太陽神の灯が消える
映画の内容はミノルと私にとっては考えさせられることのものだった。
電脳アバターが身近にいる、もしくは自分が電脳アバターであることの不安も煽られたような気がする。
「ま、気にしててもしょーがない! ゲームやろー!」
と、先ほどまでパソコンに向き合っていたミノルがそう言い出した。背後にはバツ印のマークがちらっと見える。
消すつもりだったのかな。私を。ミノル。お前そこまで追い詰められていたのだろうか。
まぁ、消すなら消すで私は構わない。死ぬだけだし。だがしかし、こればかりは追及しないといけないよな。そういうことをしようとしていたのだから。
「ミノル。お前、そのバツ印のマークはなんなんだ」
「えっ? あっ!?」
「見えてないと思ったか? お前、私を消そうとしたんだろ」
私はそういうと、ミノルはうつむいてしまう。
後ろめたさも少しあるのだろう。少し目をそらしていた。
「私は構わない。けどそれは私を殺すことと同じだと思ってくれ。人を殺す覚悟ができたならいつでも私を消すといいよ」
「人を……」
「人一人を殺す覚悟もないやつが消そうとするな。ミノル」
私が強めの口調でそういうと、小さな声でうんと頷いた。
ミノルは私を生きている人だとは思っていない。ただゲームのデータを消すように簡単に消そうとしていた。多分今は悩んでいて、最後の最後で踏みとどまったんだろうが……。
それでも、別れの言葉なしで私に別れを告げるというのはムカつく。
「……そこまで追い込まれてるんならいいよ。消せ。ただ、消すのは私が消えたいと思った時にしろ」
「シグレが……?」
「私を消したら死ぬんだろ? だったら別れの言葉とか、家族に死ぬことを言わないといけないだろ。父さんたちからしたら私は二度死ぬっていうような感じになるんだ」
「あ……」
「翠雨は死に物狂いで怒ると思う。ミノルが勝手に消したら殺しに来るぐらい恨むんじゃないかと思う。わかるよな?」
「……うん」
「人を殺すというのはそういうことだ」
人を殺すのは負の連鎖の始まりだと言える。
「……ごめん」
「いいよ」
「……うち、ちょっと焦ってるかも。あの映画見たからかな。なんか、ちょっと考えて……なんか言葉にしづらいんだけど電脳アバターは世間から見たらやっぱ反対的な意見のほうが多いかもって。反対派の意見のほうが理解出来ちゃったんだ」
「だろうな……」
「今のシグレは同じシグレといえるかのもわからないっていうのも……わかるんだもん」
「……ま、そりゃそうだわな。私はデータ上の存在であることは確かだしな」
だがしかし、シグレとしての記憶もある。私はあの時と同じシグレだと断言できる。
「でも……やっぱシグレなんだもんね。うちの知ってるシグレだもんね」
「そう。もう気が済んだか? ゲームやるんだろ?」
「……うん」
「元気出せよ。バカみたいに元気なのがお前だろうが」
「……じゃあさ、ちょっといつもみたいにうちに怒鳴って」
「は? なんでそんなこと望むんだよ」
「だって、元気でそうだから」
怒鳴られて元気でそうっていうのもおかしいと思うが。ま、しょうがねえか。
「いつまでもうじうじしてんな! ゲームやるならさっさとやれ!」
「……うん!」
「いつもの調子で明るく行けよ!」
「わかったー!」
「バカなんだからお前は……。そんなこと深く考えんな!」
「バカっていったー! バカっていうほうがバカだよ!」
「よし、調子取り戻したな」
手間をかけさせやがって。




