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能あるミコトは爪を隠す

 爆発が私の体を巻き込んだ。

 減っていく体力。私の体は爆発を受けて動けない。連続攻撃の爆発は硬直性能もやはり高い。


 だがしかし、爆発が止んだ。

 私は、なぜか耐えていた。


「嘘……」

「倒せていない……? そんなはずは……。火力モリモリにしたボクの爆発……。最大火力でぶっ放したのに!?」

「て、天帝の服のおかげ……? いや、それでもだよな」


 私はスキル欄を見てみた。

 すると、ツクヨミの加護というものを見つける。そういえば貰っていた‥‥なんて思いつつ、説明を見てみる。

 ツクヨミの加護の効果は自動体力回復量アップという効果。そして、月女神の威光というスキル。受けるダメージを半減するという効果があった。


「なるほど、月女神の威光か。耐久型のスキル」


 基本的に常時発動しているというのは偉い。もちろんデメリットもあって、常時MPが減っていくという効果があった。だがしかし、それも聖帝スキルの効果で消費されない。


「運が良かった……。ミコト、お前もうMPないだろ」

「ぐっ……」

「安心して逃げれるな。じゃあな」

「まだ……まだボクのターンは終わっていない!」


 と、剣で切り掛かってきたのだった。私は思わず後ずさる。

 近接……!? ミコトは魔法使いのはずだ。剣なんて扱う技術はない。なのになぜ剣を持っている……?


「ボクだって爪を隠すものだぜ! 剣も使えるように練習したのさ」

「第二の刃か……。きっついな」

「だからボクの攻撃はまだ終わってはいない!」


 剣で切り掛かってくるミコト。

 私は躱すことしかできない。ミコトは自分の燃費の悪さを自覚して、剣という近接戦を鍛え上げた。

 これは見事だな。だがしかし、付け焼き刃程度で私を倒せるはずがない。


「だが悪いな! 影魔法」

「なっ……」

「魔法使えないのならこれでお前は攻撃できない」

「忘れてた……」

「それじゃあね」


 詰めが甘い。

 私に近接戦を挑むのはダメなのだ。魔法でしか倒せないのだから。

 私は悔しがるミコトを背にして、走り出す。すると、洞窟にたどり着いたのだった。


「っと、ここは誰もいないのでありますか?」

「ハルサメ?」

「シグレ殿。生きていたのでありますか」

「なんとか。ハルサメは? 一緒にいったやつは?」

「キルされたでありますよ。自分は攻撃できないのでひたすら逃げ回っているところであります」


 ハルサメは辺りを警戒しながら、洞窟の前で待機している。中に入らないのは逃げ場がなくなってしまうから。

 攻撃する側ならば入ってもいいが、私たちは逃げる側であり、中に入って敵に入り口を塞がれたら逃げ場がなく死ぬ。そのことを理解していた。


「そういえばぽんぽこたちと出会ったぞ」

「どこの陣営でありました?」

「ぽんぽこは赤、ミノルが白、ミコトが青だ。ぽんぽこはうちのチームがキルして旗を一つゲット」

「ベルル殿は?」

「見つけてない。あいつ、戦闘センスはあるから来られると厄介なんだが……」


 その時だった。

 背後に金髪の女が双剣を手にして上から落ちてきた。その刃はハルサメを切ろうとしていた。

 私はハルサメを突き飛ばし、影魔法を使用する。剣が私の体をすり抜ける。


『不意打ち失敗!』

『ベルル……! ってお前、黒かよ!』

『あれ? 味方? 気づかなかった。ごめん!』


 ベルルは黒いゼッケンを着ている。お前仲間を狩ろうとするなよ。


「ハタ、見えた。攻撃、した」

『旗が見えたからって攻撃すんな……。お前な……』

『ごめんごめん。二人とも戦う人いないみたいだから私が防衛するから許して』

『はいはい』


 でも、私もまさかベルルを見逃すとはな。きちんとメンバーを見渡したときそれらしき影は見つかっていない。

 ゲームの中だからこの髪色はよくいるし、黒も金髪が多く、特徴的な髪型というわけでもないので見分けが付かなかったんだろうな。

 ハルサメとかは良くも悪くも目立つし。


『とにかく、戦えるベルルが黒というのは幸運でありますな』

『任せなさーい!』

『……ゼッケン偽装してて本当は違うチームとかってないよな?』

「キミノヨウナ顔ノイイガキハ嫌イダヨ」

「なんて?」

『言ってみたかったセリフ! もちろんそんな展開ないよ! 私はブラックさ!』

『ならいいけど。それと、顔のいいガキじゃなくて勘のいい、な』


 惜しいところで間違えたな。


『ささ、いきましょー! 他の旗狩りにー!』


 ものすごく上機嫌のベルルだった。








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