38話 婚姻式会場跡地
「待てよ、今何て言った?」
ラミュアの言葉はシェインにとって到底無視出来る内容では無かった、
物心つく以前の話、薄ぼんやりと記憶の中にある父の記憶、しかし思い出と言っていいものは皆無、
父親に対する憧憬や憧れ等あるはずもない、
あるのは憎しみに近い感情だけだ
さりとて憎んでいるのかと問われれば別にそんな事はない、物心つく頃には既にいない存在に憎しみにしろ好意にしろ感情的になるのは難しい、
ただ、母親が苦労してきたのは嫌でも知ってる
若い女が一人で子供を育てるのは並大抵の努力で為せる事ではない、
母親が涙を目元にためている所も何度か見ている
シェインが感情的になるとしたらその一点に尽きるだろう、だからシェインは父親に会いたいと思っている、
感動の再開を分かち合う為では勿論ない、
ぶん殴るためだ
「ふふん、興味を引かれた様だね?
知りたいなら僕に同道しておくれよ?」
「まてよ、何故お前が親父の事を知ってる!ってより何故俺の事を知ってるんだ!おかしいだろ、そんなの!」
「君の疑問は御尤もだ、実際僕が君の父君と推測を立てている人物もあくまでも推測の域を出ない、それを確かめる意味でも君の意見が聞きたいんだよ」
「待ってくだされラミュア女王陛下、同道と仰っしゃりましたがいったい何処に行かれるおつもりで?」
「今から約19年前に婚姻式が執り行われそれ以来何人をも立ち入る事が禁止された封印された場所さ」
「なっ!?あそこに行かれるのか!?」
「?、ガノッサのおっさん、なんか知ってるのか?」
「え?あぁ、いや…、」
「ガノッサ殿、貴方は何か私達に隠し事をしているんですか?」
レイラの問いかけにガノッサは一瞬の迷いを見せるもポツポツの話だした、
「国王からはあの日の事を他言無用にするようにと厳命されているのだが…」
「何が厳命だよ、馬鹿らしい、自分を殺そうとした奴の言う事なんて守る必要ないだろ?」
「まぁ、立ち話は非効率的だ、目的の場所に向かいながら話そうじゃないか、道案内頼んだよ、近衛騎士団長さん?」
「……、はい、」
こうして一行はガノッサ先導の元、例の婚姻式が行われたという封印された会場跡地へと向かう
ガノッサの口ぶりではその婚姻式会場で後に会場が閉鎖され取り壊される事なく封印という手段が取られる程の何かが起こった場所だという、
当時のガノッサは一兵卒で近衛の任を任される程のキャリアはなかったという、
彼が近衛に選抜されたのはその後の奮闘による所が大きいのだろうが今となってはフィーファの世話係として利用されていた節が強いとガノッサは語る
つまるところ誰でも良かったのだろう、
彼女を教育し、守れる力を持った者ならという条件はつくが、
目的の場所は城下町から離れた寂れた場所にあった
人影はなくここが立ち入り禁止区域である事を改めて痛感させられる
周囲には民家等はなくスラム街に佇み廃墟という表現がもっともしっくりくる、
夜中になれば化け物の一匹二匹平気で徘徊してそうなそんな場所だった
こんな所に好き好んで足を向けるのはモノ好きか暇な変人のどちかかだろう、
「なんと言いますか、こんな所で昔は結婚式を上げていたなどと信じられないですね」
「ここが城下町と離れた立地に建てられたのはこの会場が王族専用の施設だったからなのだが立ち入り禁止にされてからは有ること無い事様々な噂を生み出す曰くの場所となっている、かくいう私もここに訪れたのは19年ぶりだ、」
「なる程ね〜、じゃ、入ろうか、」
式場内は外観の印象とそう変わる物ではなく惨憺たる様相だった、
加えて人の手が長年加えられていないせいか雑草が辺り一面に生え茂っていた
しかしよく見ると、所々にクレーターの様なモノが出来てをり魔法による戦闘が行われた事が伺い知れる
「なんも無いじゃん、ラミュアはこんな所に俺等を連れて来て何がしたいんだよ?」
シェインの問いかけを聞こえていないのかそれとも無視しているのかラミュアはそっちのけで一面にくまなく視線を向けていた
しかし何かに得心がいったのか小さな声でへぇ~と漏らすとようやくシェイン達の方に顔を向けた
「さて、僕が君達にこんな所に来てもらったのは一緒に肝試しがしたいからじゃ勿論ないよ」
「そんなフザけた理由だったら張っ倒してやる、」
「先ずは騎士団長殿?先程の話の続きをお願いしてもいいかな?」
「王が口止めしていた話ですかな?」
「あぁ、頼むよ」
「はぁ…仕方ありますまい、」
私もコレでレスティーナにいられなくなりますな、
と悪態を付きガノッサはその日、2人の新郎新婦の婚姻式の話を始めた
「当たり前の話ですがフィーファ様には母親がいます、その方こそ、前レスティーナの王女エルミナ様でした、エルミナ様は自身の立ち場に胡座をかく事もなく、努力家で様々な分野に精通した天才でした。
また他者を見下す事もなくあらゆる者にたいして公平に接する方だった、人格者というのは彼女のような人種にこそ相応しいのだなと思わせる人物でした、」
「フィーファの…母親か…」
「無論そのような方でしたからな、色んな方々に好かれていましたが特に男性に言い寄られる事が多かった、お美しい方でしたからな、社交界等では引っ張りだこだった、そんなエルミナ様が唯一心を許したのがバーミントと言う名前の男だった」
「バーミント……、」
俺がその男の名前を口にした時ラミュアがコチラを盗み見ていた事に気づき俺はラミュアの方に視線をむける
すると彼女は
「聞き覚えはないかい?」
と問いかけてきた、
話の流れからバーミントと言う男に関して聞いているのは明らかだろうから俺はいや、とだけ答えた
「2人は直ぐ様恋人となった、バーミントと共にいる時のエルミナ様はとても幸せそうでしたが直ぐ様2人の間は引き裂かれる事となる、国王陛下の手によって」
「またあのジジイかよ、」
「バーミントはレスティーナの下級貴族の出だ、
身分の違いは如何ともし難い、元々2人の交際をよく思わない者達は多かった、言って効かないエルミナ様に対して王は政略結婚を申し出た、」
「そんなの突っぱねればいいじゃんかよ!」
「そんな訳にはいかない、政略結婚は列国同士で執り行われた、もし破れば……、そんな事は言葉にすらしたくない程の損害がでる、」
「ではエルミナ様はその結婚を、」
「そう、エルミナと政略結婚の相手として選ばれたアングリッタのペテン王子、その2人の最初の門出として選ばれたのがこの場所と言うわけさ!」
ガノッサの説明の最後をラミュアはいささかオーバーリアクション気味に引き継いだ
「そしてその結婚式当日何かが起きた、レスティーナ王が緘口令を発令する程の何かがね、団長殿はその時何があったのか知ってるんだろ?是非教えて欲しい」
「その前に是非一つ教えて頂きたい、貴方はそれを知って何をなすおつもりか?」
「別に何もしないよ、僕はただ教えて欲しいだけさ、
その日その場所に何がいたのかをね」
「………、」
ラミュアは何が居たのかと言った
つまりそこに何かが居たのだ、
そしてラミュアはそれを知ってる?
「神…、我々にはアレを神と定義する以外正しい言葉が思いつかない、」
「神…?」
「シェインやレイラも知っているだろう?王は魔法使いとしては人知を超越した高見に居られる方だ、そしてその場所には婚姻式を荒らす族等への対策として一個師団もの戦力が警護についていた、あの式を荒らすには列国に戦争を仕掛ける覚悟が必要だった、それがそんな大戦力がたった一人の女性を前に壊滅したのだ、」
「壊滅?一人相手に?」
「あぁ、壊滅だ、あんな事を可能にするには神でも持ってこないと不可能だ、だから我々はあの女性を神と称している」
あり得ない、一個師団とか言うのがどのくらい凄いのかはピンと来ないがそれでもあの王様が誰かに負けるビジョンなんて正直想像もつかない、
「しかも何が恐ろしいかと言えばこの事件、“死人が出ていないのだ”
我々は当然相手を殺すつもりで戦った、しかし奴は誰の命も奪ってはいない、その上で我々を圧倒した、それがどれほど異常か、皆口を揃えて奴を神と言って恐れたよ、
だから王が緘口令をしかなくとも誰もあの日の事を話そうとする者はいないだろうな、」
「一つ聞いてもいいかな?」
「え?はい…、」
「君の言う神はどんな見た目だった?」
「見た目ですか?そうですね、見た目は美しい黒髪の女性でした、見た事のない長い服をきてましたな、優美というのが当てはまるような女性でした」
「黒髪の美女か、ありがとう、参考になったよ、」
ラミュアは顎に指をやり思案しながら形だけの礼をガノッサに返す、
未だにはっきりしないのはラミュアがなんの目的があって俺達を巻き込んだのかだ、
ガノッサの話も知っていたようだし、わざわざガノッサから聞き出したのは何故だ、
「結局なんの目的があって私達を巻き込んだのですか?」
シェインの疑問をレイラが代弁するようにラミュアへと問いかける
「うん、騎士団長殿に聞いたのは僕が手に入れた情報が正しいかの確認だね、それに黒髪の美女の情報は有益だったよ、それにここに来た会があった、予想外の掘り出し物があったからね!」
「予想外の掘り出し物?」
「それはまだないしょだよ、」
口元に人差し指をやり、ないしょである事をジェスチャーで示す、あざとい仕草だが整った美貌を持った彼女がやると様になっていた
「はあ…どうでもいいけど俺の親父は何処に絡んでるんだよ、おっさんの話にまるで絡んでないんだけど?」
「おやおや、凄く絡んでいたじゃないか?他の皆はもう気づいてるんじゃないかな?マグラーナの、誰だかわかるかな?」
突然話を振られたレイラがえ?と驚いている、
レイラは渋々ながら答えてみた
「バーミントでしたか?エルミナ様が思いを寄せていたと言う男性は?彼にやたらと固執した話され方をしてたのでメタ的に見れば彼が何かしらの役割を担っていたと推測はしますが」
「うん、僕はとっても満足だよ、マグラーナの!そう僕の推測ではシェイン!君の父君は恐らくはその彼、バーミント氏だと思うよ」
「デタラメ言うな!適当言いやがって!話のノリでそう決めつけてるだけだろ!」
「僕は嘘やデタラメが嫌いでな、根拠なしにこんな事は言わないよ、」
「証拠があるってのかよ?」
「君の持つそのやたらと豪華な剣たまよ、」
「え?」
シェインは肩にかけ今は鞘におさめている自身の剣を見る、これは母親にもらったモノだ、
しかし母親はこの剣の持ち主を消えた父親から貰ったと言っていた
「その剣の元々の所有者はバーミント·ティクスロートなる人物だ、この会場から彼が消失したさい一緒にその剣も失われている」
「はぁ!?待て待て突っ込みが追いつかない!なんでただの下級貴族が王族同士の結婚式に参加してんだよ、おかしいだろ!」
シェインの問いかけるに答えたの意外にもガノッサだった
「別におかしな事ではないのだ、シェインよ、何故ならバーミントは当時の近衛騎士団に所属し、エルミナ様から王族直属近衛騎士としてエルミナ様直々にその直属近衛騎士にのみ与えられる4つしかない宝剣、“歓喜の剣”を譲渡しておられるのだから……」
「は?歓喜……はぁ!?」
「最初は僕も君にそこまで注目してなかったさ、しかし君は中々面白い芸の持ち主だ、剣で魔法を斬るなんて芸当、なかなか出来るもんじゃない」
「それははアンティウス流の極意なんだ、でもそこまで難しいモノじゃないと思うけど?」
「馬鹿な事を言うな!そんな事を誰も彼も出来れば魔法の有用性が無くなるぞ!」
レイラが自分の髪色と同じくらい顔を真っ赤にして怒鳴ってくる、
実際シェインはこれまで多くの敵が放つ魔法を斬ってきた、自分にとっては何でもない事だと思っていたのがそこまで異常だとは思ってもいなかった
「僕は最初君のあの技術をその剣の恩恵、何かしらの加護と解釈して興味本位で調べたのだけどね、まさか君の持ってるのがレスティーナの王族御用達の宝剣だとしっておどろいたよ、そして何故そんな物を君が持ってるのか、そこから色々調べて言ったら面白い事実が次から次へと飛び出てくるじゃないか!もう僕の心は過去に無いほどの高揚をみせてるよ!!」
「じゃ、俺の親父はフィーファの母親の元彼ってわけかよ……、じゃなんだよ、俺は親父の浮気で出来た子供って事か?」
シェインの中で、父親に対する評価がどんどんと下がっていく、レスティーナの王女の近衛騎士という立場にありながらどうしたらずっと離れた田舎の村娘とそんな関係になる、どう考えても道理がとおらない、
ますます父親に対する増悪が増していく
奴は母さんをエルミナって女の代わりにした、
自身の憤りの捌け口に母さんを利用した。
許せない、そんな感情がシェインの中にくすぶり始めていた
そんな時シェインの肩をポンと叩く音がしてはっとなって振り向くとレイラが難しい顔をしていた
「余り自分を追い込むな、気にするななんて言わないしお前の気持ちがわかるなんて安請け合いする気も無いが自分を攻めても得られる物なんて何もない」
「あ……、あぁ、わるい、大丈夫だ、」
自分がいま成す事、なさないといけないことはハッキリしてる、
フィーファを助ける事、
それを叶えるためにこんな所に来たんだ、だったら
「ラミュア、アンタに頼みたい事があるんだ」
「うん、なんだい?」
「フィーファを助けたい、手伝ってくれ」
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