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旭日に顔を上げよ  作者: 寿和丸
19章 世界大戦への道
185/257

185話 フーバーの分析

前話で、第31代アメリカ大統領だったハーバート・フーバーの略歴や実績を見れば決して無能な人物ではないことを理解していただけかと思う。

彼は38年3月に、ヨーロッパの各国首脳の招きに応じて訪欧している。大戦中、彼がロンドンにいて、飢えに苦しむヨーロッパ各国に食糧支援をしたことへの返礼の意味もあった。

この訪欧中に、ヒットラーやイギリスの首相チェンバレンとも会っている。


ヒットラーとの会見はフーバーがドイツの奇跡的な復興の実態を把握しようと、ドイツ国内の見学中に突然申し込まれたものだった。ヒットラーは先の大戦でフーバーが食糧援助したくれたことに感謝したかった。3月8日午後、会見はヒットラーが飢えた国民に支援の手を差し伸べてくれたフーバーへの謝意から始まって、15分だけの短い予定が、大幅に延長されるものとなった。

フーバーはこの時の会見の印象を次のように言っている。

「ヒットラーを狂信者、お飾りだけの愚かな指導者とする欧米の報道機関は間違っている。ヒットラーは自身の言葉で国家社会主義思想に基づく経済政策を語った。情報の豊かさは彼が高い記憶力を有していると分かる。

理知的で矛盾の無い会話の中で、彼が二度ほど激高した場面がある。一つは共産主義、もう一つは民主主義を話題にした時だ。

先の大戦でドイツが敗北したのは、ソビエトの工作活動によって、ドイツ内の共産主義者たちが革命を起したからだと信じ込んでいて、ヒットラーは文字通りソビエトや共産主義を「毛嫌い」していた。」

フーバーは会談を通じて、ヒットラーのソビエト嫌い、スターリン嫌いを目のあたりにする。

「ヒットラーの演説、行動、あるいは彼の書いたものを通して、三つの固い信念を見ていた。第一はヴェルサイユ条約でばらばらになったドイツ人を再統一すること。第二はロシア、バルカン半島方面に領土を拡張すること。第三はロシアの共産主義者を根絶やしにすることである。

彼の考えはドイツ国民からも支持されている。ドイツ国民は大戦で敗北して様々な屈辱を味わった。降伏しても港湾封鎖されたままにおかれ、食料難に陥り、多数の餓死者が発生し、その上に国はバラバラにされた。その恨みは大きい」

それが、ヒットラーとドイツ国民への印象だった。


その二週間後の3月22日にフーバーはチェンバレンと会談している。こちらもチェンバレンから会談を申し込まれたもので、明らかにフーバーがヒットラーと会った事への興味が分かる。

会談の様子をフーバーは次のように残している。

「ドイツの顔は東 (ロシア)に向いている。ドイツ民族は陸の民であり、増大する国民を養うために更なる領土拡大と資源を欲している。そして飢えたドイツにはロシアとバルカン半島の地土地が開かれている。ドイツ人は復讐心を強く持っており、ドイツを再統一したいと願っている。

こうした国民性の上に、独裁制、強い軍隊、共産主義を潰すという固い信念が合わさり、ヒットラーと言う不安定な精神性がいつか大爆発するであろう。再びハルマゲドンが起こるかもしれない。それは私の「勘」だ。できれば、ハルマゲドンはロシア領土で起きて欲しいと願っており、決してフランスとドイツの国境地帯で起きて欲しいとは思ってない。

私の情報ではドイツは18か月で準備を整えることであり、その後は何が起きても驚かない」

フーバーとチェンバレンのドイツとヒットラーに対する認識は完全に一致した。


この後、フーバーはチェンバレンを高く評価した感想を残している。

「チェンバレン首相は真に平和を希求する政治家である。誠実で、信念を持ち、まさに、イギリス紳士の気風を備えていた」

二人はヒットラーとスターリンが早晩、壮絶な戦いを繰り広げるだろうと予想していた。

後でも触れるが、これらの会談に前後して、ドイツ軍のオーストリア侵攻が始まった。二人の予想は見事なまでに正確で表され、半年後の「ミュンヘン会談」にも繋がっていく。


鉱山技術者から始まり、鉱山開発で莫大な富を得て、やがてアメリカ大統領にまで上り詰めた人物評には経験に裏打ちされた確かなものがある。彼は莫大な富を築けたのは祖国のおかげであるとも考えていて、祖国への恩返しもあって大統領になっても報酬を受け取らなかった初めての人物だ。ちなみにアメリカ大統領で報酬を受け取らなかったのはジョン=F=ケネディとドナルド・トランプ前大統領ぐらいと言われている。

それだけに私欲を交えずに、冷静に人物評価したことに価値がある。彼の案じているのは世界平和と祖国アメリカの行方だけだった。その彼が、当時世界を動かすことになったヒットラーとチェンバレンを見る目は確かだっただろう。

「ドイツとソ連を戦わせておこう」それがフーバーとチェンバレンの一致した考えだった。

そのまま行けば、イギリスとドイツは争うことにならなかったはずだ。それがどうのようにして再び欧州が戦乱の地となったのかこれから順を追って話していきます。


これらの話は渡辺聡樹氏の「誰が第二次世界大戦を引き起こしたか」に書かれていたものを参考にしました。


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