第九話 入り混じる、思惑
勇者side
《鬼龍院藍那》
あれからまた数日が経った。
現在、私達は女神様の命令で魔物群地帯に訪れている。
魔物群地帯と言っても、此処は王国の領地内で女神様や騎士団の厳正なる管理されている謂わば、少し危険な訓練場らしい。
ただ他と違うのは、此処に居る魔物の殆どが通常種とは異なる変異種。
この世界に蔓延る魔物には二種類の種が存在する。
まずは、この世界中の大陸で一般的にその存在が多い魔物の事を通常種と呼ぶ。
が、稀に変異種と呼ばれる通常種の魔物が大気中に満ちる魔素や人間を多く喰らった事で凄まじい力と知恵を持った危険な魔物の事を指す。
通常種で最弱のゴブリンは基本的に戦闘が得意ではない村人でも容易に対処が可能だが、変異種であるゴブリンはその倍の力を持ち村人では対処する事が不可能となる。
そんな危険な魔物が蔓延る地帯に私達が居る理由は、変異種はその強さ故に倒せば莫大な経験値を得る事が出来る。
つまり、私達はこの危険な地帯で変異種となった魔物を狩り更なるレベルアップをする為に訪れているのだ。
話では聞いていたが、それ以上に魔物の一匹一匹がそれなりに手強い。
最弱とされているゴブリンでさえ、その強さはあのとき私達が戦ったオーガなど赤子のようだと思える程に。
油断すれば、簡単に此方が命を奪われてしまうだろう。
でも、そのおかげもあってか私はレベル50へ到達した。
「《ステータスオープン》」
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アイナ・キリューイン (16)
種族:人族
性別:女
レベル:50
攻撃力:5500〔+α〕
耐久:4500〔+α〕
敏捷:6000〔+α〕
魔力:3280/4000
幸運:1000
固有スキル:【戦乙女】
保有スキル:【身体強化・改】・【気配察知】・【威圧】・【騎乗】・【武術・改】・【思考加速】・【集中】・【鼓舞】
称号;S級勇者
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あの頃とは間違えるほどに強くなった。
これは私や漆原さんの考えなのだが、固有スキルや保有スキルは本人の在り方や素質を表しているのではないかと思っている。
このスキルを見ても確かに、私は幼い頃から母方の関係で武術を習って来た。
と言っても、実戦経験はこの異世界に訪れるまでほぼ無かった。
でも、この考え方は決して間違っているとも言えない。
まるで、この世界での私の使命を指しているような。
それでも構わない。
私は、私達は強くならなければならないのだ。
魔神を倒し、彼を救って。
皆んなで、元の世界へ帰る為に。
「鬼龍院さん。」
そんな事を考えていると、漆原さん達が魔物の討伐を終えて戻って来た。
「何か考え事かしら?こんな危険な場所で立っていると危険よ?」
「うん…ごめんなさい。」
「別に、謝る必要ないよ〜!アイちゃん!悩みがあるんだったら相談してよ!仲間でしょ??」
「そうだよ!」
「うん、ありがとう。」
この世界に来て、この3人とチームを組んだ事によって絆が深まっている感じがする。
初めは、あの女神様がイマイチ信じられないと言う考えの元で集まっていたけど、日が経つに連れて会話も増えて来て…誰も欠けることなく元の世界に帰りたいと言う思いが強くなって来ている。
「ごめんね!少しだけ考え事をしていたの‥でももう大丈夫、レベル上げを再開ーーー「キャァァア!」
すると、奥の方からクラスメイトの美里理恵さんの悲鳴が聞こえて来た。
私は居ても立っても居られず、急いで悲鳴の聞こえた方角に向かって走る。
道中で遭遇した魔物を蹴散らしながら、悲鳴が聞こえた地点に辿り着いた。
其処で見たものは…
「鬼龍院さ、ん…たす、けてぇ…」
巨大な一つ目の巨人に襲われている理恵さんの姿があった。
彼女は片脚を失い涙と涎を垂らし地面を這いずって私達に助けを求めていた。
「ッ!」
気付けば私の身体はすぐに動いて居た。
固有スキル【戦乙女】を発動し、自身の身体能力を数倍に引き上げ、3本の長剣を召喚する。
その内の2本を巨人の大きな目玉に向けて射出する。
「ブゥォォォォツォぉあー!!?」
目玉を潰された巨人は酷い雄叫びを上げて、のたうち回る。
私はその隙に、巨人の間合いに入り込み残ったもう一本の剣を丸太の様な首に向って突き刺し、そのまま斬り裂いた。
巨人は、声にならない悲鳴を上げて絶命した。
「理恵さん!由香里!」
「うん!ーー《中級治療》」
由香里さんのスキルによって理恵さんの欠損した片脚の血は止まったが、応急処置にすぎない。
「2人は理恵さんをお願い出来る?」
「分かった。でも、あまり無理はしないでね。」
「そうだぜ、アイちゃん。」
「うん!」
漆原さんと姫羅技さんに理恵さんの事を頼んだ私は由香里さんと共に他に怪我をしているクラスメイトが居ないかを確かめる為に移動しようとした。
だが…突如、大きな物音と共に由香里さんの背後にもう一体の単眼巨人が出現した。
「由香里さんっ!!?」
「うそ、間に合わーー」
「煌めけーー『輝煌天剣!ーー『輝煌星斬』!」
「降り注ぐ剛腕の流星!ーー『星流拳』!!」
単眼巨人の巨大な腕が由香里の身体を掴もうとした瞬間、一筋の光が巨人の身体を両断し、数十を超える拳型の流星群が巨人の身体に降り注ぐ。
10メートルを超える巨大が地面に勢いよく倒れ、砂埃の煙が辺りに充満する。
砂埃が晴れ、姿を現したのは2人の勇者。
「おいおい!危なかったなぁ!?」
「無事かな二人共。」
浦蟻聖也くんと葛葉末羅くんだった。
良かった、彼等のお陰で由香里さんは無事だった。
「ありがとう2人共。」
「気にしないでくれ、僕達は同じクラスメイトじゃないか。レベル上げは順調かい?」
「さっき、巨人を倒して55に上がった所かな。」
「私は、レベル40だよ!」
「はっ!俺様は65だ。」
「順調そうだね、因みに僕は70を超えたよ。」
もう、そこまで…勇者達の中でも浦蟻くんの成長は他の人達と比べても早い。
固有スキル『勇者』による成長率2倍の補正は、遺憾無く発揮されているのだろう。
私がようやく追い付いたと思ったら、彼は更に先に進んでいる。
そして何よりも、人望が熱く現にクラスメイトの殆どが彼の指示で動いている。
「今日はもう日が落ちるし、王城に帰ろうか。」
「うん、そうだね。でも、怪我人が他に居るかも知れないし…「そんな奴らは、もうとっくに聖也が対処してんだよ。」
「そうなのね…」
「その言い方はないだろ葛葉。全く…とにかく、怪我人は皆んな女神様の元で治療を受けるから安心して欲しい。」
「ありがとう、浦蟻くん。」
やはり、彼は優秀なのだ。
私が動こうとした時、彼はもう行動に移している。
そう言った所は、尊敬せざる得なかった。
「そうだ、あの話…考えてくれたかな?」
「ごめんね?まだ暫くは4人で行動したいと思ってる。」
「おいおい、マジかよ?お前らだけだぜ、あの女に不信感抱いてんの。」
「良いじゃないか、女神様もこれから築いて行きたいと言っていたし。まぁでも、考えが変わったら言って欲しいな。
君達が僕達のグループに入ってくれれば、色んな意味で助かるしね。」
「うん?考えとくよ…それじゃ、私達は戻るから!」
そう言って私と由香里さんはひと足先に王城に向かう事にした。
色んな意味で助かる…あの言葉には、どう言った意図が込められているのだろうか…少なくとも、あまり良いものではないだろう。
彼は隠しているつもりだろうけど、漆原さんの話ではあの2人は普段から女遊びが激しく、黒い事にも手を出してると聞いた事がある。
葛葉くんならともかく、浦蟻くんに限ってそんな事があるのかと思うけれど、この異世界に来てから少しだけど人の闇が分かるようになって来た。
彼は、女神様と同じく少し注意した方が良いかも知れない。
「で、どうすんだ?」
「今は仕方ないさ。彼女達を手にするのは、至難の技だからね。焦ってはいけないよ。でも必ず、彼女達は僕達のモノにしないとね。あのカスも消えてくれた訳だしさ。」
「そうかい。早く手に入れテェぜ!特に、雲母と鬼龍院は色々と美味しそうだからなぁ…あの身体をはやく、ぶち犯してやりたいぜ!」
ーー
「今日も鍛錬、お疲れ様でしたキリューインさん!」
私は王城に帰ると、女神様に呼び出された。
玉座の間には、私と女神様そして側に仕えるレジーナさんの姿があった。
一体、どんな要件なのだろうか。
「ありがとうございます。それで、どう言ったご用件で?」
「そうですねぇ〜、最近はどうですか?順調にレベルを上げられていますか?」
「はい。女神様のサポートもあって私も他の3人もとても順調に成長しています。」
「そうですか!それは何よりです!何か困った事があったら言って下さいね!質問とか!なーんでも!」
「お気遣いは無用です、女神様は私に聞きたい事があって此処に私を呼び出したのでは?」
私のその言葉に、女神様の瞼が少しぴくっと反応した。
が、相変わらず表情は笑顔のままだ。
「そうですね…ウラアリ様から聞いたのですが〜、貴方はあのカス…いえ、追放された元勇者と知り合いだったと聞きまして〜」
なるほど。
おそらく女神様は、私がその件を根に持って離反しないのか問いただすつもりだ。
漆原さんの考えは正しかったようだ…大丈夫、この質問に対する答えは何度も打ち合わせた。
「それが、何か?」
「その件で、貴方が私を恨んで反旗を翻さないかと、思いまして…」
「心配なさらないで下さい。彼はただ知り合いだったと言うだけですから。私が女神様を裏切るなんて有り得ません。」
ごめんなさい、リュー君。
今だけは、こんな酷い事を言う私を許して下さい。
今はまだ、女神様の信頼を失う訳にはいかないの。
「ならよかったです!其処は分かりました!
では、次に…ウラアリ様のグループには入らないのですか?」
「はい。少人数で動いた方が連携も取り易く、レベル上げも効率が良いと判断しましたので。」
「確かに、それもそうですね!要件は以上です♩今後も、頑張って下さいね!」
「はい。」
私は玉座の間を後にする。
何とか乗り切った。
おそらくだけど、女神様は私の言葉をどれくらい信じたのか分からないけれど少なくとも疑いは晴れた筈だ。
やはり、女神様は少し危険な存在だ…浦蟻くん達は完全に信じ切っているけど、どうも私は信用出来ない。
彼女が何を考えているのか分からないけれど、このまま何事もなければ良いのだけれど。
もし、クラスメイトに危険が及ぶなら私は全力を持って守ってみせる。
ーー
「それで〜、どうだと思いますぅ?」
藍那を見送った女神ヴィーナスは自室の巨大な椅子に腰を掛けて、側に控えていた王国騎士団長レジーナにそう問い掛ける。
「彼女の言葉に偽りは有りませんでした。そして、彼女の才能は私から見ても光る物があります。
その素質は…勇者ウラアリ以上かと。」
「貴女がそこまで言うとは驚きです…まぁでも、万が一の場合もありますし〜、今後も監視を宜しくお願いします!
あ、貴女は私を裏切りませんよね?」
ヴィーナスは、微笑みながらレジーナに問い掛ける。
「愚問です。私は何があっても貴女を支える剣ですから。」
「では、いつもの忠誠の儀式をしましょ!!」
「はい。」
レジーナは身に纏った鎧を脱ぎ始める。
ゆっくりと一つ一つの動作に無駄はなく、何の躊躇いも恥じらいもなく鎧を脱ぎ、下に来た下着を脱ぎ捨てる。
そして、彼女は全裸のままで女神ヴィーナスの前に跪く。
「では…はい♩」
ヴィーナスは、上機嫌で自分の脚を開きその内に秘められた局部を顕にし、レジーナの顔に近づける。
レジーナは、失礼致します。と言いながら、ヴィーナスの局部に忠誠と隷属の証として口付けをする。
「足りませんよっ!!」
「ーーんぐっ!」
ヴィーナスは、彼女の頭を両手で掴むと自分の局部に思いっきり押し付ける。
例え、彼女が手足をバタつかせ、悶え苦しそうにしようとも決して離さずに自身の局部を舐めさせる。
「ああっ!!良いですよ!実に、良いです!ですがーー」
「ぷはっ!?ーーゲホッ、ガハッ!!」
30分後にようやく解放されたレジーナは、酸欠で床に倒れ込み、嗚咽し手足を痙攣させている。
女神ヴィーナスは、その姿を見て満足そうに呟くが、神に対する忠誠を確かめるには、その程度では足りなかった。
酸欠で息絶え絶えで、力の抜けたレジーナの髪の毛を掴み自分のベッドに乗せると彼女もその衣服を脱ぎ神体を露わにする。
「今日は貴女が起き上がれなくなる位に突きたい気分ですね〜」
ヴィーナスが指をぱちんと鳴らすと、彼女の露わになった局部に突起物が顔を出す。
そして、歪んだ笑みを浮かべた彼女は抵抗出来ないレジーナの身体を自分の欲望のままに蹂躙する。
数時間が経った頃ーー彼女の部屋に、一人の女兵士がやって来た。
「失礼しまーーっ!?」
女兵士は、目の前の景色に絶句する。
部屋を開けた瞬間に、漂う湿気に独特な甘い匂いや、乱れたベッドにびしょ濡れとなったシーツ。
そして何よりも、満足そうに椅子に腰を掛けるヴィーナスの側にあるベッドで顔を涎や鼻水で汚し白目を向き、倒れる自身の敬愛する騎士団長レジーナの姿に絶句してしまう。
彼女の、股部からは夥しい程の血液と薄い尿と少し色濃い尿が流れ、シーツを染めていた。
「あら?ごめんなさいね!丁度、忠誠の儀が終わった所なのです♩レジーナったら、毎回私が突くとこうなってしまうのよ…初めてを奪った時も、こうだったのよ?これが彼女なりの忠誠心の示し方なのでしょう!」
「ッ…」
「それで、何か用でしょうかー?」
「各国の代表より言伝がありまして…」
「ふむふむ、そうですか〜!では、後で確認しておきますね!」
やれやれ、女神と言うのは本当に忙しいですねぇ…休む暇なんて滅多にないですし。
それにしても、勇者達の成長が順調で何よりですね~、この調子なら本格的に魔神軍の魔族や魔物と戦わせるのもありですね。
ウラアリ様を含めて、ほぼ全ての勇者が私に従順に従ってくれてますし…彼等にはこのまま、上手く踊ってもらいましょう。
勇者と言えば、あのゴミカス野郎は今頃、無様に死んでいるでしょうね。
ま、仮に生き残っていたとしてもあの遺跡には私さえ殺し得る毒を持った怪物が居ますしね。
最も、あのクソ蜥蜴の遺跡に居座る全ての魔物がこの世界では規格外の強さを持っていますし…あの瀕死蜥蜴も今頃は魔物の餌になってるかな。
あとは、あのうざったい魔神のアバズレを殺せれば私はこの世界で唯一の神となる。
そうすれば私は、全てを手に入れる事が出来る…敵は居ない。
居たとしても、圧倒的な力を持った勇者とその末裔に加えて各同盟国の猛者達の全てを相手に回す阿呆は居ないでしょう!
ああ、神生楽しょー!




