ハイエルフについての考察。
ハイエルフと呼ばれる種族が居る。
それは知っての通り、エルフ族よりも上位種である。
エルフ族は人間の三分の一の速度で成長していき、三百年から四百年近く生きると言われている。
それに対し、ハイエルフ族は寿命がないにも等しいのだ。
世界で現在確認されてるハイエルフの数は三人だけだ。
アウグスヌスの森に住まう『森の賢者』と呼ばれるセイナとフランツ。
そしてエルフ族の祖とされる『守護神』アキヒサだ。
これは歴史家である私、シャンクス・リアースがハイエルフについて調べた結果の考察の記録である。
まずセイナについてを語ろう。
セイナの外見は記録によると銀髪黒眼の若い女性である。彼女はフィリネス大陸、アースガルト大陸、双方の人々に恐れられている存在だ。
元々彼女はフィリネス大陸に存在するアウグスヌスの森にいつの日か住まうようになった存在なのだと記録されている。年齢は不明だ。少なくとも五百年前には存在している事は書物から分かっている。
『賢者』として知られる彼女に一時期『魔女』と呼ばれていた時代があったという事が最近発見され、何故そう呼ばれていたかが議論されている。
そして彼女について語るのに一番重要なのは『聖域認定事件』と『賢者の侵略事件』と呼ばれる二つの事件である。
前者はアウグスヌスの森が聖域に認定された事件の事をさす。当時、二つの国が『ベルギスの戦い』と呼ばれる戦争を起こしていた。その戦いの中で自身と同種である『悪魔』――フランツと『救世主』――アキヒサが戦争の道具にされていることに憤慨したセイナの手で恐怖を植え付けられたと伝えられている。
大国ルサンブルの教育では『賢者』や『悪魔』、そして『救世主』に手を出してはいけないとどの国よりも強くいわれている。というのもルサンブルの元になった小国ルアネフの女王が実際にセイナの所業を目のあたりにした事が原因と推測されている。
セイナの暴れた結果により、アウグスヌスの森は聖域と認定された。
後者は割と最近の話である。元々フィリネス大陸の存在しか知らなかった私たちがアースガルト大陸の存在を知りしばらくしてからの出来事だ。アースガルト大陸では人体実験が行われており、その結果竜人と獣人と呼ばれる人種の存在があらわになった。彼らは当初のエルフ族と同様迫害されていた。『賢者』の噂を聞いて、彼らは彼女に助けを求めた。彼女が彼らに見向きもしなかったことで、竜人と獣人が恐れ多い事にも彼女を殺してしまおうと団結した。そして多くの二つの人種がアウグスヌスの森に侵攻した結果、全員が殺された。あまりにも数が多いことに疲弊したのか彼女は見せしめとばかりにアースガルト大陸に出向いて圧倒的な力を見せつけたのだ
『私に関わらないでくれない? 関わらなければ何もしないから』とそんな風にいったらしい。そんな事もあってアースガルト大陸の連中にまで彼女は恐れられている。
なお、彼女は人間嫌いでも有名であり、敵には容赦がないと伝えられているため会いに行くのは得策ではないだろう。
次にフランツについて語ろう。
彼は『ベルギスの戦い』の際に帝国側につき戦ったとされている。古い書によると『服従の魔術具』と呼ばれるもので強制的に戦わされていたという。
それをセイナに助けられ、以後アウグスヌスの森に住まっているとされている。
彼の実力は戦争時には発揮されていたものの、セイナのように圧倒的力を使う事は歴史上ないが、それでもその実力は確かだという。
戦争時には敵国に『悪魔』と呼ばれていたと私は古い歴史書により知ったが、それを知るものは少ない。三人のハイエルフの中で最も記録がないのがフランツである。
最後にアキヒサについて語ろう。
彼は『ベルギスの戦い』において王国側につき戦ったとされている。こちらは当時の王国の国王と友人関係にあり、その絆を利用されていたという。
こちらもフランツ同様セイナに助けられて以後アウグスヌスの森に住まっていたとされている。
ただアキヒサはある出来事で森から出て暮らしていた時期があったという。その期間に彼と人間の間に生まれたのがエルフとされている。そのエルフの短期間の増加から彼は女好きだという認識が私たちの間ではされている。
子供であるエルフ族が迫害しているのを見かねて、エルフ達をまとめあげ、魔物溢れるディラクス森の奥地にエルフ族の里を作った人物である。以後、彼はアウグスヌスの森にかえる事はなく、エルフ族の『守護者』として存在している。
アキヒサについて有名な事件は『エルフ拉致事件』である。ある時、エルフ達が攫われる事件が起きた。その結果、アキヒサが暴れて終わった事件の事をさす。自らの子供たちに手を出した報いとばかりに主導者達を半殺しにしたのだ。なお、その事件よりエルフ族を迫害したり実験の材料にしようとする者はほぼいなくなった。
こちらもフランツ同様、戦争時には『救世主』と呼ばれていると私は古い歴史書により知ったが、それを知るものは少ない。
ハイエルフについてはよくわからない事ばかりである。ハイエルフの三人に会う事が出来れば詳しい事がわかるだろうが、生きる伝説であるハイエルフ達に私は生涯会える事はないだろう。
エルフだの色々出てきた世界での、セイナさん達の認識を書こうと思い書いた番外です。
一応次で終わる予定です。セイナの子供目線で終わらせようと思います。




