イベント、開始
運営からのルール説明や、注意事項があり、とうとう始まることになった。
『では、開始ィ!』
開幕の合図。
私はカイザーと共に走り出したのだった。木の間を駆け抜ける。私は空を飛び、プレイヤーの居場所を把握する事にしようか。
「空を飛ぶ上限もあるみたいだな」
ある程度の高さに行くと、見えない壁があるかのように行けなかった。まあ、ずっと上空にいられたら困るからだろう。
そして、飛んでいる時にスタミナゲージというものが表示され、減っているようだ。さすがにずっと飛ぶことは規制されてしまったようだ。
「まあ、流石に対策はされるか」
苦労しないで勝てるほど甘くはない、か。
「だがしかし、前方に白陣営がいるな」
「よし、狩るか。旗は?」
「いなさそうだ。私は隠れているよ」
私はドッペルゲンガーを作り出す。
ドッペルゲンガーは私の分身を生み出すことしかできない。他人のを作ると攻撃扱いになるからな。
私は茂みに隠れ、ドッペルゲンガーとカイザーを共に向かわせた。
「よぅ、テメェら。恨みはねえがやらせてもらうぜ!」
「黒陣営……いきなりか!」
「一人で俺らと? 旗役も連れて? いいカモだ!」
剣で切り掛かってくる。
カイザーはその剣を躱し、顔面をぶん殴っていた。
「俺を殺してみせろ! 俺の筋肉はその程度じゃ止まらねえぜ!」
「筋肉を信仰しすぎ……」
すると。
「でやあああ! うちが相手だし! 筋肉マッチョマン!」
「可愛い女の子じゃねえか。っしゃ、かかってきやがれ!」
「その後ろの旗の人もうちやる……し?」
ミノルは白陣営のようだった。
ミノルは私のドッペルゲンガーを見てうわあああと叫んでいる。
「うちに……シグレは殺せないっ……」
「甘ちゃんだな」
「むううう!」
「……ん?」
背後から気配を感じた。
私は思わず身をそらす。すると、矢が私の目の前を通り白陣営の一人に当たる。
「おいおい、俺らも混ぜろよ白と黒さんよ」
「めんどくせえから戦える奴ら全員潰して悠々と旗を取るとしようぜ」
赤と青陣営が割って入ってくる。どうやら私には気づいていない様子だった。
しょうがない。ここは引くしかない。私はカイザーには悪いけど逃げることにする。私の存在がバレてしまっては困る。それに、カイザーは復活するからな。5分後に。
「すまないな」
私はそそくさとその場を後にしたのだった。
この場に旗は私しかいない。各陣営も旗を大事にしたいからこそ連れて来ない。
だとすると、旗は無防備だ。
こういうのは戦略ゲーム、なんだよな。
私は戦場からバレないように差し足、忍び足で逃げたのだった。
「あ、これシグレのニセモノじゃん!? 旗取れてなーい!?」
「そういうスキルもってんの? シグレさん」
「ドッペルゲンガーってやつ! でも、近くにあると思う! さが……」
「おっと、俺らが先に探すぜ? 情報ありがとよ」
まずいな。ミノルが案外察しがいい。
早くここを逃げなくては。




