終わりは不意に……
宝箱の中身は金銀財宝だった。
売ればものすごく金になる財宝の山。キューは財宝の山に目を輝かせてみている。私は一つ手に取り、眺めてみた。
金の延べ棒……。何回かリアルで見たことあるけど本当に再現度高いな……。マジで延べ棒じゃん。
「これ売れば私たち億万長者ですねぇ!」
「……ん?」
私はなんだか自分の体に違和感を感じた。
その違和感の正体はわからない。電脳アバターがまたなにかバグったのだろうか。私は後でミノルに……と思ったが、なんだか知らないけれど嫌な予感がある。
なぜだか知らないけれど焦燥感。
「…………」
「どうしたんだい?」
「いや……なんか嫌な予感がして。ミノルに相談してくるかなって」
「……またなにかバグかい?」
「とは違うかもしれないけど……なんか私の存在が薄まった気がする」
「薄まった……?」
私にもそんな感じがする。
だからミノルに見てもらおうと思っているんだけど。私はミノルに今すぐログアウトしておいてと告げて、クリンズたちにも戻ろうと告げる。
「何そんな急いでんだよ」
「ちょっとまずいかも……」
もしかして、これっていわゆる死期を悟るというのではないだろうか。
なんだか、あと数週間で私は消えてしまいそうな気がする。
「ま、しゃあねえか。で、どうやってもどんだよ。俺らは空飛べねーから出られねえじゃん」
「あ、そうですね!?」
「転移魔法あるから大丈夫。私たちにつかまって」
私はキューの体に触れる。そして、目をつむり、転移魔法を使用した。そして、私はすぐに宿屋に向かい、ログアウト。
私は現実に戻ったとき、異変は起きた。片足がなくなっていた。
「シグレ、どしたん?」
「いや……なんか足が……」
「あれ、ほんとだ。データ飛んだかな……」
と、パソコンを開き、なにか確認していた。
すると、ミノルが嘘っ!?と大きな声を上げる。
「どうした?」
「いや……うん。電脳アバターだからって……嘘、嘘嘘嘘……。こんなのやめて……」
「だからどうしたんだっての」
「……シグレ、もう少しで消えるかもしれない」
「消えるかもしれないィ?」
そういうミノルの顔は涙が浮かんでいた。
「なんかね、データが復旧できないの。消えていってる……」
「……予感はそれだったか」
消えてしまう、か。
具体的にはいつ消えるのかを知りたいものだけれども。私はそのことをミノルに尋ねてみた。あと持って三日、ということ。
急に死が目の前に迫ってきた感覚。この感覚は一体何なのだろうか。嬉しいというのは違う。が、悲しくもない。
「このままシグレ消えちゃうの……? 嫌だ! なんとかする!」
「何とかするったって無理だろ。データがなくなってくもんは」
ミノルは私の言葉に耳を貸さず、一心不乱にパソコンに向かい始めた。私は真田さんたちにも一応そういうことを告げる連絡だけを入れておく。
あと三日、か。三日の猶予……。その猶予をどう過ごそうか。とりあえず、父さんたちにも報告は必要だろうな……。
「これが終活ってもんか」
終わるために活動していく。
そういうことも大事だ。残された人たちに悔いを残さないよう、私はきっちりけじめをつけておけという神様からのメッセージなのかもしれないな。
ま、こんなすぐ終わろうとさせる神様は信じたくないけどね。
これからエンディングまで突っ走ります。
割と唐突なエンディングだと思いますが、いつだってこういうのは不意にやってきてます。作品内で。
割と賛否あるかもしれませんが、終わりは多分ハッピーエンド(人によってはバッドエンドかも)です。




