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ユーディキウムサーガ 父親に捨てられた少年は好きになった少女のために最強の剣士を目指す  作者: ムラタカ


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33話 揺るがない結果と事実

「つくづく度し難い子供だ、自分達が息づく世界が誰のお陰で維持されているかも知らず無用な好奇心と正義感に衝き動かされる貴様は餓鬼そのものよ」


「今はそんな小難しい話をしてんじゃねーんだよ王様さんよ!」


レスティーナ国民が見守るなかでその長たる国王に剣を向ける少年、はたからみればどう見ても国家反逆罪で死刑は免れないだろう、


だがシェインはそんな事知ったこっちゃないと言わんばかりに王に向けてその敵意を剣に乗せる

自分を認めてくれた大人が嬲り殺されそうになっていて何故見過ごさなければならない、


仲間となった友人を塵呼ばわりされ何故我慢しなければならない


守ると誓った少女が存在否定にも似た発言を実の肉親から言われて何故黙っていられる



「アンタ、フィーファのおじいさんなんだろ?だったら何故フィーファを見てやらない、何故そんな風に突き放すんだ!!」


「何を言っている?

ワシは誰よりもフィーファを大事にしている

だからこそフィーファに対する不穏分子を排除しようというのだ、それの何処が突き放す等という解釈に変わる?」


「アンタのやってる事はフィーファの人格を否定する行為だ、そんなの間違ってる、親がやっていい事じゃない!!」


「ふん、話にならんな、子供の癇癪に付き合う程ワシは暇ではないのだ、」


「なっ!?」



国王は詠唱を唱える事なく手のひらに強大な火の玉を生成しソレをシェインに向けて投げ放った、

業火の如き炎はシェインの目前で爆発し、その威力の程をシェインに見せつける、

詠唱する事無くあれほどの魔力を練り上げる事など常人に出来る者などいない、それだけでこの老人が並外れた魔方使いだと言う事の証明となる、



「アレがお祖父様の無詠唱」


「つっ…!!」


その余りの威力にさしずめシェインも慄かざる負えない

相手と自分の力量差は歴然、

黒衣の仮面騎士、イノセントの女王、それらと同等の脅威と認識して立ち向かわなくてはならない、

しかも今は1人、

1人でこの絶対差に立ち向かわないとならないのだ

それでも


「引くわけには行かない…!」


「ほう、引かぬか、俗物なりの信念、見せてみるがいい…」


馬鹿の一つ覚え、

シェインに出来る事など知れている

相手との距離を詰めるために全力疾走するしかないのだ、

相手は魔法使い、

コチラの間合いに持ち込めればなんとにでもなる、

師から託されたアンティウス流剣術でならどんな窮地でも乗り越えられると


「はああぁぁぁぁ!!!」


「ほぉ、ワシの魔法を斬るか!」


無詠唱で放たれた無数の火の玉を剣で斬り捨てるシェインは徐々にしかし確実に王との距離を詰める


しかし


「かかったな…阿呆め、」



シェインの足元が大爆発を起こしシェインは吹き飛ばされる


「魔法が当たらぬならば当てればよい、それだけのこと」


「くそ!」



剣を杖代わりに立ち上がるシェインだが彼の足から血が滴り地面が赤く染まる、先程の攻撃を足裏にモロにくらってしまい立つのもままならない、



「それでは自慢の素早さも意味をなさないな、どうする小僧」


「ぐっ、おおおおおおぉぉぉぉぉ!!」


最初にこの場所にやって来た時の様にシェインは剣を頭上高く掲げ一気に地面に叩きつける、

同じように地面が割れ岩盤が浮き上がり小規模な爆発を起こす、

シェインが持てる力全てをふるい爆風を発生させる、

無論14歳の子供にこんな芸当は元来不可能だ、

物心付いた頃からグラインに憧れて剣を振り続け師と共に自身のアンティウス流を磨き続けた結果14歳の子供が大人顔負けの力を手に入れたのだ



「ふん、目眩ましか、」



発生した爆風はレスティーナ王の目を暗ます壁となり障害たしての役目をこなしている

シェインの気配を探すが左右どちらにもそれらしきものはない


「まさか!?」



目眩ましは副次的な物に過ぎない

シェインは自身の技で発生した爆風の風圧に乗り空高く飛び上がりレスティーナ王の頭上を取る事に成功した



「渾身ざぁぁぁぁぁぁん!!!」



落下のスピードを加えシェインは全力で叩き斬る勢いで王に迫る、しかし


「甘い」



王の体が弾けたと錯覚した

具体的には王は魔力を開放し、その魔力の壁でシェインを弾き飛ばしたのだ

決死の攻撃はしかし王に傷一つつける事を許さずシェインは満身創痍


再度立ち上がるが既に体力は底を付き技を出すどころか歩く事さえままならない

そんなシェインが立っているのは執念か、それとも、



「ほぉ、よくぞ立った、その執念だけは褒めてやろう、褒美に我が全力の魔法でもって焼却してくれよう」


「へへ、ちくしょぉ…」


足の感覚が鈍化していく、もう痛いと感じる事すら無くなっていく、体が重く、動く事もまならない、

明確な敗北、しかしシェインは諦めない、

剣を握り王に突き付ける、

それで何かが変わる事はない、

コレはたんなるシェインなりの意地だ、


「惜しいな、お前とは違った形で出会っていればまた違った未来もあったろう…それではさらば……うん…?」


シェインの剣を視界に捉えた王の動きが止まる

躊躇したわけではない


(あれは……)




そこには彼女がいた、

金の美しい髪をたなびかせる人形のように整った顔立ちの少女

彼女は両の手を広げ傷ついたシェインを守るように祖父の前に立ちはだかった



「なんのつもりだフィーファ?」


「もう止めて下さいお祖父様……」


「いくらお前の頼みでも出来ぬ相談だ、お前が安泰した生活をおくるために不穏分子はワシ自ら処分する、わかっておくれ、フィーファ」


「私の…!私の大切な人達を傷つける行為の何処が私の為になるんですか!そんなの私は頼んでない!!」


「お前のためなのだ…、わかっておくれ」


「わかりたくありません!」


「わがままはそのくらいにしておけ、癇癪なら後で聞いてやる」



頑なに意思を曲げない国王、そして



「下がれフィーファ、俺は…、まだ戦える…」


「無理よ…もう、止めて…」



シェインもまたそんな国王との戦いを続行する意志を見せている、

祖父はきっとシェインを殺すだろう、なんの情け容赦もなく、

祖父にとって自分と私以外は露頭の石に過ぎない無価値なものに過ぎないのだ


両親のいない私に親の温もりを教えてくれたガノッサ


同年代で同性の友達のいない私に初めて出来た友達のレイラ、


そして、シェイン


彼に対するこの気持ちが何なのかわからない、

友情なのかそれ以外の何かなのか、

それがわからないままシェインがいなくなったら私はきっと後悔する、


泣くだろう、泣き叫ぶだろう、自分を責めて、もしかしたら世界を責めるかもしれない、

なにより私から全てを奪ったお祖父様を許す事が出来なくなるだろう、


お祖父様は変わってしまった

昔はここまで向う見ずでは無かった

今のお祖父様ならきっと有言実行のもと私から全てを奪うだろう、

なら私に出来る事なんて最初から一つしかなかったのだ…、



「……………………、わかりました、お祖父様、私はお祖父様の元に帰ります、だから……だからシェインを、みんなを見逃してあげて…!!」


「なっ…何言ってんだ……、フィーファ…?」


「ようやく素直になったか、それでよいのだフィーファ、大人しく淑女らしくあるならそなたの願い、聞き入れよう、」


「はい…お祖父様」


「ふっ、ふざけんな!フィーファは!フィーファはお前の人形じゃない!」


「黙りなさい!不敬ですよ、シェイン」


「フィーファ…?」


「気安く名前で呼ばないでください…、…シェインここでお別れです、今までご苦労でした。」


「何だよそれ…」


「………………、シェイン……、今ま…で…ありが…とう…」


「ふざけんな、ふざけんな…ふざけんな!!

俺はまだ何も、何も成せてない、何も出来てない!こんな…こんなんが俺達の最後でいいのか…!こんなのが」


「…………。」


「部を弁えよ、小僧、せっかく拾った命を粗末にするものではないぞ?それにワシの元へ帰る事はこの子自身が決めた事だ、小僧、お前にとやかく言う視覚などないのだぞ?」


「何いってんだ、アンタには!

あんたにはフィーファの顔が見えてるのか、こいつがいまどんな顔してんのか見えてるのかって聞いてっぐはあっ!?」


「……、」


王の手がシェインにかざされただけでシェインは字ベタに顔をしたたかに打ち付け倒れた

王が何かしらの魔法を行使したのだろう、

しかし今のシェインにそれを“見る”事は出来ない

それだけの余裕がない、

しかしシェインにとってはそれだけでたったそれだけの事で抵抗も何も出来なくなるのだ


「ちく…しょ…う…」


シェインを見下ろす、いや見下す王にとってはシェインなど道端の石程の価値もない、

そんな物が王である自分に意見するなど度し難いなどと言う言葉では到底足りるはずもない


「お祖父様、もうそのくらいにして、」


この愛娘の頼みが無ければとうに捨て置いただろう、


そんな王の前に今度は自身の役目もまともに果たせぬ役立たず、無能がしゃしゃり出る


「この者の処分どうか私めにお任せできないでしょうか、」


「そんな価値がお前にあるとでも?」


「私はこの少年と同じく姫様に命を拾われました、その価値をこの少年に解く大役をどうか拝命出来れば」


「勝手にするがよい、孫娘に与えられた命、その価値を噛み締め矮小な自身を見つめ直すがよかろうよ」


「ありがたきしあわせ、」



その日、ガノッサの死刑は中断され取りやめられる事となった、

もっともガノッサは騎士団団長の任を剥奪され近衛の任も解かれている、それどころか王城への入城すら拒まれており事実上の解任だった。

不幸中の幸いは貴族としての立場までは手を出されなかった事くらいか、


昼前の謙遜は嘘の様に静まり今は夜の静寂が世界を包んでいる

ガノッサの屋敷には主人であるガノッサの他にレイラ、そしてシェインが寝台に寝かされている


シェインは深い眠りについている

傷自体はポーションで感知しているが精神的な疲労はいくばくか、

レスティーナ王との戦いそして敗北はシェインにとって大きな影響を及ぼすだろう、


これまで多くの強敵と剣を交える機会があった、死にかけた事も少なからずある、

それでも死なずなんとかやってこれた

しかし今回シェインは初めて自分が人に殺される事を生で体感した、

初めての敗北、

ガノッサと初めて剣を交えた時も敗北したがあの時のシェインには余力があった、余裕があった

しかし今回は違う

全力で挑んで尚、勝つ事が出来なかった


そして敗北がどんな結果をもたらすかを理解した


2年前、尊敬する恩師を失った

でもあの頃の自分は幼かった

狂気に囚われたアルフィダに勝つなんて無理だ


なら今なら勝てるのか、

無理だ、


全力で全ての力を振るって負けた

フィーファは俺達を…俺を逃がす為に自分を犠牲にした。


それが揺るがない結果、事実なのだから


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