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第31話 クラリス...覚醒

 ただ...これだけはクラリスに伝えたい。クラリス、君は...。


「君はすごく綺麗だよ。そしてその清楚で凛とした姿は、本当に素敵だ...。もちろんも内面も。だから...俺は...君を守った。救う価値?俺の手足や命なんかより...価値があるに決まっているだろ!」


 もうダメみたい。でもクラリスに、伝えたいこと伝えられたし。メルと一つになれたし。悪い人生じゃなかったな...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 クラリス視点


 な、何ですか、私が綺麗?救う価値がある女?俺の手足なんかより、そして命より価値がある?うそです!


 あなた様の様に恰好よくて、身を挺して私たちの様なブサイクな者を庇ってくださり、そして悪にも屈しない心の持ち主。あなた様こそ、ナイメール星の女性全員が求めてきた究極の男性。いえ、もうそれは神様のような存在...。


 はっ!


 そういえば先ほど、「一緒に悪あがきをするぞ!」と励まされたあの時、主様を更に信頼し、男らしさと格好良さにメロメロになってから...。私の回復魔法の能力は明らかに上がっています。


 やはり...主様そのものが、私の信仰の対象のお方⁉


 やはり私の主は...主様、智也様です!


「しゅ、主様!死なないで。死なないで下さい、主様!あなたが我が主です!命がけで私を守り、力を与えて下さるあなた様こぞが我が主でしゅ...!私はあなたを心のぞごからおしたい、愛じでおりまず、から!だから、だからじなないで!」


 そう、大声で叫んだ後、クラリスの全身から眩いオーラが溢れ出した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 クラリスの全身は、神々しいオーラによって包まれた。あまりの眩しさに失いかけていた俺の意識も、よび起こされた。


 それにクラリスの様子も先程までとは明らかに違う。全身からとんでもない聖なる力、暖かさを感じさせる。


 俺の脳内に「あなたの奴隷クラリスが、あなたに対する愛情と忠誠心が100%になりました。「エクストラスキル「能力100万倍」の発生条件をクリアいたしました」と、メルの時に聞いた機械音が流れた。


 俺は脳内に流れた機械音をはっきりと聞いた。「ク、クラリス?能力がアップしたのか...なら、メ、メルを...」


 そう、俺は慈悲に満ちた表情で見つめるクラリスに向かって叫んでいた。


「大丈夫ですよ。こんな状況でもまずはメルからなのですね...。我が愛しき主様...。お約束通りメルをまず先に治します。5秒お待ち下さい!メル!復活しなさい!私は愛する主様の治療に向かいます。あなたはあいつらをやっつけなさい!」


 そうクラリスは、メルの胸に莫大な魔力量を流し込んだ後、メルの復活を確認することも無く、俺の治療に移った。メルはもう治ったことが分かっているかの様に...。


 クラリスは俺を自分の豊満な胸の中に抱き入れ「こんなに痛ましいお姿に...」と涙を流しながら「超回復!」と叫んだ。


 すると驚いた事に地面に流れ落ちた血や、タオルに吸収された俺の血液が、自らの意志を持つかのように大気中の一箇所に集まった。


「シュッ!」と音がした後、血液の塊からポロポロと下に何かが落ちた。不純物か?


 その後、血の塊が俺の傷口から体内に戻ってきた。それと共に切り落とされた腕が自然と俺の身体に戻ってくっついた。ま、漫画みたい。


 それに動く⁉いったいどうなっているんだ?


「あ、ありがとうクラリス。本当にありがとう!腕が治ったみたいだよ。君の能力のおかげだよ!」


 豊満なクラリスの胸の間に挟まれたまま、クラリスにお礼を言った。


 俺をきつく抱きしめていた腕を更に強く抱きしめながら、「勿体ないお言葉です。我が主様。他に痛いところなどはございませんか?なければこのまましばらくお待ち下さい。すぐに終わらせるでしょう...メルによって...」


 そう静かで慈愛に満ちた表情を俺に浮かべた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「な、なんて恐ろしい回復魔法使いなんだい。ポーションなんてもうどうでもいい!早くあいつをやっつけな!」


 俺の腕が回復するのを見ていたミルミルは、クラリスに視線を送りつつ、周囲にいる部下たちに声をかけた。


 しかし...。


「早くやっつけろって!」


 辺りからの返事はない。動く気配もない。気配と言えば...。


 風や木立や虫の鳴き声以外は何も聞こえない。戦闘の場とは思えないほど、静寂が辺りを包んでいた。


 ミルミルの部下たちが動く音などはとっくに消えていた。なぜならもう...メルによってあの世に旅立ってしまったのだから...。


 クラリスの魔法によってメルは完全に復活した。


 ドラリル一味の残党は、復活したメルによって一瞬で全滅させられた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 その事実にやっと気が付いたミルミルは、恐怖に震えながら辺りを見渡すと、至る所で仲間たちが倒れているのをやっとこ見つけ出した。唯一、ランとだけ目が合った。もう二度と瞬きもできないランは、ミルミルをじっと見つめている。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 あまりにも簡単に始末された部下たちを見て、ミルミルは腰が抜けて、その場で動けなくなってしまった。


「ひいい。化け物たちめ。なんて強さなんだい。ど、どうだい⁉私たち、いや私と闇組織を牛耳らないかい?人数じゃねぇ、実力が備わった者さえそろえば怖いものなしだよ!」


 こいつは...アホなのだろうか?何でわざわざお前と、悪事を働かなきゃならないんだ?


 俺はクラリスにぎゅっと抱き寄せられたまま、「お前のせいで俺もメルも、そしてクラリスも死にそうになったんだぞ?お前を信用するわけないだろ?」


 そうミルミルに告げた。


「もうメル、ミルミルを仲間の所に送ってあげて。一人じゃ寂しいだろうし」


 俺の声に反応したメルが、「はい、ご主人様」と、しっかりとした口調で返事をすると、そのままミルミルの方に視線を送った。


「ひぃ~、ま、待ってくれ!うちの一味の財宝を全部くれてやるから!そ、それにあんたなら絶対気に入るだろう生物がうちに捕まえてある!このままだと餌もやれなくて死んじまう!可哀そうだと思わないかい?」


 確かに可愛そうだな。


「もったいぶりますね。ゴブリンだったらどうするつもりですか?あなたの皮膚という皮膚を、生きたまま剥がしますよ」


 静かにクラリスが言い放った。冷静な顔立ちと感情の無い言葉。非常に怖い...。


「ひぃ~!ちがうちがう!希少中の希少動物、まだ小さなフェンリルだよ!」


「「フェ、フェンリル?」」


 何でそんなファンタジー界の大物様が、ミルミルの手元に囚われているんだ?

 コメントです。


 第二章が終了しました。次回から第三章に移行します。ゆっくりと執筆を続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。


 もしよろしければ、ブックマーク登録や評価をしていただけると大変励みになります。それでは、またお会いしましょう。




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