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第10回 第三会場 2.『殺人厳禁暗殺者』

https://book1.adouzi.eu.org/n0348gl/3/

【タイトル】

殺人厳禁暗殺者というタイトルから2019年に映画化された『ザ・ファブル』を思い浮かべました(予告編だけで観てはいないのですが)

作者ご本人が意図したかは別として、タイトルの付け方というのは、こういった他の作品を想起させ期待をさせるというのは有効だと思います。

それだけで一定層の読者は確保ができますしね(パロディじゃないかぎり、露骨なものは逆効果ですが)


また直接的なタイトル付けというのは個人的に好みです。

長文タイトルとは違ったインパクトがありますしね。

一方で漢字7文字は少し重いように感じました。

この辺りのバランスは難しいところです。


【あらすじ】

全体的な展開と、主要キャラになりそうなコクヨウとヘリオトロープのキャラの紹介。

あとは書き出しの中でどこまで書かれるかになるかと思いますので構成としてはうまいと思いました。

~新学期』までの説明はあらすじとしては不要のように感じました。


【構成】

全体で5つのシーンに分かれていますね。

それぞれに分けて感想を書きたいと思います。


① 冒頭 (『俺への視線を感じた』まで)


書き出し1行目は非常に大事なセンテンスなのですが、さらりと『新学期』だけ。

そしてその直後に『と言っても』という言葉をつなげています。

書き出し祭りにおける没入感までの速度は非常に大切だと思っておりまして、全ての文章が4000字の中に必要だったかを考える必要があります。


そう考えると次のシーンへの繋ぎとしても、主人公の紹介としても、この冒頭が必要だったのか。

読者へのインパクトを考えると、次のシーンとなる『石鹸の仄かな香りが……』が最初の一行でも良かったように感じました。



② 少女を暗殺するシーン(『遊歩道を素知らぬ顔で歩く』まで)


上述しましたが、書き出し全体の入りが『石鹸の仄かな香りが……』だと、直接読者は嗅覚のイメージから入れるので効果的だったような気がします。

またこれはこの後の文章全体に言えるのですが、シーンの切替が自然じゃないように感じました。

冒頭で遊歩道を歩いているシーンから、少女が登場するシーンの切替が明確じゃないため、読者が脳内映像を作りにくくなってしまっています。

これは技術的な話なので、少し意識するだけで変わると思います(私の場合は映像化した際のカメラの切替を意識して書いています)


『全開の窓の奥に』少女がいるのですが、主人公は遊歩道を歩いていたはずです。

そして少女に叫ばれる前に窓から飛び込む。


これでは位置関係がわかりません。

少女は遊歩道に面した1階の窓を全裸のまま全開にしたのでしょうか?


読者は作者の脳内映像が読み取れませんので、情景を最小限でかつ効果的に伝えるということの意識が必要になります。


少女の暗殺までの流れは、暗殺者として慌てて殺したようであり、主人公の冷酷さ、冷静さが伝わってきません。

これは意図したものなのかもしれませんが、全裸の少女を殺すという読み手にとってはストレスが高いシーンですので、もっとあっさりとした方が良かったように思えます。


③ スイーパーとの会話(『ギルド長のもとへと向かった』まで)


石器時代を表現するためということは理解できますが、書き出し4000字の中で費やすにはもったいない説明とスイーパーとの会話に感じてしまいました。

世界観や設定は非常に面白いように思いますが、今回の書き出し祭りでは「あらすじ」が導入されていますので、そこで1、2行で「石器時代」を表現するだけでもよかったのではないでしょうか。


スイーパーという名前ですと「掃除人」のイメージ(死体処理係)なのですが、会話からはアシスタントかナビゲーターのような存在のようにも思えます。

そういう意図で名前を付けたのではないかもしれませんが、少し違和感を感じました。

スイーパーのキャラ付けとしてテンプレ的な会話表現なのは、ライトノベルを読み慣れた読者にはうまく視覚イメージが取りやすいので、良い材料です(『ん、』の表現、私も結構、多用しちゃいます)


④ スイーパーとの会話(『「……そういえばそうだったな」まで)


冒頭の会話と、『機械人』であることを忘れていた部分に不自然さを感じました。

長い付き合いのように読み取れる二人であるからこそ、『機械人』であるというセンシティブな情報を主人公が忘れているのは不自然です。

また、最初の『「それでスイーパー、ギルド長はまだか?」』も、数時間待たされた二人の間での会話としては不自然に感じました。

ここに一文、『俺はこの数時間何度も繰り返している質問をスイーパーにぶつけた』くらいを挟み込むだけで印象は変わります。


実際の二人が交わす会話ということを意識して会話分は構成する必要があるかと思います。

機械人のくだりも、例えば『スイーパーは機械人、人外だ』くらい地の文でさらりと流してしまうのも手です。

情報を読者にちょうど良い形でどう伝えるのかというのは、とても大切です。


⑤ ギルド長との会話(最後まで)


一箇所わからなかったのは『私の悪口を言わなかった?』のセリフ。

地の文の『腹黒女狐』の部分なのかもと思ったけど『悪口を言わなかった』では文章が繋がらなくなってしまいます。

物語がコメディであれば、地の文に対してメタ的に『言う』という表現でも良い気がしますが、そうでないのであれば、『コクヨウちゃんから酷い評価を受けた気がする』くらいの勘の鋭さで表現した方が良いように感じました。


そして物語の主軸となる『護衛中に殺しは厳禁ね』の部分。

すぎにギルド長が説明を続けてしまいますが、ここは逆に書き出しで明確に説明が欲しい所です。

なぜ、殺しが駄目なのか、理由が明かせないのであれば明かせないという事も含めて読者に提供すべきです。

そうしないと、書き出しだけでなく、この物語全般のメインテーマが成立しません。

せっかくの面白いテーマが、薄い存在になってしまいますので、連載される場合は是非とも書き出しの中で触れて欲しいところです。

あるいは引きとして引っ張るために、殺せないことをラスト一文に持ってくるというのも手ですね。


一方で、ギルド長と主人公の会話は非常にテンポが良く、面白いです。

次への期待が一気に高まる展開ですし、没入しやい組立だと思いました。



【総評】


ギルド長の会話から物語が一気に面白くなります。

学園の中で殺された対象が甦り、その事で甦った対象を殺した暗殺者が護衛するというのは、ワクワクする展開です。

そうであるからこそ、上述した①~④のシーンが書き出しとして必要だったかとうところにもったいなさを感じました。


たとえば、書き出しの冒頭が『こいつは今日、俺が殺したはずだ!』からでも物語の進行としては成立したはずです。


書き出しは、作者のプロットとして時系列的にとらえている物語を順番に書くためのものではなく、いかに読者を惹き付け、その後を読ませたいとするかですので、「引き」にいたる導入をどうするかというテーマで書いてみると良いか。物語を書く上のスキル的な部分で色々書いてしまいましたが、上述したとおり最後の会話文で一気に面白くなっていますので、ほんの少し意識するだけであっという間に名作になっていくと思いました。

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