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ただの日本のヒラ公務員(事務職)だった私は異世界の最弱王国を立て直して最強経済大国にします  作者: 脇田朝洋


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261/261

第261話 天才パティシエがいました



「ゼラン様」



 私はニコリと笑顔のままゼランに近付いた。

 するとゼランが目を泳がせたまま答える。



「な、何かな? ア、アリサ」



 ゼランは片手を背中に回した状態で取り繕うような笑みを浮かべるがその額には汗が滲んでいる。

 この反応は自分に後ろ暗いところがある人間に見られるものだ。



 ますます怪しいわね。

 ゼランが後ろに隠したモノも私に見られたら困るモノなのかしら。



「今、ブラン様にはお話したところだったんですけど私は自分の夫となる婚約者の方に隠し事されることは嫌いです」


「な、なるほど……」


「そのことを理解してくださったブラン様はご自分が私の人物画を大量に描いていた秘密を打ち明けてくれました」


「そ、そうだったのか。確かにブランの絵はアリサの人物画ばかりだからアリサも驚いただろう……ハハ……」


「いえ、そんなことは思いません。ブラン様の絵の才能は素晴らしいものですから」


「そ、そうか。それは良かったじゃないか、ブラン」



 ゼランは自分から私の意識を反らせたいのかブランに声をかける。

 だがブランはそんなゼランに対して憐れみすら感じさせる声で返事をした。



「ゼラン、諦めてお前の隠し事もアリサに正直に話した方がいい。そうしないとアリサにお前との婚約を解消されるぞ」


「えっ!?」



 ゼランは再び私に視線を戻す。

 その表情は蒼ざめていて美しい緑の瞳は怯えで揺れている。



「アリサ、まさか私との婚約を解消するのか!?」


「それはゼラン様が私に隠し事をした場合ですわ。……ゼラン様、後ろに隠しているモノは何ですか?」


「うっ! こ、これは、その……」


「見せてくれないならゼラン様との婚約はなかったことに……」


「わ、分かった! 見せるから婚約破棄しないでくれ!」



 ゼランも私の脅しに屈して自分の後ろに回していた手を私に差し出す。



 こ、これは!?



 ゼランの手にはお皿がありそのお皿には小さめのホールケーキが載っていた。

 私が思わず驚いたのはそのホールケーキが様々なクリームを使い人の顔をしていたことだ。


 しかもどう見てもそのケーキの顔は私だ。

 クリームでここまで私の顔を表現できるなどものすごい腕前のパティシエの作品としか思えない。



「こ、このケーキの顔って私ですよね?」


「ああ、そうだ。これはアリサの顔だ。ケーキだけでなくアリサの顔のクッキーとかもある」


「お菓子でこんなに私の顔を表現できるなんてすごい腕前のパティシエがいるんですか?」


「パティシエ……? その言葉は菓子職人という意味だろうか?」



 おっと、パティシエって言葉は通じなかったか。

 微妙な異世界感がここで出て来るとは。でもパティシエは洋菓子職人のことだから菓子職人で間違いではないわね。



「そうですね。私の国の言葉ではパティシエというのは菓子職人のことです」


「そうなのか。これは菓子職人に作らせたモノではなく私が作ったケーキだ」


「え!? ゼラン様がケーキを作ったんですか!?」



 まさかゼランにパティシエの才能があるとは!

 しかもこんな天才パティシエなんてすごいじゃない!


 ブランもゼランも天才的な才能を持つ双子の超絶イケメンだったなんて!

 それでいて一国の王太子と王子でしょ?



 ハイスペック超絶イケメン、万歳!!



 私は思わず心の中で喜びの雄叫びを上げる。

 イケメンでも能力のない男は私のイケメン好きの基準では失格なのだ。


 たとえそれを差別と言われようとも私の中でその部分は譲れない。

 人間誰しも譲れない自分自身の価値観というものは存在する。



 こんなハイスペック超絶イケメンの婚約者にしてくれてありがとうございます、神様。







 お前こそハイスペック超絶イケメンと釣り合うヒロインになれ







 なんか見えないプレッシャーを感じたのは気のせいかしら。



「こんなアリサの顔の菓子ばかり作る私は気持ち悪いだろうか?」



 ゼランが恐る恐る私に尋ねてくる。



 これはブランの時と同じように怒るんじゃなくてこの才能を別の方向に向けてあげるべきよね。



「そんなことはありませんよ、ゼラン様。でもどうせなら私の顔以外の飾り付けにしていただけると私もゼラン様の作るケーキやクッキーを食べたいと思えますわ」


「私の菓子をアリサが食べてくれるのか。それならばアリサの顔以外の飾り付けの菓子も作ってみるか」


「そうしてください。ゼラン様の作ったお菓子を楽しみにしています」


「分かった。できたらぜひ食べてくれ」



 ゼランに笑顔が戻る。



 ふう、これで私の顔ばかりのお菓子が増えるのは防げるわね。

 自分の顔のお菓子食べたらなんか自分を食べているようで複雑だもん。



 するとブランが残念そうな表情になった。



「ゼランの作るアリサを食べられなくなるのは残念だな。本物のアリサを食べられないからお菓子のアリサを味わっていたのに」


「仕方ないさ、ブラン。結婚すればアリサ自身を味わえるからそれまで我慢しよう」



 ちょっと! 今の言葉は健全なる物語のこの作品では使っちゃダメよ!

 そういうことは結婚してからのお話にしてちょうだい。



「ブラン様、ゼラン様、私と正式に結婚するまで私との夜のことを想像させる言葉は禁止します。もし今のような言葉を今後使ったら……」


『分かったから婚約破棄しないでくれ!』



 二人のハイスペック超絶イケメンの悲痛な叫びが重なって部屋に響いた。



 分かればいいのよ、分かれば。

 皆さんも大人の会話は大人しかいない場所でするように心がけましょうね。


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