17 そして、最強の英雄伝説へ
魔神との戦いから二週間が経った。
俺は今、新たな戦場にいる。
ガイアス帝国によって奪われた、ミランシア領土の砦の前である。
「さあ、始めるか」
眼前には数千のガイアス帝国軍が陣取っていた。
対するミランシアの戦力は、俺一人。
背後には十二番隊の部下たちを控えさせているが、俺が合図するまでは手を出さないように命令している。
「まずは、俺一人で行く」
念を押すために、背後の部下たち──ジィドさんやウェンディたちに告げると、俺は単騎で馬を進めた。
「たった一騎で突っ込んでくるだと!」
「舐めるなよ!」
ガイアスの陣地から無数の矢が飛んできた。
まさしく雨のように降り注ぐそれらを、
「【インパルスブレード】!」
俺は衝撃波ですべて薙ぎ払う。
そして、さらに加速。
押し寄せる矢の第二波、第三波も馬上から剣で斬り払い、あるいはスキルで吹き飛ばす。
レベル300を超える俺の目には、数千数万の矢といえど、その軌道がすべて見えていた。
そして、難なく反応することができた。
「おじさん、もうすぐ敵陣だよ」
すぐそばでメルがささやく。
彼女は俺の背に乗っていた。
戦場には不釣り合いな、さながら恋人同士のような二人乗りだ。
「実体化して出てきたのか、メル。戦場にいても大丈夫か?」
「あたしの体は普通の剣では傷つけられないから。平気だよ」
微笑むメル。
「いくらおじさんが強くなったっていっても、これだけの数を相手に単騎駆けはさすがに心配だから……」
「危なくなったら逃げるさ」
俺は小さく肩をすくめた。
確かに無謀にもほどがあるかもしれない。
だけど、不思議な確信があった。
もはや普通の人間の騎士や兵士が相手なら──。
たとえ数千数万の軍勢といえど、俺は負けない。
それほどの戦闘レベルにたどり着いたのだ、と。
「つ、強い……強すぎる……」
「たった一人で一軍を……ぐうっ……」
俺が振るった剣に、スキルに、ガイアスの騎士や兵士たちが倒れていく。
レベル341の戦闘能力は、我ながら圧巻の一言だった。
戦闘能力がすさまじいまでに上昇している。
すでに敵軍の3割ほどは減らしただろうか。
それでもまだ千単位の敵が残っている。
「ここらで一網打尽といくか。メル、準備を」
「あれを使うんだね、おじさん」
「ああ──薙ぎ払う」
だが、城を壊してしまうのはまずい。
奪い返した後は、ここはミランシアの防衛拠点の一つになるんだからな。
俺は馬首を返し、スキルの攻撃射程上に城が入らないような位置へと移動した。
手にした剣を鞘にしまい、右手を天に向かって掲げる。
虚空から銀色の大剣が現れた。
ランク7スキル【破軍竜滅斬】専用の武器である。
「増幅紋章配置」
俺の前方で五つの光が弾けた。
どうやら紋章はレベル50上昇ごとに1つ増えるようだ。
レベル341の俺の前には五つの紋章が浮かんでいた。
「紋章の正常動作を確認……いけるよ、おじさん」
と、メル。
「【破軍竜滅斬】──斬撃波放出!」
俺は銀色の大剣を振り下ろした。
ほとばしった斬撃衝撃波は五つの紋章を通過し、威力の倍増を五度繰り返し、突き進む。
悲鳴は、なかった。
一瞬にして【破軍竜滅斬】の斬撃衝撃波が数千の敵を飲みこみ、跡形もなく消し飛ばす。
完全勝利だ。
「あっけないが……これで砦を奪還できそうだな。後は砦内の残存兵を倒すとするか」
俺は砦に向かって馬を駆けさせた。
思った通りの──いや、思った以上の戦果である。
この力で俺は今後も戦場を駆け抜けていこう。
帝国軍を蹴散らし、蹴散らし、蹴散らし、蹴散らし、蹴散らして。
この国の人々を守ってみせる──。
次回から第9章になります。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
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