イベント開始直前にて
日曜日がやってきた。イベントの時間だ。
ログインすると、イベント専用のフィールドに転移しますというアナウンスが聞こえて、目の前の景色が一気に変わったのだった。
そして、私の体にはゼッケンのようなものがつけられており、黒色に染まっていた。
「私は黒か」
他のメンバーはどの陣営に行ったのかな。
と思っていると、見知った顔があった。
「あれ、ハルサメも黒?」
「そのようでありますな」
なんとハルサメも黒だった。
頼もしい。ハルサメと私が黒のようで、ほかは見知った顔が見当たらない。そして、なにやら私とハルサメの頭に旗のようなものが立っている。
お互い旗役……?
「どうやら、自分たちは攻撃できないようでありますな」
「……戦力が一気に」
「まぁ、逃げるくらいならなんとでもなるでありますよ」
そういうと、集まった人の中央から声が聞こえてきた。
「旗役の人、俺の声が聞こえるところに来てくれないか!」
「呼ばれてるぞ。行くか」
「そうでありますな」
私たちは人をかき分け、その声が聞こえるほうに向かう。
そして、呼びかけてる人のところにやってきたのだった。旗役は全部で10人。私とハルサメと、あとは知らないプレイヤー3人。
多分、旗役を把握しておきたかったんだろうな。
「1サーバー200人の4陣営で、1陣営が50人、で、旗が5人、か。オッケーだ。旗役はこいつらか」
「……こいつらって」
「どっかで見た顔してんだよな」
私は指揮を執る男に見覚えがあった。
まぁ、大した問題じゃないけどな。私は旗役の確認をしておく。私とハルサメは攻撃ができないからな……。逃げるしかない。
ただ、逃げるためのスキルの使用はありみたいだ。攻撃スキルが全部使用不可となっているが、影魔法、影マネ、ドッペルゲンガーは使用可能。ただし、ドッペルゲンガーも自分の分身しか作り出せないようだ。
「悪いが、このイベントは俺が指揮をとらせてもらう。こういった時に指示を出せる人がいなければ俺らは勝てない」
「……どうだか」
「まぁ、嫌な気分もわかる。だがしかし、勝ちたいなら俺に従え」
「……ちっ」
嫌な人もいるが、従っておいたほうがよさそうだ。
だがしかし、一筋縄ではいかないのはこちらも。
「旗取れるのは俺らだけ……。旗役を守るやつらと、攻める奴らを決めなければならない。が、旗役に言いたいことは、固まるなということ。全部の旗が取られたら負けな以上、固まるのは死を早めてしまうことだ」
「それはそうだろうね。ま、守るのは最低人数でいいよ。攻撃は出来なくても私たちは逃げれるから」
「そうだな。大体は攻めるように! そして、旗役は……各々好きに逃げるよう! 隠れてもいい、ただ、守る人は俺と、この鎧着ている兄ちゃんと、この魔法使いさんと、ちびっこ剣士とこのマッスルな兄ちゃんだ。旗役はそれぞれ好きなところに行くといい」
「わかった」
私はマッスルな奴に近づく。
「久しぶりだな、カイザー」
「シグレ旗か! よろしくな!」
「守るのはこれだけでいい! 他は攻める! とりあえず先手必勝といこう! 黒陣営がまず旗を一つとるのだ!」
「おー。って、そろそろ運営から説明がある時間だし、作戦会議はそれまでにして運営の話でも聞こうよ」
そろそろイベントが始まる時間だしな。




