサボサのツンツン頭と頬にペケキズのやんちゃそうな子供、でも吸い込まれそうな綺麗な青い瞳が特徴的な子供だった


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