戦闘狂
私はベルルと共に森の中を進んでいった。
ハルサメは別行動。というのも、旗役二人に戦闘員一人というのはさすがに厳しいものがある。なので、ハルサメは一人で逃げるといった。
『赤陣営……! 二人か』
『いける?』
『やってみる』
そういって、赤陣営に突撃していくベルル。
赤陣営はこちらに気づいておらず、旗役を守ろうとしてキョロキョロとしながら歩いている。ベルルは茂みをかき分け、突撃していったのだった。
双剣を手にし、まずは素早く旗役ではない一人に双剣の連撃を加える。
『まずは一人』
「なんだてめえはァ!」
一人が魔法を放つ。
ベルルはその魔法を避けて、距離を詰め魔法使いを切り捨てた。魔法使い職は物理防御が弱いので、双剣という火力がそこまでない武器でも割と致命傷になる可能性がある。
「なんだこの外国人!? ばかみてえに強え! てめえだけでもいいから逃げろ! 旗役のお前が死んだら負けが近くなる! こっちはただでさえ一つ取られてんのによ!」
「あ、ああ!」
『逃がさないよ』
ベルルは標的を変えた。
双剣をがしっと握りしめ、旗役にとびかかる。笑顔を浮かべていた。それは、悪魔のような微笑みだった。
ベルルは間違いなく、ハルサメと並ぶくらいの戦闘の天才。だがしかし、ハルサメとは違い、戦いに愉悦を感じている。
戦闘狂というのだろう。こういうのを。
『あはは! たっのしい!』
嬉々として人をキルしていくベルル。
数分後には、旗役も含めて一人もその場に立っていなかった。ベルルだけが立っており、ベルルは双剣をしまう。
『一人で無双しやがった……』
『楽しかったぁ。でも、ま、ちょっとだけ手こずったからもうちょっと練習が必要かな』
双剣をしまい、旗役をとったことを宣言したのだった。
これで赤陣営の旗を二つ取ったわけだ。イベントももう二時間くらいたっている。あと二時間で旗をどこまで取れるのか。
旗役は五人しかいないからな……。赤陣営もそろそろ危うい。黒の人達と集まって赤を潰しにかかってもよさそうだが……。どこにいるかはわからない。
『シグレさん! いきましょー! まだまだイベントは終わりませんよ!』
と、ベルルが走り出した。
私はベルルの後ろを走っていく。ベルルは無我夢中に走っている。が、周囲を警戒だけしていた。すると、森を抜け、森の外は崖となっていた。
崖の下には川が流れており、その奥にはまた森がある。だがしかし、この崖の先は進めない。見えない壁があり、これ以上はいけないようだった。
「意外とフィールドが狭い……。逃げ場がほとんどない、か」
『これ以上先はいけないかー。うーん。戻るしかないけど……』
『何か後ろにいるな』
私は振り向いた。
すると、そこには黒陣営の一人がよぅ、と立っていた。が、こいつは本当に黒陣営かどうか怪しいところではあるな。




