5 ルークと聖剣2
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
怒号が、周囲に響き渡る。
ルークそっくりの少年少女たち──レグルシリーズが剣を手に、互いに斬り結ぶ。
「ぐあっ!」
「ぎゃぁっ!」
「ううっ……がはっ!」
たちまち血しぶきが飛び、頭や手足が切り落とされ、凄惨な戦場が現出する。
ルークの元にも何体かのレグルシリーズが襲い掛かってきた。
自分と同じ顔立ちの兵士たち。
ルークの細胞をもとに、魔道改造を受けて生み出された兵士たちだ。
そして、おそらくは魔神の細胞も混ぜられているのだろう。
ルーク自身がそうであるように。
「くっ……」
ルークは剣を手に、己の分身ともいうべき兵士たちを次々に斬り伏せていく。
「へえ、さすがはオリジナルね。やはり分身よりも強いのかしら」
女主任がこちらを見た。
ルークの方は答える余裕もない。
とにかく生き残ることが先決だ。
ひたすらに剣を振り、兵士たちを殺し続ける。
斬って、殺し。
斬って、殺し。
殺すたびに、体中に力がみなぎるのを感じた。
「あなたに組み込んだ『経験値倍増機構』──正常に作動しているようね。どんどんと戦闘能力が上昇している……」
女主任が満足げに言った。
ルークはさらに剣を振るう。
すでに他の兵士たちとは、明らかに実力差が生じてきていた。
この短時間でルークだけが成長しているのだ。
気が付けば、残りは五体。
少年が一人、少女が四人。
「ひいいい……」
「悪魔め……」
いずれもが恐怖の顔つきだった。
自分の体を見下ろすと、いつの間にか全身が返り血で真っ赤になっていた。
「なるほど、あんたたちには俺が悪魔に見えるか」
ルークがつぶやく。
違いない。
俺は、悪魔だ。
それでもなお、剣を振るう。
いっさいの感情を押し殺して。
敵を倒す、滅ぼす。
自分はそのために生み出されたのだから。
敵を倒す、滅ぼす。
ここから生きて出るために。
「いいわよ。どれだけ斬っても表情すら変えない。心を乱さない。兵器として理想的よ」
女主任が拍手を送る。
心を乱さない?
──違う。
ルークの剣が一瞬、鈍る。
俺だって、心は痛んでいる。
「だけど仕方がないじゃないか……」
敵は殺す。
殺さなきゃ、殺される。
殺さなきゃ、大切な者を守れない。
「だから──剣を振り続けるんだ!」
『本当に、そうか?』
気が付けば、すぐそばに老人の姿があった。
「オーディン……!」
笑っている。
心の底を見透かされているような笑顔だった。
『仲間を守る? 本当にそれが君の闘志の出どころか? 本当は、己の力に溺れ、強大な力を振るう喜びや優越に浸っているだけではないか?』
「それは……」
心が、揺らぐ。
確かに、そうかもしれない。
自分はしょせん兵器でしかない。
他人を守る、などというのは、その事実から目を背けるための綺麗ごとに過ぎないのかもしれない。
(なら、俺の本質はやっぱり──)
──お前は、俺たちの仲間だ。
脳裏に、力強い言葉が響いた。
思い出す。
以前の戦いで、そう言ってくれた騎士がいたことを。
体を張って、ルークを止めてくれた騎士がいたことを。
彼の言葉が、ルークに力を与えてくれたことを。
「……そうでしたね、マリウス隊長」
ルークの口元にかすかな笑みが浮かぶ。
シンプルな、たった一言で勇気が湧いてくる。
その言葉こそが、ルークが欲しているものだから。
「あんたの言うことは正しい」
オーディンを見つめる。
「だけど……それがどうした?」
『ほう?』
「必要なときには兵器にだってなるさ。だけど俺は──俺の心の真ん中にあるのは、大切な者を守りたいっていう心だ」
ルークは残る兵士たちをすべて斬り伏せた。
「そこが揺らがなければ、俺は兵器じゃなく人間でいられる。いてみせる」
『……ふむ。兵士としての冷徹さと、仲間を思う熱さの両立、か。なかなか面白い少年だ』
オーディンがつぶやく。
『君に興味が湧いた。我が力を預けてみるとしよう』




