第12話 一緒にお風呂...入らない?
メルの逆プロポーズはまだ続くようだ。
「これからもご主人様は、襲われる可能性が高いと思います。でも、今度は私がしっかりとご主人様をお守り致します。二度とご主人様に手を出させる様な真似はさせません!私がご主人様をお守りします!ですから、ずっとお傍において下さい!」
メルの情熱的な言葉に圧倒されながらも、「ありがとう。メル、ずっとそばにいてほしい」と、俺の本心を伝えた。
何だかプロポーズを受けて、返したみたいで恥ずかしい。
「は、はい...もちろんです♡」と頬を赤くして、もじもじしている。照れているメルも可愛い。何をやってもメルは可愛いな。
しかし、メルに見惚れていたその時、信じられないほどの悪臭が自分から発せられていることに気づき、現実に引き戻された。
「メ、メル...」と俺が話しかけると同時にメルからも「ご、ご主人様、その...もう一つ...」と重なるように言葉を発した。メルは遠慮しているのか、話しにくいのか、頬を赤くして「後でいいです!」と言ったため、俺は自分の用事を先に伝えることにした。
「メ、メルごめん。俺ゲロまみれだし、その...大も小も漏らしてしまったから着替えたい。その...家に帰ろうと思うんだ。メルも付いて来てくれるかい?」
返事を伺う様にメルに聞いてみた。
「も、もちろんです!私はご主人様のもち物です。ですからいつも、ご主人様と一緒です!ご主人様が私の事を捨てない限り、私はどんなことをされてもご主人様に付いて行きます!でも...本当に私の事、き、気持ち悪くないのですか?」
逆にメルが、怯えるように聞いてきた。
「ほ、本当だよメル。さっきから何度も言っているだろう?あれが俺の本心だよ。心配しないで、一緒に僕の家へ行こう。さあ、準備をしよう」と僕がメルに伝えると、メルは何かを思い出したように、急に目を輝かせて言った。
「はい!そうだ!ご主人様。すぐに戻りますので、少々お待ちください!」
そう言ってメルは、信じられない速さで村の方へと走り去り、3分ほどで同じくらいの速さで戻ってきた。
息を切らして帰ってきたメルに、「どうしたのメル?忘れ物?」と尋ねると、メルは「ご主人様からいただいたタオルを落としてしまって、それを拾いに行っていたんです。ついでに悪党たちのお金や武器も持ち帰ってきました!」と言い、俺が渡したタオルを大事そうに抱えながら、にこやかに笑った。
「それとご主人様!何とあの者たち、マジックポーチを持っていました!それもポーションの効果を下げない様にするためか、時間停止機能付きのマジックポーチですよ!容量も(大)ですから、沢山の物が入りますよ!」
「はい、ご主人様!」とメルは笑顔で応えながら、それを俺に手渡した。
しっかりしている。まあ殺されかけたし、貰っておこうか。
ただ、あいつらをやっつけたのはメルだし、自分で持っていればいいのに、そう思ったが、今はとにかく身体を綺麗にしたい。
「じゃあ帰ろうか」とメルに声をかけ、二人で俺の住むマンションへと向かうことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は洞窟の奥にある扉を開け、自分の住んでいる部屋にメルを招いた。でも初めて女性を自分の部屋に向かい入れたけど、ワクワク感はゼロだ。
俺もメルもボロボロの服に、返り血や自分の血がこびりついている。更に俺は、自分の小便や大便付き。
強烈な匂いがする。着ていた服をビニール袋に入れて、今度ナイメール星に持って行って埋めちゃおうかな。
「ここがご主人様のおうち...ですか?」
メルは僕と違ってドキドキしているのか、辺りをきょろきょろと見まわしている。
「凄い...見たことも無い物ばかり!そしてすごく明るい!近くに太陽があるみたい!」
「ごめんね。狭くて」とメルに謝った。
「いえ。私が暮らしていた奴隷商会の部屋に比べればすごく広いです!!それも、全然見たことのない空間です!すごく明るい部屋です!そして雰囲気がとても素敵です!」
メルは周囲をきょろきょろと見回しながらも、どこか楽しげだった。しかし、俺にはそんな余裕はない。まずは、自分の汚れた服を風呂場で脱ぎ、ビニール袋に詰め込んだ。
「メルも先にお風呂に入って着替えて。申し訳ないけど、今日は俺の服を貸すから我慢して。パンツやブラジャーは明日買うからね」
「お、お風呂何て!ご主人様だけお使い下さい!奴隷にお風呂など不要です。お風呂何て...一部の貴族様しか入れません。私はご主人様の奴隷です!」
すごく気迫のこもった、恐ろしい表情で否定をしてきた。
「それにブラジャー?何ですか?そんな物は身に着けたことはございません。私に洋服など不要です。あとで樹皮でも剥がしてきます。そのついでに川で体を洗ってきます。心配ご無用です!」
地球では人間離れした美しさを誇るメルが、川で水浴びをした後に、木の樹皮を裸ではがし始めたらすごい騒ぎになる。
「ダメだよ、メル!そんなことしたらダメだよ!」と俺が困った顔で言うと、メルは悲しそうに「そうですね。私が裸になったら、みんなが嫌がるし、ご主人様も嫌でしょうね」と小さく悲しそうな声で呟いた。
「そうじゃない。そうじゃないんだよメル。メルは本当に美しいんだよ!」
メルはそんな言葉、信じられませんみたいな表情で俺を見て来る。ちゃんと説明をしたいけど、早くシャワーも浴びたい。この汚くて臭い体を洗い流したい。
それならいっそ...。
「メ、メル。その、そうしたらメル!一緒にお風呂に入らないか?」




