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恋物語の片隅で  作者: 那智
7月
39/64

ちょっと悔しいです

白波先輩無双回

さて、これから尋問……いや質問タイムだというところで少々の問題が起きた。いや正確に言うのなら問題ではないが。

それはある程度話が纏まったと見た白波先輩が提案してきたことだ。なんでもここまで来たら生徒会として処理した方が早いらしい。

まあはっきりした被害が出てるし証人もいるから一気に解決した方がいいということだろう。

それで気になる田辺先輩と桜田先輩の処遇だが二人には黒幕を引きずり出すお手伝いをしてもらうらしい。この辺は俺が考えていた計画と同じである。だが白波先輩はそこに更にもうひとつ付け加えた。


「アンケートですか?」


「ええ、そうですよ。 アンケートを全学年で行い反応を見ます」


いじめに関するアンケートといえばいじめが発覚した小学校や中学校で行われるアレだ。行われる度にいじめを目撃していたにも関わらず多くの生徒がそれをスルーしていたと発覚するアレだ。

普通ならこのアンケートに対して一般生徒達は良い顔をしないだろう。人間自分が関係ないと思っていることに関しての協力を渋るものだ。しかし頼んだのが白波先輩だという事がこの問題を解決してしまう。

一言で言えば先輩は人望がありすぎるのだ。女子ならばその超一流のルックスと能力にメロメロ。なおかつ凄すぎて恋愛対象として捉えられずいわばアイドル的な人気を誇っているので恋愛関係のドロドロはないというご都合主義。普通に考えればその人気っぷりに反感抱きそうな男子でさえも嫉妬とかそういうのの前に尊敬や憧れが来るためヘイトを稼ぎようがないのだ。

そんな人からのお願い……ひねくれてなきゃ断りませんよね。ほんと何度確認しても完璧超人だな。欠点らしい欠点といえば凄すぎて対等に付き合える友人が少ないことぐらいだ。実は白波先輩と赤海先輩が地味に仲が良い理由はその辺にあったりする。

というかもうこの人に全部任せちゃっていいんじゃないかな?そしたら世界は驚くほど平和になるよ?

こほん、話がそれたがこれらの理由でアンケート自体に反発はない。しかしだからといってやる理由にもならないのだ。というか俺の中でのアンケートのイメージがちゃんとやってますよアピールでしかないんじゃね?って感じなためいまいち賛成できないのだ。


「そんなのやってどうするんすか? 話を聞く限り今回の件は目撃者を出さないようにやってたみたいですしアンケートなんかしても犯人がばか正直に自分が犯人ですなんて書くわけないと思うんすけど?」


黄野の疑問ももっともだ。流石にアンケート目的が犯人の自白を期待するものだとは思わないが主犯を知っているほど犯人の近くにいる人間が口を割るとは思えないんだけど。


「あなた達がそう思うのもしかたありません。 ですが今回は私を信じて任せていただけませんか?」


そう言われたら従うしかないんだよなぁ。基本この人なら大丈夫、何とかしてくれるって思っちゃうだけの魅力と能力があるからたち悪いわ。


「なあ黒田、お前どーなると思うよ?」


「……普通なら時間の無駄。 だけど白波先輩だからな……」


「だよなぁ……まあやることは決まってるんだしやるしかねーよな?」


「だな」


というか黄野、お前白波先輩の秘書みたいなポジションで確定なの?いや夏休み挟んだら何事も無くもとの関係に戻りそうだけどさ。黄野は部活だってあるし。


その後生徒会主導のアンケート調査が実施された。流石にドストレートに聞くわけも無く多少ぼかしてのアンケートだったが。

アンケートの名前は夏休み前の意識調査。長期休みの前にこういう意識調査をすることで犯罪の抑制をする、という名目である。

普通の意識調査に見せかけておいてその中に本命の質問を紛れ込ませてあるのだ。しかもそのために一からアンケート作ったというんだから驚きだ。

まさかたった一、ニ個のアンケートのためにあの量のアンケートをやらせるとは夢にも思うまい。それに一応意識調査も無駄にならないしね。俺もいつかこういう風に余すとこなく使えるようになりたい。


結果だけ先に言ってしまおう。白波先輩のアンケート作戦は大成功であった。なんとアンケートに回答した生徒達は驚くべきことに些細なことまでしっかり回答していたのだ。

何故ここまで回答率がいいのか?いやそもそも普通の小学校や中学校で問題が起こる前にいじめアンケートをやっても正直に答える人が少ないのは何故か?それは事件を解決する側が頼りないからだと俺は思う。もし誰かが勇気を出して証言していじめ発覚しても注意だけで終わらせたり対処が不十分だったりしたらどうなるか?なにも解決しない。それどころか次はその誰かがいじめの対象になる可能性がある。みんなそれを恐れて喋ろうとしないのだ。

だけど白波先輩は違う。白波先輩は有り余る人望に加え今まで生徒会副会長として数々の問題を解決してきた実績がある。

だからみんな信頼しているのだ。この人なら大丈夫だと。しかもそれを自覚してるからえげつないよね。いやまあどこぞの鈍感系よりはいいんだろうけど。


「ほんとチートだなぁ……」


そんな風に感心しながらもうひとつ白波先輩に頼まれたものを持って生徒会室に行くとそこではアンケート結果とここ二日ほどで集めた資料に目を通す白波先輩の姿があった。

ちなみにそこには俺や紫苑達生徒会メンバー+及川が色々と聞き込みして集めた資料も混じっている。というかこの人数だと聞き込みも捗るね。


「ふむ、なるほど。 黒田、犯人がわかりましたよ」


「早いですね」


白波先輩有能過ぎぃ。この人出てくると俺のやることが無くなっちゃうんだけど?前々からギャルゲーとかでは天才肌の主人公っていないなーとか思ってたけど納得したわ。全部この人だけでいいんじゃね?ってなっちゃうもの。まず感情移入出来ないし。

でもまあ味方なら頼もしいね。普段から仕事とかもじゃんじゃんやってくれるし。というかこういう完璧超人キャラが一番輝くのはなんだかんだで何気ない日常でだと思う。ファンタジーとかだと結局かませになることが多いからね。

それはともかくである。


「それでどうするんですか?」


「相手がわかったんです。 ですから直接乗り込むんですよ」


きゃあゴリ押し。その笑顔がとても素敵ですよ。本能的な恐怖を感じるくらいに。

なお、その後の黒幕やらとの『話し合い』は白波先輩と赤海先輩がするらしい。話し合いってたぶんそのままの意味じゃないよね絶対。赤海先輩がいる時点でお察しって感じだからね。

流石に計画の発案者としてそこまで任せるのはと思ったのだが結局俺が一年生であることを理由に理論的に丁寧にごり押され白波先輩達に丸投げすることになった。今まで手段を選ばないような態度を匂わせ、なおかつ年上であると思われる相手に一年生が何を言っても効果はないだろうとのことだからしかたないといえばしかたないのだが。

それでもなんだか悔しさが残る。赤海先輩の時も丸投げしたといえばそうなのだがアレは自分でそうした方が良いと判断しての丸投げだ。だが今回は俺では荷が重いと判断されてのものなので自分の力不足を痛感することとなった。

ま、ぶっちゃけるとむしろ俺はいろいろやり過ぎの部類になるんだけどね。先輩が関わりそうな暴力未遂事件解決したり先輩の恋路を取り持ったり。うん、立場逆でしょうよこれは。

ぐちぐち言ったがなんにせよこの件はもう俺の手を離れたといっていいだろう。ちくしょう。


だけどここでおしまいというわけではない。いやむしろ当初の目的は今だ健在、むしろこれよりクライマックスって感じなのである。


「というわけで俺達は小鳥遊先輩と緑川先輩の関係をはっきりさせようと思う。 なにか質問はあるか?」


「はいっ! なんでこのタイミングなんですか?」


「はい、それはこのまま夏休み入ったら先送りってレベルじゃないからです」


「あー小鳥遊先輩ならそのままタイミング逃して……ありえるね!」


この小鳥遊先輩に対する謎の信頼感だよ。まあ『物語』での扱いよりはマシだよな。……だよね?

それはともかくその辺はいじめ問題と同じ理由だ。時間を置けばうやむやになりかねないから。ただしいじめ問題は夏休み挟んでも再発の恐れがあったのに対しておそらく小鳥遊先輩が緑川先輩への想いを強く自覚し、ファンクラブの人達によって火をつけられた今回の好機、たぶん次の機会はない。


「ねえ、私も結構乗り気で参加してるから今更だけど……お節介にはならないのかな?」


ほんと今更だな及川。まあ気になる気持ちもわかる。でけどもそれは愚問というものだろう。なぜなら―――。


「お節介に決まっているだろう」


断言しよう。このときの俺はすげえいい笑顔だったと。


白波先輩は黒田君が敵わないと断言する数少ない人。

というか白波先輩は公式チート。例えるなら俺TUEEE小説の主人公みたいな人。

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