第259話 敵は外より内にいます
次の日は仕事が休みの日だったので私はクリスから預かった四通の招待状を手に奥宮にやって来た。
本当は奥宮に入るのも入り口の兵士に何の用件で王族の誰に用事か伝えなければならないのだがブランの婚約者でもある私は顔パスで入ることができる。
今回はそのことがありがたく感じるがセキュリティの観点から考えるとそれもどうかなとは思う。
以前働いていた職場で管理職から民間に天下りした元職員が我が物顔で職場に入って来ることがあり問題になったことがある。
先日まで同じ職員だった、しかも上司に「関係者以外入ってはいけません」と注意するのは気が引けるのが人間というもの。
それでも職員でなくなった者の事務所内の立ち入りは認めてはならない。たとえその人物が仕事で世話になった恩人であろうとも。
ブランたちに奥宮への出入りは知っている人物であってもきちんとチェックすべしって言おうかしら。
だって情報漏洩だけじゃなくて王族の命にもかかわってくるわけだし。
考えたくないが敵は外より内にいるということを肝に銘じておかなければいけないのだ。
まあ、とりあえずはそのことよりも今は招待状を無事に渡す方が先ね。
う~ん、国王や王妃よりもブランとゼランの方が言い訳しやすいかな。
そう思った私はブランの部屋に向かう。
ブランの部屋とゼランの部屋は入ったことはないが場所は聞いていたのでひとりで辿り着ける。
私はブランの部屋の前に来た。ちなみにゼランの部屋はこの隣りらしい。
扉をノックすると中からブランの声が聞こえる。
「誰だ?」
「ブラン様、私です。アリサです。用事があってきたのですが少しいいですか?」
「なに!? アリサだと! ちょっと待ってくれ!」
慌てたブランの叫ぶような声が聞こえて部屋の中から何やら派手な物音が廊下まで響いてくる。
何の音かしら? 何か取り込み中なら悪いことしちゃったな。
ブランたちを訪ねて行くことを話してなかったので私が突然来たことにきっと驚いたのだろう。
だが部屋の中から聞こえる派手な物音の正体が気になる。
もしかして私には見せられない物を隠しているとか?
でも私に見せられない物ってなんだろう。まさかエロ本とかかな。
ブランだって成人男性だ。
エロ本の一冊や二冊、持っていて不思議ではない。
辛抱強く待ってるとようやく扉が開く。
中から顔を出したブランの額からはなぜか汗が滲んでいる。
そんなに必死にエロ本隠さなくてもいいのに。
ブランがエロ本を持ってたって別に私はかまわないわよ。
「ま、待たせたな! アリサ。部屋の中に入っていいぞ」
「お邪魔します、ブラン様」
ブランの部屋に入った私はその豪華な装飾に飾られた部屋に圧倒される。
やはりブランは腐ってもこの国の王太子のようだ。
その王太子が必死になってエロ本を隠したのかどうかが気になり私は部屋の中をキョロキョロと見回してしまう。
あの本棚とか怪しそうよね。
後は机の引き出しとかかな。
「コホン、アリサ。何をそんなにキョロキョロ見ているんだい?」
「いえ、何かブラン様が私に隠された物があるような気がしまして。それがどこにあるかなって思ったりしたもんですから」
「ア、アリサに見られて困る物などないさ! ちょっと散らかしていたから片付けただけだ……ハハ……」
ブランの目は完全に泳いでいる。
こんなブランの姿は珍しい。
これはけっこう面白いかも。
もう少しイジメてみようかな。
私の心に悪戯心が芽生える。
「ブラン様。私はブラン様の婚約者ですよね?」
「ああ、そうだが」
「私は以前、自分の夫になる方には隠し事はされたくないと言いましたよね。本当は何を隠したんですか?」
「うっ!」
ニコリと微笑む私の笑顔にブランは明らかに狼狽している。
「た、確かに、そういう約束だったが……わ、私は、アリサに嫌われたくないのだ」
「そうですね。隠し事されるブラン様なら嫌いになるかもです」
「…っ! す、すまん! ほんの出来心なんだ! 許してくれ! アリサ!」
ブランは必死になって私に頭を下げる。
エロ本だけでここまで必死になることがあるだろうか。
もしかして隠したのはエロ本じゃないのかな。
「それでしたら隠した物を見せてください」
「わ、分かった……その代わり絶対に私のことを嫌いにならないでくれよ」
「いいですよ、約束します」
少し怖い気もするがブランが必死に隠す物の正体を知りたくて私はそう答える。
「隠した物は寝室にある。こちらの扉だ」
ブランが奥にある扉の前に私を連れて行く。
「この扉を開ければいいんですね?」
「あ、ああ……」
私は寝室の扉を開けてみる。
こ、これは!?




