私は救世主となろう
最初に転移させられた地点に私とハルサメ、そしてたくさんのプレイヤーが集まった。
「こちらが7個とった以上、相手はこの二人の全滅以外の勝ち筋がない。全力で防衛するぞ!」
「そうなのか?」
「そうとも限らないんじゃないかしら。ちょっと数えてみるわ」
と、半信半疑のプレイヤーたちも計算してみて、理解したのだろう。
なるほどと告げて、剣を構えて辺りを警戒している。私たちを囲むようにして守りを固めていた。
「あと残り一時間。死ぬ気で守れ! こっちは一人取られても大丈夫だ」
「私たち二人のどっちがか死ななければ勝ち。あと何陣営が残ってるかだけ把握しておきたいかも」
「誰だ? 最後に旗取ったの」
「私だと思う。青陣営の旗を不意打ちでキルしたの」
「となると、残りは白だけか。ちょっと幸運かな」
私はそういうと、カイザーはなぜだと問いかける。
「青が残っていたら、白と手を組まれる可能性がある。だって黒を潰さないとどちらも勝てないからね。まぁ、あくまで可能性ってだけで旗役が残り一人しかいない青はそんなに旗取りに戦力を割くはずがないけど」
白はまだ旗が3人いるからね。
「ま、気合入れるしかないぞ。白が私たちの全滅以外の勝ち筋がないと気づいたら、旗役の守りを捨てて総動員で来るはず。こちらも総動員で迎え撃つ必要があるし、私たちも攻撃を警戒してないといけない」
「来た!」
白のゼッケンを着た陣営が攻め込んできたのだった。
剣を持った人や杖を持った人が押し入ってくる。その中に旗役はいない。旗役の守りを捨ててきたか。やっぱりそう来る。
全滅以外の勝ち筋がない以上、守ってる余裕もないだろう。
「ハルサメ、気合入れろよ。こいつらはなんとしてでも私たちをキルしたいはずだ。死ぬ覚悟で突っ込んでくる可能性もあるからな」
「理解してるであります。今、全神経を集中しておりますので……」
ハルサメはまっすぐと前を見つめていた。
口をぽかんと開け、集中している様子が伝わってくる。
「ファイア!」
「っと」
魔法が飛んでくる。
予想通りだ。近接だと近づきずらい。そして、遠距離は妨害されにくいというのもある。流れ弾に当たるとかそういう感じで狙ってくるのもあると思っていた。
「まるで戦争だな」
「そうでありますな。どちらも勝ちたいという一心なのでありましょう」
私はハルサメとそう会話していると。
「隙ありいいいいいい!」
「ミノル……!」
ミノルが剣を振り下ろしてきた。
私は影魔法を咄嗟に使用する。剣は私の体をすり抜けた。
「もー! ずるーい! でも、うちの攻撃はまだ終わらない! 魔法剣!」
「魔法剣!? そんなのいつ手に入れた!?」
「にしし。シグレがベルルと王都で行動していた時! くらえーーー!」
と、魔法の剣を振り下ろしてきたのだった。私の体にもろに当たり、体力が減る。
「ちっ……」
「シグレもタフだねー! もう一発!」
「させっかよォ!」
と、クリンズがミノルをぶんなぐる。
「邪魔しないでよ!」
「するだろうが!」
「消耗が激しいじゃん! 体力そんなないよね?」
「うるせえ! ほら、かかってこいよ。残り30分しかないんだぜ?」
「あ、本当だ……。ちょっと時間がない!」
と、ミノルが剣を振り下ろした。
時間、か。確かにお互い、体力が減っている。キルされかけている人やキルされてる人もいる。こっちのほうが若干劣勢というところだった。押されている。
だがしかし、ミノルはやはり忘れているんだ。この旗役の仕様を。
「敵には絶望を、味方には救済を」
「シグレ? なにするつもり? 攻撃スキルは使えないって運営言ってたじゃん!」
「ああ、だから攻撃スキルは使うつもりはない。でも、それ以外のスキルは使えるよな」
今宵、私は黒陣営の救世主となろうか。
「救世主」
私はスキルを使用した。
味方陣営の全員の体力が回復していく。そして、シールド効果を付与していた。このスキルは攻撃スキルではない。だから規制はされていない。
「ほら、また一から削りなおせよ、ミノル?」
「うがーーーーー!」
残り25分。全快したこいつらと、消耗しているお前ら。どっちが勝つかな。




