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第24話 ライメイ奴隷商会一の美女

「奴隷を一人、くれると言っていたので貰いに来た」


 そうビッグハムに伝えた。ビッグハムは門番から俺が来たと聞き、慌てて出迎えに来たようだ。


 するとビッグハムは、「はぁーはぁー、も、もちろんです。発した言葉に二言はありません。どうぞこちらに、はぁーはぁー」と、息を切らした肩を震わせながら、俺たちを特別室へと案内した。


 ビックハムは俺に対しソファーに座るように促し、俺の前に高級そうなカップを差し出した。メルは当たり前のように俺の後ろで立っている。


「メル。俺の横に座るんだ。誰が立っていなさいと言った⁉」


 メルはびくっとして「は、はい...ご主人様。で、で、でも...」


「大切なメルが粗末な扱いをさせられているのが耐えられない。ビッグハム、いいだう?それとも駄目なのかい?」


 そう、ビッグハムをちらりと見ると、ビッグハムが震え出した。この国は男性重視、更には外見至上主義だ。特に外見の良い男性の所有する奴隷を傷つければ、それ相応の罰を受ける羽目になる。


「す、すみませんでした。す、すぐに飲み物もお持ちします。メ、メル様、ど、どうぞお座り下さい!」


 ビッグハムは、今までのことを忘れたかの様に、手のひら返しでメルの前で土下座をした。


 まあ、そこまでして欲しくはない。ビッグハムが土下座をしたことにより、のボンテージの隙間から、見えて欲しく無いものが俺の目に飛び込んでくる。


 ウ、ウゲェ~...。


 本当に勘弁してくれ...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 メルを隣に座らせ頭を優しく撫でた。そんな俺に対しメルは「本当にありがとうございます、ご主人様♡私の為にライメイ様をお叱りになって下さって...。本当にご主人様は、メルに甘すぎるのです♡」と言って、目をキラキラと輝かせて俺を見つめる。


 テーブルの上には、山のような高級そうなお菓子が積まれている。ここまでしなくてもいいのだが...。まあ、1つ2つは後で頂こうかな。それよりもクラリスだ。今回はクラリスを迎えに来たんだ。


「ど、奴隷達を見に行かれますか?それともこのお店で一番、高価な者をご用意いたしましょうか?」


 高価な者って...恐ろしい人物が登場するってことじゃないか?


 俺が迷っていると勘違いしたのか、ビッグハムはこの奴隷商会一の美女について、説明を始めた。


「それはそれは、美しい者です!非常にふくよかでくびれなど皆無!もうそれは天然の肉のコートを着こんでいるかのよう。抱かれ心地は、肉の底なし沼にはまった感じがするでしょう。そして顔は...」


 ビッグハムは営業トークを始めた。()()()()()()って...。死んじゃうじゃん...。


「分かったもういい。もらいたい奴隷は、もう決まっている。クラリスを呼んでくれ。クラリスだ」


「へっ⁉」


「今、何と...おっしゃいましたか?」


 ビッグハムは、凄く呆気にとられた顔をしている。何でそんな奴隷をわざわざ...と言う表情だ。


「ビッグハム、クラリスだ!もう言わないよ」


「ひ、分かりました!」


 ビッグハムは急いで、クラリスを自分から呼びに行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 その間にメルは、「ご、ご主人様。ほ、本当によろしいのでしょうか?一番人気のトンソックーが、無料で手に入るんですよ!ナイメール星一の美女と言っても過言ではありません。私たちとは違い、くびれなどない完璧なプロポーションですし!」


 うんざりとする表情で、メルに向かって「トンソックーなんて、いらない」と呟いてしまった。維持費に幾らかかるんだよ。「それに俺は、メルとクラリスがいい」と、心からの声をメルに伝えた。


「ご、ご主人様♡そんなストレートに言われると,,,理性が崩壊してしまいます♡もうご主人様。本当に...大好きです♡」


 更にメルは俺の胸に深く顔をうずめてきた。メルの呼吸がさらに激しくなってきた。早くクラリスを引き取って戻らないと。また、メルの理性が暴走しそうだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 待つこと20分。廊下の奥の方からドス!ドス!ドス!と、特別室に近づいてくる音が聞こえた。


 ドアが開くと、汗だくのビッグハムが「ぜぇーぜぇー。大変遅くなりました」と息を切らしている。相当急いだのだろう。至る所から汗が流れ落ちる。そんなに急ぐと、膝を壊すぞ...。


 更に今までは気が付かなかったが、後ろにもう一人いるようだ。


 全身を外套で包んだ人物、クラリスと思しき者が、俺の前で呆然と立っている。クラリスの表情はフードで隠されて見えないが、「なぜ私がここに呼ばれたのか?」という思いが、彼女の態度から明らかに感じられる。


「わ、私に何か御用でしょうか...。そう怯えるように全身を、外套で隠しているクラリスが俺に聞いてきた。多分、目の前にいるメルにも気が付いていないだろう。


 凄く怯えている。でも、その声はすごく透き通り美しく、安らぎを与えてくれる。はやく全身を拝めたい。


 そう思っていると、「何をしているんだい、クラリス!奴隷の作法を忘れちまったのかい!お客様が目の前に現れたら、外套を取って全身をさらけ出すんだよ!」と、ビッグハムはぜぇーぜぇー、はぁーはぁーと言いながら、すごい剣幕でクラリスに言い放った。


「でも、私が外套を脱いだら、みなさんの気分が悪くなるんじゃ...」と、ビッグハムに怯えながら聞き返す。


「そんなことは分かっているよ!今回のお客様はお前を希望してるんだ!早く外套をお取り!」と、ビッグハムはクラリスを怒鳴りつけた。


「は、はい!」


 不安いっぱいの震える声で、クラリスはビッグハムに返事をした。少しでも外套を羽織っていたいかのように、ゆっくり、ゆっくりと、その全身を覆っている外套を脱ぎ始めた。


 パサリ!


 クラリスを覆っていたフードが...床に落ちた。

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