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恋物語の片隅で  作者: 那智
合宿
54/64

準備は大事です

最近更新速度があれなので頑張りました。次の話へのつなぎだし短いけど。

あとは勘取り戻せればなぁ。

合宿を数日後に控えた日のことである。時期としては八月になったばかり。暑さは増しそろそろ殺意すら抱き始めた。

さてそろそろ合宿の準備をしとくかということで紫苑にも声をかけて荷物を纏めておく事にする。

こういうのは早めにやっておかないとあとで慌てるからね。くくく、事前準備に関しては抜かりはないのだ。

しかし別荘でバカンスなんて前世含めても初めてだ。ただの旅行なら子供の頃に数回、前世でも一回は行ったことがあるのだが。

楽しみといえば楽しみだけどゲーム的に考えればこういう合宿やら旅行はイベントの宝庫。例えばお金落としたり(紫苑とかが)、誰か迷子になったり(紫苑とかが)、ああ、あと海行くって言ってたしそこでもなんかありそうだな。ナンパされたりとか?……大抵危なっかしいのは紫苑だな。流石主人公。なるべく目を離さないようにしよう。もしくは誰かに見ててもらうか。

というか既に白波先輩関係で何かあるのは確実。それが紫苑に関係してくるのかどうかはわからないがどちらにせよ俺がやることは変わらない。


そういうわけで物事を円滑に進めるためにも準備しなきゃならない。何度も言うようだが準備が大事なのだ。

というわけで紫苑の家に向かう。その際自分の旅行カバンを持っていくが実をいうとほとんど準備は終わっている。なぜわざわざ紫苑と準備する約束をしたかといえばどちらかというと紫苑の準備の監視、および自分の荷物の再確認のためだ。確認は何度やっても無駄じゃないしな。


「えーと、なに持ってけばいいかなー?」


「とりあえずは着替えと水着、替えの下着に歯ブラシなんかのお泊まりセットだな。あとは向こうでなにかしたければ遊ぶための道具ってところか」


学校行事以外で泊まり掛けでどっか行くのって久しぶりである。一応合宿という名目だけど実質旅行だから持ち物が書いてある旅のしおりなんかもない。

これはうっかりが多い紫苑でなくともしっかり確認しなければ忘れ物しかねない。……まあ行くとこが白波先輩んちみたいなもんだからなんか忘れても特に問題にならなそうだけど。

だからといって忘れ物していい理由にはならない。借り物の道具を使ったりするより自分の物を使った方が気分もいいしな。

そういうわけで始めた荷造りだったが途中で紫苑のお母さんが手伝いに来たり、母が遊びに来たりしてだんだんと賑やかになりつつあった。

紫苑はどの服を持っていくか悩み、紫苑のお母さんはてきぱきと着替えを畳みカバンの中にしまっていく。そしてうちの母はどっから持ってきたのか服と呼んでいいのかわからぬ布切れを紫苑に勧めている。とりあえず母よ帰れ。


着替えを入れ終わったのならあとは私物だ。持っていけば移動中退屈しないし遊びの幅が広がるがあんまり多く持っていっても邪魔になる。かくいう俺もどの本を持っていくかでものすごく悩んだものだ。というか今も悩んでる。


……ところで紫苑、そのバカでかいシャチ型の浮き輪持っていくの?。いや持っていくのは構わんがなぜ今ここで膨らませた?その労力無駄じゃないか。しぼませないと入んないし畳めないだろ。いや文句言うなお前を畳むぞ。

ちょっと待って紫苑のお母さん、紫苑の着替えを俺の荷物に紛れ込ませないで。己の娘をもっと信じてあげて。というか紫苑どんだけ信用されてないねん。ある意味信用はされてるんだろうけど。

そして我が母よ、俺の水着をきわどい物にすり替えるのはやめてもらおうか。誰得だよ。というかそんな水着いつ買ったし。……え、父の?サイズ合わなかったやつ?……ええー……父上こんなん着るの?

ちなみに後日この水着は母が勝手に買ってきた物だと判明した。母ってば自分の夫になに着せようとしてんねん。


……とりあえず荷物もっかい確認しとこうかな……余計なもの入れられてたら嫌だし。




いろいろ大変だったもののなんとか自分の分の荷物は詰め終わった。入れてないのは今入れたらまずいものとかその辺だ。

紫苑はまだ終わってないが女性の荷造りをずっと見ているのもまずかろうということで先に離脱させてもらった。うちの母も紫苑のお母さんも用事で出掛けてしまっているがもう大体は終わってたし監視してなくても問題ないだろう。

とりあえず紫苑の準備が終わるまでの間お茶を飲みながら休んでいるとスマホが音を立てた。

おおう、スマホに着信が!メール……じゃねえ!え?これ通話?んと、誰からだ? 赤海先輩? 何用か。えーと、通話ボタンどれだっけ……あ、これか。


「はいもしもし」


『おう黒田、今時間あるか?』


「はい大丈夫ですけど」


わざわざ電話なんて何かあったのだろうか。このご時世にメールではなく電話とは。あ、別に電話ディスってるわけじゃないよ?

それはともかく赤海先輩の話を聞こうか。


「今度の合宿だけどよ、お前の方で追加で誰か誘えねえか?」


「なぜです?」


「泰斗がよ人数がどうこうっつっててよ」


「バランス? ちょっとよくわからないんで詳しく話してください」


赤海先輩の大雑把な説明だがじっくり聞いているうちに大まか理解できた。

つまり生徒会メンバーと及川、小鳥遊先輩じゃ女性ばかりが少なくなってしまうから他に誰か誘えということか。確かに女性陣は今のところ三人だが小鳥遊先輩は緑川先輩とセットだろうから実質女性陣は紫苑と及川の二人みたいなものだ。

でもそこまで気にすることだろうか?一人だけとかならともかくなんだかんだで三人いるんだし……いやまてよ?白波先輩がそれとなく言ってきたということはそれはたぶんカモフラージュも兼ねているのではなかろうか。

白波先輩はこの合宿中に俺に相談をするつもりだろう。その事は内緒にしたいみたい。人が多ければ俺達がいなくなっても気付かれ難くなる。

でも白波先輩警戒しすぎじゃね?抜け出しても割りとみんな気にしないと思うよ?まあそれだけいっぱいいっぱいなんだろうけども。

ふむう、しかしそういうのにはあまり俺は向いていない気がする。なにせ俺の交友関係は狭くはないが浅い。

例えばクラスメートたちを例にあげると友人と言えるだけの関係を築いてはいるが旅行に誘うほどでは……という感じだ。特に女子に関しては。というか生徒会と関係が無い人を誘うのはなんか違う気がする。

そうなると、うーん心当たりはあるようなないような。誘うにあたって俺とある程度面識があって、生徒会メンバーとも多少関わりがあって……うーん、そんな人いな……あ、ちょうどいい人達いるやん。

あの人達は俺と面識あるし生徒会の何人かとも知り合いだ。ついでに誘う理由も見繕える。たしか連絡先は緑川先輩が知ってたな。早速連絡しよう。


「あ、緑川先輩ですか? ちょっと頼みたいことがあるんですけど―――」




―――十分後、電話を終えた俺は満足気味に息を吐いた。

これで赤海先輩および白波先輩からのミッションは完了。コンプリートだ。ふふふ、我ながら完璧な仕事である。どやぁ。

さて、自己陶酔はこのへんにしてそろそろ紫苑とこ戻るか。流石にもう終わってるだろうし。そしたらおやつにでもしよう。たしか昨日焼いたクッキーがまだ残っていたはずだ。




「……なあ疑問なんだが」


「……うん」


「なんでお前のカバンはそんなにギッチギチなんだ?」


視線の先にあるのはカバンらしき丸い物体。少し目を離した間に何があったし。


「やり直しな」


「ええっ!? そんなぁ!」


そんなぁ、じゃねえよ。お前その中身ギッチギチに詰まったカバン持って旅行行くのか?運ぶの手伝わないぞ?

そんなこんなで紫苑の持ち物チェックを実施している物といらない物を仕分け、ようやく常識的な量にすることに成功した。

はぁ、なんだか早くも前途多難である。こんなんでこの合宿大丈夫なのだろうか?


次回は水着回です。今度こそ。

あ、絵はツイッターにアップします。興味あったらどうぞ。

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