第26話 いいいいいいいいい...い、一緒にお風呂に⁉
クラリスが仲間に加わった。RPGのゲームみたい。
「クラリス。とにかく何か着てくれ。目のやり場に困る。ビッグハム、あんな薄汚れた外套ではなく、新品で全身が隠れる服を持って来てくれ。あと下着など、この奴隷商会には無いのか?」
そう、ビッグハムに俺が聞くと、「すぐにご用意いたします!」と、部屋から慌てて飛び出して行った。
俺の元に近づいてきたクラリスは「信じられない...。私の裸を見ても不快な表情をなさらない...。本当に私の事を受け入れられるお方なのですね」と、真剣な表情で俺を見つめた。
裸だったのを自覚しているのね。逆にこっちの方が気になるから、何かを纏ってくれると嬉しい。
「お姉様!早速ですが、ご主人様からのプレゼントです!ですが...せっかくのご主人様らのプレゼントです。ご主人様のお家でお風呂で身を清めてから、着替えられたらいかがでしょうか?それまでは、先ほどライメイ様がお渡しになった古着の外套で我慢された方がよろしいかと...」
そう言いながら、メルはクラリスに俺の伸びきったフード付きウィンドブレーカーを渡した。
「メ、メル、も、もしかしてそれは主様のお古ですか!」と言って、クラリスは俺のお古のウィンドブレーカーを、わなわなと震える手で握りしめた。
「そうです!」とメルはにっこりと笑った。
「す、すごい。こんな素敵なお方のお古が着られるなんて、貧相な体型冥利につきますね...。それと、お風呂って何ですか?沐浴の事ですか?暖かいお湯で体を清めるという...。ま、ま、まさか、あれですか?」
首に重そうな首輪をつけたまま、クラリスは裸で後ずさりをし、恐怖に声を震わせてメルに確認を求めた。
「それです!すごく暖かくて気持ちが良かったです!それに、ゴニョゴニョゴニョ...」と、メルはクラリスの耳元で何かを囁いた。
「いいいいいいいいい...い、一緒にお風呂に⁉」
クラリスが俺を見つめるその瞳は、信じがたい生命体に出会ったかのようだ。何だろう?彼女の表情は、まるで哀れな子供を見るかのようである。
すっぽんぽんで、首には重々しい首輪が身につけられている人に...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ビッグハムが新しい外套や下着を持ってくる間、クラリスには、綺麗に洗濯されたものを羽織ってもらった。
裸のままでいられると、俺の視線がクラリスの豊かな胸やくびれ、お尻を無意識でとらえて、話が先にすすめられそうにない。
そんな煩悩100%の俺とは対照的に、クラリスは床にひざまずき、俺に祈りを捧げるような姿勢をとった。2つの大きな瞳で、俺を見つめている。
「主様。私の身を買って下さり、ありがとうございました。回復魔法を望まれるなら、いくらでもおかけします。限界が来たら、多少口から血が流れ出るぐらいです。お任せ下さい」とクラリスは、俺の目を見つめて真剣な表情で伝えてきた。
口から血が流れるぐらいって。OUTです。「あと...」クラリスはまだ話の続きがある様だ。
「あと、あり得ないとは思いますが、性欲のはけ口になさるのならどうぞお好きにして下さい。この様な外見をしているため、経験は勿論ございません。教えて下されば、ご主人様が望むことを学習し、ご満足が行くまでご奉仕させて頂きます」
真剣な表情をして、決意を持った瞳で訴えてきた。奴隷の教育がなされているというか...大分引いてしまう。
「あ、ありがとう。気持ちは十分に受け取った。クラリスもメルと一緒で魅力的だ。でも無理にその、関係を迫ることはしないからね。そ、それより、その重そうな首輪を何とかしよう」
クラリスが俺の為に、学習宣言をしてくれたことに対して、無下にも出来なかったため、話題を首輪のことに移した。
「ま、まさか私にも高価な首輪を与えて下さるのですか⁉メ、メル、なんてお人なんでしょうか!私たちみたいなものが、こんな素敵な方にお古を頂いて、首輪を特注品に変えて頂けるなんて...。贅沢すぎます!」
そう凄く不安そうな表情で、メルと俺を見返す。ビッグハムはまだだろうか?神秘的なプロポーションの女性が重そうな首輪を嵌め怯えている。
すると前回同様、廊下の奥の方からドス!ドス!ドス!と、特別室に近づいてくる足音が聞こえた。




