第140話 悪魔は高給です
「アリサ様」
「何? ジル」
私が仕事をしているとジルが話かけてきた。
「この前、頼まれていた金行で口座を作る時のアリサ様の身分証明書ができましたのでお持ちしました」
おっと、そうだ。自分の口座を作っておかないとね。
「ありがとう。昼休みに口座を作りに行って来るわ」
私は自分の身分証明書を受け取る。
この世界の身分証明書がどのような物か気になり書類を見てみる。
書類には名前や年齢、住所、家の爵位などが書いてある。
住所が「ダイアモンド王国王宮内、ホシツキ宮殿」と書かれているのにはちょっと笑ってしまう。
それにしても「家の爵位」が書いてあるのはこの世界独特よね。
やっぱり身分制度がある以上、それを無視しての改革はできないわね。
もちろん私の家の爵位のところには「伯爵」と書いてある。
ふと、私はワイン伯爵を思い出す。
まだワイン伯爵家を出てからそれほど経っていないとはいえ、ワイン伯爵が私とクリスがいなくなっても困ってないか心配はある。
でもこないだの手紙では元気に頑張っているって言ってたし、シラーとシャルドネがいるから大丈夫よね。
そうだ。今度の休みにはワイン伯爵夫妻に初任給で贈るプレゼントを買いに行こう。
クリスも誘おうかな。
「クリス、ちょっといい?」
「はい。何ですか?」
「今度の休みなんだけど初任給でお父様とお母様に何かプレゼントを贈ろうと思うんだけど、クリスも一緒に買い物に行かない?」
「父上と母上にプレゼントですか? それはいい考えですね。分かりました。一緒に行きましょう」
「じゃあ、予定を空けておいてね」
「はい」
私は昼休みになり食事を急いで食べると財務事務省内にあるという金行に向かう。
ジルは昼休みじゃなくても「アリサ様の好きな時間に金行に行っていいですよ」と言ってくれたがやはり勤務時間内に私事をするのは気が引ける。
私って自分で言うのもなんだけど結構真面目なタイプよね。
でも勤務時間内でも多少の私事を済ませることを認めてくれるなんてこの役所はまだ緩い方だわ。
公務員は基本的に仕事以外の理由で長時間の離席は認められない。
もちろんトイレに行くとかは自由であるが、会議をするにしても席を外す場合は係の人間に一声かけるのが普通だ。
そしてパソコンで自分の仕事のスケジュール表に予定を書いておく。
そのスケジュール表は他の課の職員も見れるようになっていて、その人が今現在会議中でいないかどうか、もしくは今日は休みとかがイチイチその課に行って聞かなくても分かるようになっている。
なので他の課の課長や部長などのスケジュールを見て、在席している時に書類の決裁をしてもらったりできるのだ。
私は金行に自分の小切手を持って向かいながらいつものごとく私から離れないサタンに目がいく。
そういえばサタンのお給料ってどのくらいなのかな?
命かけて私を守ってるんだし、絶対に給料は高いわよね。
だって「伝説の騎士」でもあるし。
「ねえ、サタン」
「………はい………」
「サタンってお給料っていくらなの?」
「………400万です………」
400万? ああ、年収がってことかな?
確か、ワイン伯爵家の年収は700万程だったから一般人としては貰っている方よね。
ワイン伯爵領の村長さんたちは年収が100万ぐらいだったし。
「年収400万なんてサタンも結構貰っているのね」
「………いえ、違います………」
ん? 何が違うの?
「………毎月の給料が………400万です………」
「は?」
毎月の給料が400万!?
私の給料でも110万なのに!?
そんな高給取りだったなんて。
「もしかしてダイアモンド王国の給料がいいからこの王国に仕えることにしたの?」
「………いえ、給料だけなら他の三大国の方がもっと払うと言われました………」
「じゃあ、やっぱりサタンがこの国にいるのって「好きな食べ物」があるからってこと?」
「………はい、そうです………」
「ちなみに三大国で一番高い給料額を言ってきたのはどこ?」
「………サファイヤ王国です………」
「金額は?」
「………1000万です………」
月給が1000万ですって!?
それよりも価値のあるサタンの「好きな食べ物」ってどんだけなのよ!!
もちろん人によって何に価値観を持つかは変わるがサタンの基準は「食べ物」ってことは揺るがないわね。
私は金行に行って窓口で手続きをして口座を作ってもらった。
自分の通帳を見ながら改めて自分の給料の金額に溜息が出る。
日本にいた頃の私の通帳には無かった桁だわ。
私はとりあえず当面の資金として10万円ほどを現金にした。
これで自由に買い物できるわね。




