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疑似的一方通行

 あんのムカつくPKのせいでウキウキだった気分が台無し。

 私はとりあえず拠点に戻ると。


「はーっはっは! 実に可愛らしいポーズだよミノルさん! いいねっ!」

「じゃあこう!」

「実にいい! 美しいね!」

「なにしてんの?」


 目の前で広げられるミコトとミノルのポーズ大会。モデルのようなポーズをとっているミノルと、それを拍手でほめたたえるミコト。

 なにがどうしてこうなったんだろうか。


「えっと、説明いたしますと……。ミノルさんを元気づけるためにミコトさんがめちゃくちゃ褒めまくってたらミノルさんがだんだん嬉しくなったようでして……。それで今こんな感じに……」

「あー、ミノルおだてられるのに弱いからな……」

「いえ、ミコトさんのカウンセリング能力もすごいんですよ。何をしたら喜ぶかわかってるようでして」

「たしかに……。ミコトはこういうのには向いてそうだな」


 元気づけることに関しては一級品だろうな。

 

「あ、おかりー!」

「はいはいただま」

「いやぁ、ごめんね! うちもう切り替えていくし! あんなやつは気にしないでゲームやる!」

「その意気だ。はいよ、ミノル。これお土産な」


 私はミノルにランダムスキルの書を投げ渡す。ミノルはそれをみて。


「いいの!? 高かったんじゃないの!?」

「気にすんな。少しまとまった金が手に入ったから買った」

「ありがとー! じゃー、さっそくつーかお!」


 そういってミノルはランダムスキルの書を開こうとすると、私のほうにフレンドメッセージが届く。マルボウズさんからで、もう残りの金を用意できたという。

 早くない? まだ一日も経過してないどころか一時間くらいしか経ってないが。


「悪い、ちょっと物取りに行くから使うの待っててくれない?」

「えー」

「すぐ戻る」


 私はそういってマルボウズさんの店に向かう。


「金用意できたんですか? 随分と早い……」

「いや、全部買ってくれたご婦人がいらしてな……。全部買い取ってくれた。それで、残りはあるだろ? 買い取るぜ」

「あ、じゃ、お願いします」

「あいよ。鑑定は前したからな。残りの350万ブロンと、おまけに50万ブロンやる」

「え、いいんですか?」

「お駄賃だお駄賃。グライドからの紹介じゃなきゃあげねえよ」

「あざっす!」


 やっぱ私って運がいい。

 この調子のまま、私はまたスキル販売店にいく。


「どうせだからあいつらのも買ってってやるか」


 私はミコトの分、ぽんぽこの分、ハルサメの分、そして私の分を購入し、再び拠点に戻る。そして、三人にランダムスキルの書を手渡した。


「え、また手に入れたんですか……?」

「そりゃまとまった金が一気に来たからな。どうせならみんなで運試ししたいでしょ。まぁ、ハルサメはまだ買ってないし初回で安く買えるだろうけど」

「そうなのでありますか? なら……」

「もらっといたほうがいいと僕は考えるね」

「そうですよ。もらっておきましょう」

「うむ……」


 ミノルは嬉しそうにはしゃいでいる。

 これだけ買って財宝分はまだ50万ブロンのあまりがでている。マルボウズ様様です。


「じゃ、さっそく使おうか!」

「いっせーのせっ!」


 ミノルの合図でみんなランダムスキルの書を開く。


《スキル:光芒霧消こうぼうむしょう を取得しました》


 うっそ、なにそれ。

 私はそのスキルを調べてみる。光芒霧消。このスキルを発動すると、一定空間で一定時間の間、スキル使用者以外魔法の使用が禁止される……。魔力こそ消費しないらしいが、ほかのスキルとは違う例外がありクールタイムが必要ということ。クールタイムは12時間。半日に一回使えるということらしい。

 ……うわぁ。


 一定空間というのはどこまでか気になるし、どのくらいの時間魔法の使用を禁止されるのだろうか。そしてこれは味方も魔法を禁止されるのだろうか?

 書いてある文言通りならば味方も使用禁止、だよな。


「私は無重力魔法といって自分の体を無重力状態にして浮かせたり物にかけると物を浮かせたりするようにできるらしく……」

「それミノルが狙っていたものではないだろうか?」

「ぽんぽこぉおおおお! なんで私の欲しいスキルばかり持ってくのさあああああ!」

「す、すいません! あ、ハルサメさんはなんだったんですか!?」

「えっと、自分は玉響というものでして、指定した場所に移動できるらしいです」

「なるほど。瞬間移動か。ちなみに僕はスーパーノヴァという大爆発魔法だったよ! 実に派手でいいね! ミノルさんはどうだった?」

「……潜水」


 ああ、潜水スキル。


「水の中でも呼吸なしで入れるスキル」

「それミノルに一番ダメなスキルじゃん」

「なんでですか?」

「ミノル泳げないし」


 そういうと、ぽんぽこさんが驚いてミノルを見ていた。


「え、ミノルさん運動神経いいじゃないですか……」

「そうなんだけど、泳ぎだけは無理なんだよ。中学生のころプールに誘っても絶対拒否されたし」

「お、泳げるもん! ただ犬かきでしか泳げないだけで……」

「犬かき」


 思わず吹き出してしまう。


「もううちの話は終わり! シグレだよラストは! シグレはなんだったの! どうせいいスキルでしょ! うち知ってるもん!」

「ああ、光芒霧消っていうスキルだ」

「……なんだか嫌な予感がするが続けたまえ」

「まぁ、簡単に言うと一定時間、私を中心とするであろう一定空間で私以外の魔法の使用を禁じるスキルだ」

「……想像以上にやばいですね」

「影魔法と組み合わせれば実質的無敵じゃないのか?」


 それなんだよね。

 影魔法と組み合わせること。それで実質的に一時的無敵状態となるんだよね。影魔法は物理無効だから弓矢だって通じないし、なら魔法でといってもこの光芒霧消があれば魔法の攻撃も食らわないわけだから……。完全に私にダメージを与える手段がなくなるんだよね。


「いいの? それってもうバランス崩壊じゃない?」

「たしかにゲームバランス一人だけ超おかしいですね」

「こればかりは運営が悪い。私は悪くない」


 ただ、明確な弱点はあって、魔力がなくなった瞬間に影魔法は解けるから魔力がなくなるまで粘られる、魔物のブレス攻撃まで無効化するかは謎、あと影魔法を使ったら見た目が某探偵ものの漫画の犯人のような感じになってしまうのが弱点かな。


「いつか絶対スキルを無効化するスキルとかでそうだな」

「やめてほしいそれは」








割とサブタイトルアウトだったりします。

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