表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

企画参加作品

ガリバーの目

作者: 黒イ卵
掲載日:2019/11/29

 これが青だったら、ガリバーの目なのに。



 タピオカ・ミルクティーを飲みながら、ミルクティーに溺れるタピオカという、数の暴力を眺める。

 逃げるように走って店に入った。熱で火照った体には、アイスミルクティーは心地良い。


 寒くなったというのに、外まで行列が続いている様子が目に入る。



 ずずず。黒い粒を飲み下す。



 ……青い青い、ガリバーの目。


 保育所のみんな、今、なにしてる?



 まるやま保育所。

 小さい頃、いた場所。

 当時、まだ保育所の数が少ない時に、市内にできた、初めての無認可保育所。

 (そう、後から親に聞いた。)


 

 「なみちゃん、これは、ガリバーの目よ。」


 ひまわり組の、はまのせんせい。

 先生に、これなあに?って聞いたのは、公園の遊歩道に生えていた、青い草の実。


 お散歩の時間に、少し遠い公園に行った日。

 今日みたいに朝から少し肌寒くて、めずらしく霧がかかっていた。

 あの頃、よく、ガリバーのお話を、はまの先生が読んでくれたんだっけ。

 小人の国に、巨人の国に、迷い込むガリバー。



 ずずずっ。

 逃げ回るタピオカを吸い込む。


 きゃあきゃあ言って、逃げ回る、追いかけっこの……ミナ、ちゃん。


 「なーみちゃん、ミナをさかさにしたら、おなじだね。」


 一番の、仲良しさん。


 「なみちゃん、あの青い実の草の名は、竜のヒゲって言うのよ。」


 「へんなの。はまのせんせい、こんなにあおくてきれいなのに、なまえがへんだよ。」


 「なみちゃん、そうだねえ。この、青い実は、猫玉、ともいうのよ。それなら、納得する?」


 「ねこだま? それなら、なっとく! だって、ねこも、がりばーも、ミナちゃんも。めのたまがぴかぴかで、きれいだもん!」


 逃げ回る鬼ごっこ、霧がかかる公園。

 あれ、いない、ミナちゃんがいない……。

 竜のヒゲを、猫玉を握りしめて、ミナちゃん、ミナちゃーんと呼びかける……。



 ずずず。タピオカを全て飲み込む。


 思い出した、猫玉だ。

 ガリバーの目。青い青い、丸い玉。


 ミナちゃんは、どうしたかな? 

 はぐれてそのまま、霧の中。


 保育所はしばらく閉鎖して、また、開始した。


 その後は?

 持ってるデバイスで検索をかける。

 あったあった。施設紹介ページ。

 うん、そうか。すっかり大きな認可園になって、そのあと、子ども園になったみたい。



 ずずず。

 最後のひと粒を飲み込んだ。


 黒い黒い、()()の目玉。

 ミイナちゃんのは、青い青い目玉。


 ガリバーと同じ、猫玉の色。


 綺麗な色は、狙われるのかな。




 「みいな、でミナちゃん。

 さかさにしたら、なみとおなじだね!」


 同じじゃ無かった。ぜんぜん違ったね。

 金髪巻き毛の青い目の。

 笑顔の素敵なお友達。


 もう、たまにこうして、寒くて、霧が出て。

 そんなきっかけが無いと思い出せない。

 あの頃の一番さん。


 「なーみちゃん、あたしたち、ずっと、ともだちだよ!」


 霧から逃げるように駆け込んだのに。

 黒ぐろとしたタピオカが、こちらをじっと見つめてる気がして。


 ーー小人の国に捕まってるの。なみちゃんの、代わりに。


 タピオカは目玉みたいで、もう、飲まない。

 ()()()()()()()()()


 「さようなら、ミナちゃん。」


 小さくおまじないの代わりに呟いて、プラスチックカップをゴミ箱へ捨てる。


 急いで飲み干したタピオカにむせて、さっきより薄くなった霧の中に出て。




 ーーミナちゃんが守ってくれたの。ずっと、ずっと。イヤなことから。








タピオカ祭りに参加しました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ぞわぞわとしながら読み終えました。 物語の中には、陰惨な描写などないにも関わらず、どこか恐ろしい雰囲気が漂っているのはなぜでしょう。 イマジナリーフレンドに代わってもらった記憶は、本当に小…
[良い点] イマジナリー・フレンドといえば思い出すのは『赤毛のアン』の鏡のお友達! 懐かしく拝読しました。 ミナちゃんは、鏡ではなくいつでも頭の中でお話できるのですね。 集団の中でどうしても1人にな…
[一言] 再び失礼します。 感想返信見て『?』ってなりあらすじに跳んで納得。 お気に入り新着から跳んだから、あらすじ読んでない……(´・ω・`)もともと読まないけど 全く違う話を想像してましたが………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ