蛙の思い出
イベントが終わり、いつもの日常に戻ったのだった。
私はミノルたちが宿屋に集まってると聞き、宿屋の集会所に向かうと、五人座っており、ぽんぽこは私をムーっとした顔で睨んできた。
「な、なんだよぽんぽこ」
「シグレさんに騙されてちょっと悔しいんです……!」
「悪かったよ。ごめんって」
「むー」
その反面、ベルルは負けたのにちょっと嬉しそうだった。さっきからスクショを眺めている。私と抱き合ったスクショのようだ。
それで今お前そんな笑顔なのかよ……。
「まぁ、ボクもシグレくんに負けたというのはなんとも雪辱だね。近接戦も練習したのに影魔法のせいですべてがパァさ」
「影魔法に関してはミコトにも情報はあったし……」
「だとしても、ツクヨミの加護とか月女神の威光はボクは知らなかった」
「私も効果とか見てなかったからあの時まで私も知らなかったんだよ」
加護を手に入れたのもつい最近だしな。
「自分は満足でありますが」
「そりゃ勝ったからねー。勝ったほうは楽しいだろうねー」
「おいミノル……。勝負なんだから恨みっこなしだろ」
「わかってるよー……。でも悔しいのは仕方ないじゃん!」
まぁ、それはそうだけど。
「で、今日はこれからどうするんだ?」
「イベントの反省会ですよね。ね、シグレさん?」
「だから悪かったって……」
反省させられる会の間違いなんじゃないだろうか。
ぽんぽこの不意を突いたのは悪いと思ってるけど。あれはたしかに勝ちにこだわりすぎた結果ともいえるけど。
「まぁ、シグレくんたちには協力してほしい依頼があってね」
「依頼?」
「今日は依頼をこなそうじゃないか。この依頼だよ」
と、紙を見せてくる。
その紙にはカエルのような絵があった。
「砂漠蛙サンドゲロゲの討伐?」
「そうさ。しかも大型ボス。ボクも一人で行ったのだけれどね……。その、嫌な気持ちが蘇ってくるものさ」
「嫌な気持ち?」
「あれはボクが小学生のころだった……。小学校の帰り、アマガエルを見つけて捕まえた。だがしかし、力が強すぎたのか手の中でつぶれてしまって……内臓が……」
想像しただけで嫌になるエピソードやめろよ。ちょっと想像してグロテスクでうわぁってなったじゃん。しかも自分の手の中でつぶれさせたって……。内臓の感覚がもろに……。
ちょっと気持ち悪い……。
「……あの、想像したらちょっとどころかだいぶ気持ち悪くないですか?」
「そうだろう? 体験したボクはもっと気持ち悪い。思い出すと手がうずくのさ。気持ち悪さと不快感で。それ以来、ボクは蛙というものが苦手なのさ……」
「自分も蛙にはいい思い出がないでありますな」
「ハルサメくんもかい?」
「昔、軍隊で熱帯雨林地域に行ったのでありますが……。その際、ヤドクガエルに誤って触れてしまって毒で大変な目にあったことがあるであります」
「そっちはマジで危ないほうじゃん……」
ヤドクガエルて。
触れちゃダメな蛙だろ。
「ともかく、ボクは蛙がだめ。だがしかし、受けてしまったからやらないと駄目なのさ……。手伝ってくれ」
「わかったよ……。ぽんぽこ、サポートを……」
「しますよ。シグレさんにも」
「悪かったよ。機嫌治してくれ」
「…………」
「この通り」
「……仕方ないですね」
ぽんぽこは許してあげますと告げた。




