第21話 クラリスお姉様、待っていて下さいね!!
メルは、自分の傷を黙って癒してくれるクラリスに対して、「本当に、もうクラリスお姉様、傷の手当ては結構です。お姉様のように、私は世の中の役に立つ人間ではありません。もうすぐ私は鉱山に送られ、死ぬ運命ですから」と言ったことがある。
村人や他の奴隷たちから蔑まれる存在であるメルは、クラリスに自分の苦しい心情を打ち明けた。そんなメルに対しクラリスはいつも励ましの言葉をかけ、「メル、決して諦めてはいけません。希望を持ち続けなさい」と言いながら、回復魔法を施してくれた。
「でも、希望を持てと言われても、顔が醜く、プロポーションも悪い私はどうやって希望を持てばいいのですか?」とメルはクラリスに問いかけたことがある。その時、クラリスは次のように答えたそうだ。
「嫌味なく言えるのは、同じ境遇である私だけでしょうね、メル。外見は神様が与えて下さったもの。私はそれを受け入れます。でもメル、内面は自分で変えることが出来ます。いつも美しくあり続けなさい。あなたの心は本当に純粋で美しいのですから」
メルは天井を見上げながら、その時のことを思い出しているようであった。
「そうです、クラリスお姉様が私にそう教えて下さいました。ご主人様に拾われるまで、私はその言葉を支えにして生きてきたのです!少なくとも心だけは清らかでいようと...。クラリスお姉様にお会いしなければ、私の心は...もうとっくの昔に滅んでいたでしょう」
メルは天上から俺に視線を移した。目には涙が溜まっていた。クラリスの言葉を思い出して、涙が溢れてきたのだろう。「しかし...クラリスはすごいな。自分の境遇を受け入れ、メルの身体だけでなく心まで癒やすなんて...。それは、並大抵なことではないよ」とメルに告げた。
ますます俺は、クラリスに興味が湧いた。
メルは「はい!クラリスお姉様からは返せないほどの恩を受けています!とても素晴らしく、優しい方です。ですが…」と言いながら、表情を曇らせた。
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「先ほども申し上げた通り、残念ながら私と同類です。プロポーションと外見がとても酷いのです。唯一の救いは髪の毛で、長くてサラサラ、太陽の光を浴びると黒髪が一層黒く輝きます」
おお!異世界で黒髪の回復系女性なんて、まるで聖女様みたいだ。もう清楚系の聖女様が俺の頭の中で祈りを捧げている。勝手な想像だけどね...。
「ですが...それ以外は私と同じです...。クラリスお姉様の目は二重で、非常に大きな瞳をしており、まつ毛は繊細でボリュームがあります。鼻筋は表情の調和を整えており、唇は小さく仰月型でお月様をひっくり返したような形をしています」
うーん...本当にメルはわざと言っているんじゃないんだよな...。ナイメールでは本当に残念なことなんだよな?
「プロポーションも寸胴型になることが出来ずに曲線を持ち、私と同じくらい豊満な胸をしております。いえ、私よりもひどいかもしれません...。そしてウエストも細いのにヒップは果実の様な豊かさを持っています...」
メルはクラリスの外見を俺に語った後、深く哀れみ深い表情をして空を見上げた。まるで、「どうして神様はお姉様を寸胴で一重まぶた、たらこ唇にしなかったのでしょうか」と、問いかけているかのように感じられた。
だが...。
清楚で、お淑やかで外見もメル同様にメリハリボディ。絶対に俺のドストライクじゃないか!でも...逆に俺みたいのがご主人様で嫌じゃないのか?今度は俺が自信喪失になる。
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メル視点
ご主人様は、そんな美しくて清楚なクラリスが、俺なんかに仕えてくれるだろうかと心配している。俺なんて背が低くて手足が短い。寸胴で小太り。目は一重で団子鼻。こんな俺の事なんて絶対に嫌がるだろうと、不安そうな表情をなされている。
何をおっしゃっているのでしょうか?ナイメール星でそんなことを言ったら、嫉妬されて殺されますよよ!ご主人様、今おっしゃった言葉全部が自慢ですよ!ナイメール星の女性たちは、そのような顔立ちとプロポーションを持つ男性を好むんです!
何度行ったらお分かり頂けるのでしょうか?ご主人様のお顔がとても格好いいのです!本当に魅力的なプロポーションをなさっております!傍に居るだけで興奮してしまい、ムラムラしてしまうのですから...。
私が何度言っても、ほ、本当なのか?と怯えて私を見つめる。いつも私に「メルはこの地球では本当に美人なんだから!」と言ってくる言葉を、そのままお返し致します!!
本当にご主人様は格好いいのです!あと、ナイメールメール星の男性は、男性と言うだけで選ばれた者という感じを出し、ちっとも優しくない。強くもない。ましてや女性に守られて当然。みんながそう思っています。
ご主人様だけです!命がけで女性を守ろうと悪党に挑んでいく者は!自信を持って下さい!ご主人様が世界で一番素敵です!絶対にクラリスお姉様も惚れるでしょう。間違いありません!
クラリスお姉様ならご主人様を独り占めにすることは無いしょう。私と一緒にご主人様を愛して下さると思います。そして、クラリスお姉様にはこれまで何度も救われてきました。今、助けに向かいますので、もうしばらくお待ち下さいね。クラリスお姉様!




