極限の選択 ②
待っても一向に倒される気配がない。
私は自分自身を回復するために救世主スキルも使ったが、終わらない。もう体力は半分しかなく、私はじっと……じっと腸につながる穴を見つめた。
「……う〇ちとして出るしかない?」
意を決しろ、シグレよ。
これはう〇ちではない。私はう〇ちではない。ただ外に出るだけだ。裏口から外に出るだけだ。生ごみをゴミ出し場に持っていくことと同じことだ。
私は立ち上がり、その穴に飛び込んだのだった。
穴は人一人が通れるくらいの隙間はあった。私はほふく前進をして腸の中を進んでいく。そして、結構な道を進んでいくと、行き止まりがあった。前には軽く閉じられている穴のようなもの。手を突っ込むと、その先に空間がある。
どうやら最終地点のようだ。
「ここまで来たらもう戻れないけど……戻れない、けど……」
こっからなら無理やり外に出られそうだ。
でも……やっぱちょっと目の前に迫ってきた瞬間、私の感情に嫌な感情が芽生えた。なにこれ。やだこれ……。
死んだほうがましなのだろうか。それとも、う〇ちとして排出されたほうがましなのだろうか。
「……私はう〇ちではない、私はう〇ちではない」
念仏のように私はそういいながらも、手を再び突っ込む。
だがしかし、それから体が動かない。やっぱり嫌なものは嫌だ。う〇ちとして出るのは女性として嫌なんですけど!
でも、背に腹は代えられぬっていうか……。生き延びるのならこっから出ることを迫られるというか……。
どうしたらいい。どうしたらよい。
「……なんで私はこんな極限の選択を迫られてるんだ」
どうしよう、どうしよう。
私はひたすら悩んでいた。手の先が肛門から出ている。だがしかし、この蛙はまだ死にかけではないようで、死ぬ気配がない。
私は……覚悟を決めるしかない。
死んだことがある身だろう。う〇ちになるのだって……。私はそのまま、目をつむって顔を突っ込んだ。すると、やはり外。うにょうにょ動いてて気持ちが悪い。
私は力をこめて外にはい出た。
そのまま、私はふらふらとした足取りで戦っている五人のところに近づく。
「シグレを返せ……!」
「って、いますけどそこに……」
「なんかぐったりしているでありますな」
と、四人は疑問の目を向けているが、一人だけ察したのだろう。憐みの目で見てきた。
「シグレくん。心中お察しする。ボクも体験した道だ」
「…………なんか女性としてもう生きていけない気がする。死にたい」
「死にたいなんていっちゃだめだよ!」
「うるせえ! もう体力っていうか、メンタルが今やべえんだよ! 早く倒してくれないから私はこういう手を取るしかなかったんだ……。なかったんだ……」
涙が出てきた。
私はそのまま、ちょっとフェードアウトする。戦いを四人に任せて、私はそのまま体育座りで戦いを眺めていたのだった。
そして、十分ぐらいたち、やっと蛙が倒れた。ミノルたちは私に近づいてくる。
「どったの? また相談のるよ?」
「ミノルくん。深く聞かないほうがいい。ボクも同じ屈辱を味わったからね……」
「……あの、どこから出てきたんですか?」
「…………黙秘権を行使する」
「あっ……」
ぽんぽこも何か察したようだ。
「あの、私もそれは……嫌です」
「え、どゆこと?」
「ミノル。人間は食べたものはどうなってどっから出るでしょう」
「えーと、口で食べて胃で消化されていらないものはうんちとして……あ」
「…………」
「あ、あっはっは……。ごめんなさい」
もう嫌だ。なんでこんなところだけはこういう風にさせるんだよ。
「生きてたらマジでクレームだしてたのに……。ちょっと泣けてきた……」
「男性ならまだしも……女性としては嫌ですよね」
「男性だとしても嫌だろうけどね」
「……ミコト殿。先ほど、同じ体験をとおっしゃられましたが」
「言わないでくれ」
ミコトは私の隣に座り、よしよしと背中をさすってくれた。優しい。その優しさが身に染みる。
「もう私はう〇ちとして生きてくしかない……。だってそれと同じように出てきたのだから……」
「目が死んでますよ!?」
「ぽんぽこを裏切った裏切者の末路だと笑ってくれ……」
「もう許してあげますから! 本当に許しますから! だからそんな目をしないでください!」
「あっはっはー! 私はうー〇ち!」
「シグレが壊れた!?」
もうどうだっていいわな!




