映画を観よう
翌日、私はゲームにログインする気力がなかった。
ミノルと一緒に学校まで行き、先生の授業を聞くだけ聞いて昨日のことをひたすら忘れようと努力していた。
そして帰り道。
「あのー、これから映画見に行きませんか?」
「映画?」
「はい。見たい映画が今日放映されまして。その、見に行きたいなと思っているのですが」
真田さんが映画を観に行きたいと告げる。ミノルはいいよといっていた。
どんな映画か聞いてみると、電脳アバターをモチーフとした映画ということだった。それを聞いてミノルはちょっと興味を示したようだ。
電脳アバターが題材となった映画か。以前ネットで調べものしてた時になんか広告として出てきたな。電脳アバターの人にも見てほしいといっている映画か。
「その……電脳アバターが身近にいる人は少し安くなるみたいですよ」
「電脳アバター商法?」
「わかりません……。シグレさんがいるので安くなりますよね?」
「私は安くさせられるためだけに連れていかれるのか……」
「昨日あんなことありましたし気分転換にどうかと思っただけですよっ!」
そういう意図ね。
「わかったよ。じゃ、行こうか」
「はい」
この近くの映画館はふたつあり、ショッピングモールの中にある映画館と駅方面に一つある。学校からだとショッピングモールより駅方面のほうが近いのでそちらに行くことになった。
ミノルたちは映画館の中に入り、受付に私を見せた。
「どうもー」
「電脳アバター様の確認ができました。代金を少々ひかせていただきます」
「そりゃどうもです」
ミノルたちは購買でポップコーンと飲み物を購入していた。
そして、劇場の中に移動する。放映初日ということもあり、見に来る人が多く、運よく隣ずつの席をとれたようだ。
ミノルがハルサメとぽんぽこに囲まれるように座る。
「電脳アバター様をお連れの場合はこちらを画面を視えるように……? こお?」
と、私が入ってるスマホが立てかけられる。
確かにスクリーンが見やすい。そして、充電も一緒にされるようだ。電池切れにならないようにだろうな。
そして、十分くらいたつと映画館の照明が落ち、コマーシャルが少し流れた後に映画が放映されたのだった。
私は別にこの映画にそこまで興味があるわけでもない。
というのも、以前であった小太りの男のように、電脳アバターを反対、キモイなどという人も一定数はいる。
生命倫理に反するものではあるし、反対意見も理解できなくはない。この監督がその反対意見のほうであるのならば、映画の内容で電脳アバターを批評してくるという可能性もなくはない。
だからこそちょっと怖いものがある。電脳アバターというのは意外とデリケートな題材でもあるからだ。
私は怖いけれど、ただ、見るしかなかった。
現実を突きつけられても見るしかない。いい作品であるといいのだけれど。




