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邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
二章 地上、到達篇 〜悪意に満ちた異世界へ、込めて〜
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第二十四話 神殺ノ遺跡

ーー神殺ノ遺跡。


深い密林を歩く数人の兵士。

その途中、彼等は奇妙な変死体を発見する。


地に転がる五つの男女の死体。

首を失い、身体が黒紫の痣で染められた気味の悪い姿に一人の兵士が嘔吐する。


「酷いな…これでは、身元すらわかるまい。」


死体は、様々な昆虫や魔物によって無惨に食い荒らされていた。

身元を確かめる為に、荷物を漁ったが既に何者かによって漁られたのか何も残ってなかった。


恐らく例の遺跡攻略に向かう予定だった傭兵が野盗団か他の傭兵の襲撃にあって殺されたのだろう。

この辺じゃよくあることだ。


彼等は知らなかった。

この傭兵達の正体が、かの伝説級の傭兵団だった事を。


気分が悪くなり、ふらふらと歩く兵士を支えながら目的地へ目指す。


「魔物に殺されたあと、他の旅人が死体から盗んだとか?」

「なぁ、もしかしたらついにあの遺跡の魔物が地上へ出てきたとか?」

「もしそうだとしたら俺達じゃどうにもならんな。」

「そりゃそうだ。」


そんな会話を続けならが歩く。

まぁ最も、かの遺跡から魔物が現れたのなら国を揺るがす事態なのだが。

それはあり得ないだろう。

あの結界には女神が直接施した結界と門番が眠っている。


「お、着いたぞ」


神殺ノ遺跡。

見慣れた風景。

廃れた遺跡の石柱。

封印が施された巨大な扉。

 異常なし。

 当然か、と隊長は思った。


「異常なしですね。」


 隊員がそう呟く。



「毎日、変わりませんね。」

「当たり前だ。さ、後はいつもの作業だけだ。」

「了解」


これは四大勇者国が筆頭、ヴィーナス勇王国による直々の仕事。

神殺ノ移籍の定期調査。

アネット小国は非同盟国であれ、こう言った調査には協力している。

強大な戦力を持つ国と敵対するよりは、良好な関係の方が好ましい。

何より、この仕事は実に待遇がいい。

月に一度の仕事で、金払いがいい。

なのに仕事内容は、楽すぎる。

扉に埋め込まれた緑色の宝玉と同じものを背負い袋から取り出した。

魔力が込められた宝玉。

 女神ヴィーナスが手製の魔導具だ。

古くから、長年この調査隊に受け継がれてきた。

 遺跡の右扉に埋め込まれた宝玉にこの宝玉を添える。


すると、無色だった宝玉が遺跡に埋め込まれた宝玉と同じように色が変化する。

一瞬。

宝玉が黒に変化するが、すぐに同じ緑色にひかる。

これだけで、仕事は終わりだ。

他に目立った仕事はなく、本当にこれで終わりなのだ。


この神殺ノ遺跡で何が行われているのかは、知らない。


知らないし、興味はない。

例え、誰がどこへ送り込まれようと関係がない。

そう、関係がない。

自分の人生とは無縁の話だ。

危険に自ら脚を踏み入れる馬鹿なマネはしない。

 変化もまた、望まない。

此処にいる自分を含めた全ての者が、そう思っている。

 この簡単な作業で莫大な給料が入る仕事を、ずっと続けていたい。


「……」


だが、隊長はどうしようもない違和感を感じていた。

色が、一瞬だが黒へ変色した。

この仕事を続けて30年が経つが、こんな事一度たりとも無かった。

嫌な、予感。


「どうしました、隊長?」


 隊長はいつになく真剣な目つきだった。

考え込む様子で、口もとに手をやる。


「ああ、いやなんでもない。異常なし。」

「そうっすね。」


再び、宝玉を添える。


今度は、直ぐに翠。


やはり、気のせいか?


「新しいのと、換えてもらわないとだな。」


 隊長は一拍置いて答えた。


 調査隊は遺跡から立ち去る準備を始める。


「ま、今回の報告書もいつも通り”異常なし”でいいだろ。」

「いやー、実はこの廃棄遺跡を生きて出た人間がいたりしませんかね。」

「ははは! ないない。ありえない…天地がひっくり返ってもな。」


 冗談を笑い飛ばす。

隊長は神殺ノ遺跡の方を振り向いた。


「ここを生きて出た人間の話なんか、過去の記録を調べても一度としてない。

それに、かの邪神龍は遥か深い深淵で厳重に封印されてるって聞いたからな。」


一抹の不安が、頭をよぎる。

神すら殺しうる生存率ゼロの遺跡。

 変化など、あろうはずない。

あってはならない…もし仮に、この遺跡を脱出出来る者がいたのなら…

それは、世界にとって最悪の厄災を齎らす事になる。


この時の彼等の判断が、ヴィーナス達にとっては予想外の事態になるとは思いもしなかった。


それに今更、報告した所で遅い。


既に、厄災は地上へと戻って来たのだから。



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