テスト対策しましょう
今までと何の変化もないけど新章突入!でも今回はつなぎの話なので短めです。
赤海先輩の一件がなんの問題もなく解決してから数日、俺は放課後の食堂で青葉先輩と駄弁っていた。
「へぇ…そんなことがあったんだ」
「ええ、事が事なんで青葉先輩には声かけませんでしたけど」
「呼ばれても僕は何も出来なかっただろうからね……」
よくわかってるじゃないですか。明らかに荒事よりも頭使うタイプですもんね。まあ、俺たちは荒事に関わってなくてハッスルしたのは先生方だったけど。
あの後の顛末を簡単に語らせてもらう。
赤海先輩はお咎めなしだった。今回完全に被害者だったためだ。事が事なだけに疑いの目を向ける先生もいたが生徒会役員全員が赤海先輩を弁護したために納得してくれた。
その後まず赤海先輩は生徒会長の座を白波先輩に譲った。これに関してはぶっちゃけあんま変わった気がしない。だって今までも白波先輩が会長みたいなもんだったし。
とはいえそれ以来というものちゃんと生徒会に来るようになり仕事もしっかりこなしている。それによって俺の仕事量が減ったのは喜ばしいことだ。いやマジで。
それとこの件に関わった不良生徒たちは全員捕まった。あの日に体育会系の先生方によってほぼ一網打尽にされたらしい。中には先生の包囲網を突破して逃げた奴もいたみたいだけど結局後で捕まった。逃げたといっても学園の外に出るわけにはいかないのでこっそり寮に戻ろうとしたところを捕まったようだ。
……なんだか最初から不良生徒たちが詰んでたように思えてくる。そもそも学園という閉鎖空間で問題起こそうってのが無謀だったんや。
「ま、しばらくは休みたい気分ですね」
いやマジで。一旦本を置きコーヒーを啜る。にぎゃい。ブラックで飲むんじゃなかった。後悔している。
だが退くことはできない。なぜならミルクと砂糖は俺の隣でぐーすか寝息を立てている紫苑に使われてしまったからだ。
おのれ甘党。通常の二倍ミルクと砂糖使うとは何事だ。そんなんじゃ太……らないんだよねこいつ。さすが主人公やでぇ……平気で人類の半分を敵に回しやがる。
つかなんでこいつコーヒー飲んだ直後にうたた寝してんの?カフェイン仕事しろよ。
その後めげずに飲み干したがよく考えればミルクと砂糖貰いに行けばよかったんじゃねと気付き凹むこと十分。ようやく立ち直った俺に青葉先輩が躊躇いながらそういえば、と話を切り出してきた。
「そろそろテストがあるけど黒田くんは大丈夫?」
「ああ、もうそんな時期でしたっけ」
現実を直視したせいで内心吐血しつつ応える。テストというものは得意教科のそれであってもやりたくないものである。微妙な教科なら言わずもかな。
ていうか休む暇ねえなちくしょう。ゆっくり本読ませろ。
「たしか七月の頭でしたよね」
「うん、そうだよ」
ああ、気が滅入る。この学園テストが年に二回だけだからその分キツイらしいんだよな。別に成績が極端に悪い訳じゃないからちゃんとやればそれなりにはできるだろうけど……はぁ。
やっぱりテストというだけでいやだ。というかこの世にテスト大好きな人なんているんだろうか。いたら俺はその人を尊敬する。そんでもって少し距離を取る。
未だにうたた寝してる紫苑がうらめしい。のんきな顔で寝やがって、お前俺より成績悪いやろが。
顔見てたらなんだかすっごくイラっときた。今度紫苑のお菓子だけシュガーレスにしてやる。くくく、甘党には辛かろう。貴様の血糖値を下げてくれるわ。
おっと、思考が激しく逸れた。
「ちょっと英語が不安ですね」
「あー、あれってわからない人はほんとわからないらしいからね」
「ええ、あまりに意味が理解出来たなかったので一生国外に出ないことを誓いましたし」
「そ、そこまで……?」
その言い方から察するに青葉先輩は英語できるのか。妬ましい。
言葉が通じないなら行かなきゃいいじゃない。こちらとらそんなグローバル率ゼロな思考である。だって言葉通じないとか不安やん。俺は国内引きこもりになるんだ。
というかそれ以前にこの国の治安が良すぎて海外がめっちゃ恐ろしい所に見える。平和ボケ国家万歳って感じだね。
おっと、思考が逸れた。
「英語出来るなら紫苑の勉強見てやってくれませんか?」
「ええ!?」
いやそんな驚くとこでもなかろう。確かに突然ではあるけども。
「今では俺がある程度教えてたんですけど最近忙しくて俺自身の勉強おろそかになってたんですよ。 教えられるほどの余裕があると思えません」
前世で一度やったとこだからある程度はわかるんだけどね。前世の記憶が役に立つ数少ない機会である。
というか今更だけど転生ってほとんどメリット無いよね。しいて言うなら勉強の手間がある程度減らせるぐらい?
その唯一のメリットさえもう一度高校入試と大学入試やらなきゃならんというデメリットの前では霞みまくる。ちくしょうが。
「う、うんわかった。そういうことなら任せて」
「任せました」
この会話の何がすごいって紫苑本人の意志が一切関与してない。当の本人は真横でうたた寝からガチ寝に移行してる。だからカフェイン仕事しろよ、サボるな。覚醒作用とはなんだったのか。
とりあえずここでガチ寝はいろいろ駄目なので起こすことにする。
「おい、起きろ紫苑」
「んぅ……あと五分……」
そんなこと言っても騙されんぞ。前に言う通りに五分待ってやったら次「あと十分」とかほざきやがったじゃないか。なんで延長したし。
ていうか揺すっても起きねえ。致し方ない。ここは武力行使でいこう。
「てい」
「あうっ!?」
脳天かち割る勢いでチョップしたら流石に一発で目が覚めたようだ。でも顔をあげない。頭押さえてぷるぷるしてる。
「つ、強くやり過ぎじゃないかな……?」
「甘いですよ青葉先輩。 生半可な手段ではこいつなかなか起きませんから」
おばさんの話では結構強い地震が起こっても起きなかったらしいからな。こいつ震災起こったら助からないんじゃね?
「うう…いったあ……この痛み久しぶりだなぁ。 もー、相変わらず手加減してくれないし」
「起きたか」
「そりゃ起きるよぉ……」
昔は三発ぐらい叩き込まなきゃ起きなかった時期もあったというのに成長したな。今でこそ目覚まし時計で起きれるようになったらしいがあの頃は武力行使するかクラッカーでも鳴らさないと起きなかったからな。
「えーと…高倉さんってそんなに目覚めが悪いの?」
「ええ。 低血圧でもないのにどうしてこうなのやら」
「今は大丈夫ですからね? 最近は起きれるようになってるし、今日の朝だってしっかり目覚ましで起きたんだから!」
うん、それ普通のことだからな?中学卒業間際まで俺が毎朝どこぞのゲームのテンプレ幼馴染のごとく部屋まで起こしに行ってたのを忘れたとは言わせんぞ。
というか立場逆じゃないですかねえ?こういうのって男が起こされる側なんじゃないの?
まあこいつ、今でこそしっかりしてるけど小さい頃は割とポンコツだったからしかたないか。
っと、さっき青葉先輩に頼んだこと紫苑に説明しないと。さすがに事前説明なしはかわいそうだからな。
「ああ、そうだ。 今度のテストのことだがテスト勉強は青葉先輩とやってくれ。 もう話は通してあるから」
「ええっ!? そんなのいつの間に頼んだの?」
「ついさっき。 お前が寝てる間にな」
「ええー」
不満そうだな。だが反論は却下だ。こんなところで寝るほうが悪いのだ。
「今回俺も教えられるほど余裕ないしな。 自分の勉強に集中したいんだよ」
「んー、まあそういうことならしかたないよね。 じゃあ先輩、よろしくお願いしますね」
「うん、任せてよ」
「スパルタでもかまいませんよ。 青葉先輩が納得できるまで妥協なしでどうぞ」
「ちょっと純、やめて! 死んじゃうから!」
「あ、あはは……そこまではしないから……」
よしよし。これで自分の勉強時間が確保できるな。すまんな紫苑、さすがに今回悪い点をとりたくないんだよ。
でもこれで青葉先輩は紫苑との時間が取れるし、紫苑は俺より勉強ができる青葉先輩に勉強を見てもらえる。一石二鳥……いや、一石三鳥だな。
あー次誰の話にしようかな?小鳥遊先輩の話にしようかな。
あと何話か次のイベント発生前にいれたいんだよね。
あと、誰の話が読みたいって意見があれば言ってください。要望があればアイディアをひねり出せると思いますから。
あ、次の更新は「再誕世界の黙示録」を更新した後になると思うんで気長にお待ちください。




