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森の賢者は怒りに立ち上がる。

 「…ふざけんじゃないわよ」

 私は怒っていた。

 思わずバンッと机に手を置いて、立ち上がって思わず窓の外に視線を向けた。





 王国と帝国との戦争が始まって、もう2年になる。そしてアキヒサが出て行って9年が経つ。

 戦争の状況は悪化していった。

 『救世主メシア』と『悪魔』の活躍により、王国と帝国双方の土地が荒れてきていると精霊達がいっていた。

 『救世主メシア』と『悪魔』が直接的に対決をしたことはないらしいが、双方とも魔術をド派手にかましたり、多くの敵兵の命を奪っている。

 それは、私にとって別に気にすることではない。

 私が怒っているのは、私の住んでいる森を戦場にされたからだ。

 此処は私が350年以上ずっと住まっている場所。その場所に手を出すって事は、私はやり返しても構わないわよね。だってこのままじゃこの家にまで誰かやってくるかもしれない。森が焼けたら、この家がさらけ出されるかもしれない。

 それは、困る。



 「……はぁ、久しぶりに外に出るのが戦争中だとか何て面倒なこと。でもま、私のテリトリーを荒らしたことをきっちり後悔させてあげる」

 外は戦争中。王国と帝国がドンパチとやりあっている。

 それでも私はテリトリーを荒らされたことを怒っている。それに戦争なんて面倒なことはじめて、本当にバカみたいと思う。

 アキヒサが何を思って戦っているかはわからない。最後に会ってから10年近くたっていて、その間ずっと『救世主メシア』なんてものとして崇められていたというならば性格も変化しているかもしれない。

 もし出ていく前と同じように人に死んでいってほしくないと、たとえアキヒサが望んでいても、国を守りたいから戦っていたとしても、王国の中には自分の利益のためだけに動いているものだって多いだろう。

 戦争は金にもなる。

 戦争を行っていない他の国では、武器などの輸出でかなりの額を設けていると考えていいはずだ。中には戦争が長く続くようにと裏で動いていることもあるだろう。自分がよければ全てよしって考えの人間も多いだろう。

 結局何があるかわからないのが、現実だ。もしかしたら私もテリトリーを荒らされたからって文句をいったとして死なないとは限らない。

 でも死んだら死んだで、別にいい。そりゃあ、死にたくなんてないけれども私は長く生き過ぎているから。

 死んだらそれまでだったというだけの事。だから別に恐れたりなんてしない。私は自分の思うように、自分のためだけに生きる。

 利用されて、裏切られて、期待されて、失望されて。そうやって生きてきた中で、私は自分が思うように生きていくって決めたから。

 『セイナ様ー、行くのー?』

 『僕らも手伝うー?』

 「そうね。行くから。精霊ちゃん達もよかったら手伝ってね」

 精霊は様々な事が出来る。人間と契約して、使役されているものだっている。私は契約はしてないけど、この森に住まう精霊達とは家族のようなものだ。もうずっと一緒に居る仲であるし。

 だから精霊達は私に力を貸すことを躊躇わない。私が望めば力を貸してくれる。

 これはずっと一緒に暮らしてきて出来た絆故だ。

 私はそして、精霊達を引きつれて久しぶりに家から出たのであった。



 ―――森の賢者は怒りに立ち上がる。

 (彼女はそうして動き出す)

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