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第8章 魔神決戦

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3 魔神2

「おおおおおおおおおおおおっ!」


 剛力ですべてを薙ぎ払う剣技──【パワーブレード】で、俺はヅェルセイルを吹き飛ばした。


「ちいっ」


 舌打ちしながら、魔神は空中で回転して着地する。


「この俺がパワー負けするとは」

「人間を、舐めるなよ……!」


 俺は剣を手に叫んだ。


 今度は俺が攻勢をかける番だ。

 全速力で距離を詰め、連撃を見舞う。


「ほう、パワーだけでなくスピードも……」


 ヅェルセイルは感心したような顔で言いながら後退した。


「確かに、人間の中にも猛者がいるようだ。少しだけ認識をあらためてやろう」


 ヅェルセイルが笑った。


「ここからは、俺も──本気を出させてもらおうか」

「今までは本気じゃなかったっていうのか?」

「当然だろう。お前は確かに例外的な猛者かもしれない。それでも『たかが人間』だ」


 肩をすくめるヅェルセイル。


「そんな人間ごときに、なぜ俺が本気を出さねばならない? こいつは屈辱だ──」


 ヅェルセイルが大きく息を吐きだした。

 秀麗な顔から笑みが消える。

 額に浮かぶ青筋は怒りの証か。


 魔神の全身から漆黒のオーラが立ち昇った。


「くおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 雄たけびが、響く。


 そして──。

 その姿が一変した。


 四肢が太くなり、胸元や腰回りには鎧状のパーツが装着されている。

 そして顔を覆う、禍々しいデザインの仮面。


「くくく、これが戦闘形態の魔神だ。ちなみにレベルに換算すると──」


 告げた瞬間、ヅェルセイルの姿が消えた。


「280ほどだな」


 な、何──!?

 俺のレベルより、さらに60も上──。


 ゾッとなりつつ、俺はとっさにその場を飛び退く。


 ほぼ同時に、


 ごうんっ!


 一瞬前まで俺が立っていた場所が爆裂して吹き飛んだ。


「──避けたか。やるな」


 すぐそばでヅェルセイルの声がした。

 すさまじい速度で俺の間合いに侵入してくる。

「【インパルスブレード】!」


 俺はとっさに剣を旋回させて衝撃波を放った。


「はっ、そんなもんかよ!」


 が、ヅェルセイルはそれを素手で払いのけてみせる。


「こいつっ……!」


 やはりレベル280は伊達じゃない。

 素の身体能力では、こいつのスピードにはついていけない。


 ならば──。


「【ソニックムーブ】!」


 俺は音速機動で奴の側面に回りこんだ。


「【パワーブレード】!」


 その勢いのまま、渾身の一撃を叩きこむ。


「ふん」


 ヅェルセイルはやすやすと爪剣で受け止めてみせた。


 ビクともしない。

 さっきは力ずくで押しこめたっていうのに。


 やはり戦闘形態になって、奴の身体能力は格段に上がっている。


 スピードも、パワーも。


「どうした、ええ? そんな程度か、おっさん!」


 吠えて反撃の爪剣を繰り出すヅェルセイル。


「【ソードラッシュ】!」


 俺は連撃スキルでそれをしのぎつつ、大きくバックステップして距離を取った。


 強い──。

 今までに戦った、どんな相手よりも。


「驚いた顔だな。確かにお前は、人間としては驚異的なレベルだよ。見たところ200は超えているだろうは」


 と、ヅェルセイル。


「だが、俺のレベルには届いていないな。残念ながら、どうあがいてもお前じゃ俺に勝てねぇよ」


 確かに、レベル数値は戦闘において大きな基準だ。

 さすがに正面からぶつかっても勝ち目が薄いだろう。


 だが、そんな相手に逆転勝利を収める手立てを、俺は一つだけ持っている。


「なんとか奴にランク7スキルを食らわせるしかない……!」


 人間に許された限界であるランク6を超えた、ランク7スキル。

 神の領域ともいえるその技を、俺は一つだけ会得している。


【破軍竜滅斬】。


 これなら、相手が魔神といえども通用するはず。

 レベル400の竜神すらも打ち破った技だからな。


 問題は、命中させられるかどうかだ──。

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